永遠を誓います
そして、また手紙のやりとりを再開して、今日は美鈴が俺のマンションにやってくる日になった。
日曜日の午前中にピンポンが鳴った。
玄関の扉を開けると制服姿ではない美鈴がそこにはいた。
「あがって?」
「おじゃまします」
初めて上がる家でもないのに、相手がすごく緊張しているのが分かる。
「あ、あの!これケーキです」
俺へのお土産に持参したケーキを差し出される。
「え、ありがとう。気を使わなくていいのに。アイスティーかココアなら出せるけど、どうする?」
「アイスティーで…」
「ガムシロはあるけど、ミルクないけど大丈夫?」
「は、はい!」
前回、マンションに来たときは、美鈴は少年くんと向かい合って勉強をしていたから、俺と向かい合うのは初だ。
「どっちがいい?」
ショートケーキとチーズケーキが入っていた。
「ミュートさんのために持ってきたので、ミュートさんが先に選んでくださいっ」
「え、どっちも好き??」
「はい!どっちでも文句ないですっ」
俺は、余り物を選ぶタイプだから、先に選ばされると恐縮してしまう。
「じゃ、イチゴで」
美鈴の前にお皿に乗せたチーズケーキを差し出した。
「いただきます。んーおいしぃ」
美鈴が一口目を食べ終わったのを見計らい、俺の一口目を美鈴へと差し出した。
「はい。こっちもあーん」
「え、え?!え!!」
容赦なく迫ってくるフォークに反射的に口を開ける美鈴。
「ショートケーキも美味しいです」
「よかったね。本当はね、かき氷食べに行った時にコレしたかったんだ」
「そうなんですか?」
「うん。でも、あの時いまよりもっと緊張してたから、諦めた」
たまに普通の恋人みたいなことをしたら、自分が普通になれるんじゃないかって思う時がある…。
「確かに、あの日にそんなことされてたら、人間の形をとどめておく事ができなかったと思います」
美鈴の返答って面白いなぁ。
「あの、ずっとお手紙渡しに行かなくてすいませんでした」
「大丈夫。俺のほうが変なこと言ってる自覚はあるから」
俺もショートケーキを食べ始める。
「誰かと付き合いたい!とか、好きな人の恋人になりたい。と、思っていたけど、その先の事は考えてなかったんです」
「こないだ『子供と付き合ってるの?』って茶化されたけど、俺は美鈴の事を子供だとか思ってないよ?」
俺の言葉に、美鈴は少し頬を膨らませる。
「そんなことないですよ!前にココに来たときは子供扱いでしたもんっ」
子供扱いをした覚えはないが、年齢が子供の年だって言いたかっただけなんだけど。
「そういえば成人したんだったよね」
「もう、大人の仲間入りなんですからね」
そういえば、美鈴から「いろいろする」宣言をされているが、俺は何をされるんだろう。…それとも、させられるんだろうか?
「俺と……付き合う?」
「え?!」
俺からそう言われると思っていなかったのか、手からフォークがこぼれ落ちた。
「美鈴が卒業するまでは(仮)だけど」
「………持ち上げて、落としますねぇ」
いや、うーん…言いたいことが言語化上手くできなくて、相手に伝わってないみたいだ。
「じゃー結婚する?」
「…………………えぇ?!」
あ、もっと間違えたのかも…。
「えーと…その、俺と付き合うのって女子にとって不安を与えているのかな?って思う時があって、付き合ってもそれは変わらないのかなって…なら、いっそのこと結婚すれば安心できるのかな?って…ただ、俺は美鈴にいまは勉強に集中してほしくて、その邪魔になりたくないんだ。いつも別の女を連れてるって思われてるかもしれないけど、俺は美鈴以外の誰かと付き合いたいわけじゃないし、種がないから妊娠しなくていい。みたいなセフレがめっちゃ寄ってきてて…体だけの関係の人達にはうんざりしていて、恋をしてみたいって思ってた。美鈴といると楽しくて…でも、好きになった人が高校生だったから、訴えられて捕まりたくないって気持ちがあるのも事実で…」
「う?え?あ?ん?(なんか今いろんなこと言われた?」
美鈴が目を回してしまった。
「俺もどうしたらいいのか、分からなくて」
「えと、えと〜!!まず、私はミュートさんのこと訴えたりしません!!」
「え、でもさ。いまどきニュースとかでもトウ横女子とかに捕まるオッサン多いし…」
「貴方の人生なにがあったんですか…?!普通の恋がしたいなら、俺も好きだ!って言ってキスするところです!今!」
え、いや…だから…そういう口車に乗せられた大人たちが警察に捕まっているんですけど…。
テーブルをダン!と叩きながら立ち上がった。
美鈴の迫力に押された俺も立ち上がった。
俺は、美鈴の真横に立ってそのアゴを持ち上げた。
「…目、とじてよ」
ガチガチに固まった美鈴が、目を閉じる。目を閉じても緊張しているのがわかる。自分がどうしたらいいのか悩んでいると、インターホンがなった。
「今日、荷物届くんだった」
玄関に荷物を取りに行く俺に、美鈴は少しホッとしているような顔をしている。
荷物を受け取って、リビングに戻ってくると、椅子に座った美鈴がふてくされたような顔していた。
俺が本当はキスをしたくなかったんじゃないかと思っているのではないだろうか?
俺は、美鈴の目の前に片膝をついて、左手の薬指に口づけをした。
「俺の恋人になってくれませんか?未来の花嫁さん」




