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文化祭

(女子高生:美鈴目線)


 8月の夏休みが終わって、また学校が始まった。

 夏休みの間に起こったことを親友に喋りたくて心がウズウズとしてしまっていた。

「おはー美鈴!」

「聞いてよぉー」

「どうしたの?なんか、進展した?」

 私の目があまりにもキラキラしていたのだろう。なにかを察知されてしまった。

「花火大会、お兄さんと一緒にいけだよ!」

「よかったねー」

 それには、親友も一緒に喜んでくれた。

「なんか、向こうも一緒に行きたいって思ってくれてたらしい」

「そうなの?じゃ、初めから誘えばよかったね」

「でも、私は本当は塾があったから…」

 お兄さんと一緒に花火大会に行きたかったのに、塾に行ったと聞かされた友達は首をひねった。

「じゃ、どうやってお兄さんと一緒に行ったの?」

「塾がたまたま18時に終わって」

「うん」

「塾の子がたまたま花火大会いこーって言ってくれて」

「うん」

 ここまで聞いていた友達は、普通にうんうん。と聞いてくれていたのに、この後の展開にどんどん顔色が曇っていった。

「会場で女の人にたまたま連れてこられてたお兄さんと出くわして」

「……うん」

「それで、今度は二人きりで花火見たんだぁ」

「うーん?なんか、どうしたら二人きりになれるのか、よく分からないけど…むしろ、その状況でよく喜べるね」

「なんで?」

 お兄さんと出掛けられる事なんて滅多にないから、とても貴重な時間だった。

「いろんな奇跡に恵まれてたんだぁ」

「まーポジティブにとらえたら、そうとも言える…(べつの女の人と本当は行きたかったとか考えないのかな」

 その日、会場にきてた花火大会に誘った側を出し抜いて振り切っている事の経緯を話してないから、妙に変な感じに聞こえてしまっているのかもしれない。けれど、結果二人きりで見れたのだからオーライではないだろうか??

 ………二人がキスしてたこととかも言ってないけど。

「今月の文化祭にも誘えないかな」

「うーん。でも、花火一緒に行きたかったって言ってるのが本当なら来てもらえるかも?よ」

「がんばるっっ」

 友達にはげまされて勇気をもらえたような気がしていたんだけれど…。


 いざ、放課後になりお花屋さんへやって来て私は、絶望することになる。

「あの!もしよければ、今月の文化祭にきてもらいたくてっ」

「いつ?」

 お兄さんがお店のカレンダーを見つめる。

「今週の日曜日なんですけど」

「あーその日は仕事だね」

「そうなんですね…(一緒に回れると思ってワクワクしちゃってたのに」

 あっさり断られてガッカリしてしまった。

 そんな、あからさまにガッカリした私を見ていたお兄さんが気を使ってくれた。

「大学生になったら、その時は文化祭いくよ?だから、そんなに落ち込まないで」

「あ、はい!塾行ってきますっ」

「いってらっしゃい」

 お兄さんに見送られて塾へ行く。それだけでも今の自分にとっては幸せな日常だった。


 文化祭の当日になった。

 私は、親友と文化祭を回ることにした。

「高校生最後の文化祭だったのに、お兄さんに会えなくて残念だったね」

 友達と外の食べ物の屋台を見に行こうとして下駄箱で靴を履きかけて中庭に出ようとして、私は見知った人影を追いかけるように走り出した。

「美鈴?!」

 友達もビックリして私の後を追いかけてきてくれたみたいだ。

「お兄さん!!」

 そこには、先生たちが車を止めている駐車場から、たくさんの花束を持った加賀さんが校舎に向かって歩いてきていた。

「もしかして、噂の花屋のお兄さんってこの人??」

「うん」

「美鈴、おはよう」

 お兄さんは花屋さんとしての営業スタイルで近づいてきた。

「今日、仕事って…」

「ここの文化祭で2年生がドライフラワーのお店を出してるらしくて、そこにお届けもの」

 まさか、お花に関する出し物をしたら、学校でお兄さんに会えるイベントを発生させることが出来るなんて考えてもみなかったなぁ。

「ズルい…」

 私は、文化祭にお兄さんを誘えなかったのに、私以外の生徒がお兄さんに会える権利を持っているなんて。

「なんて顔してんだよ。両手塞がってるから、ポケットの手紙取れる?」

 両手いっぱいの花束を抱えたお兄さんが私に対して背を向けた。そのお兄さんのズボンのポケットには、たしかに手紙があった。

「手紙のお返し」

「私にですか?」

 私は、お兄さんに言われた通りに手紙を受け取る。

「俺は、美鈴以外と手紙のやりとりしてないよ?」

 たしかに、いまどきメールでやりとり出来るのに、私達はあえて手紙でやりとりをしているんだ。

 でも、お兄さんから受け取った手紙の便箋は、私が普段お兄さんに渡している便箋の色違いだった。お兄さんも同じ本屋さんで便箋を買ってくれたのかな。

「そうですよね。ありがとうございます」

「隣にいるのは例のお友達さん?」

 例のっていうのは、泊まりに行ったときの話をしているのかな?

「俺達の仲を応援してくれて、ありがとうね」

「あ、いえ…」

 お兄さんが友達にも話しかけると思っていなかったみたいで、友達はビックリしたみたいだ。

「それじゃ、俺はお届けに上がらないとだから、またな」

「はいっ」

 お兄さんが2年生のクラスへと歩いていってしまった。「今日は仕事で会えない」と言っていたのが、嘘ではなくてよかった。

「………アレは、やばいね」

「でしょ」

「ビジュがレベチ」

 友達にもお兄さんの魅力が伝わったらしい。

「で?手紙にはなんて?」

 そうだった。お兄さんからの手紙を受け取ったんだった。

 私は、受け取った手紙を開いてみた。


『今度、どこかへ出かけない?

渋谷の近くに合格祈願の神社があるらしくて、そこなら遠くないし塾が始まるまでに間に合うと思うけど、どう?』


「デートのお誘いだ!!!」

「よかったじゃん(さっきの雰囲気的に、遊ばれてるわけではないのかな」

「うんうんっ」

 私は、いっきに嬉しくなってしまった。

たまにランチを食べたり、お兄さんの行きつけのお店に案内されたりとかしてもらったけれど、ちゃんとデートに誘われると嬉しすぎて死んでしまいそうだ。

 いまから、どんな服を着ていくか考えなくちゃ!という喜びも文化祭が終わった次の日には、また絶望がやってきてしまった。

 文化祭で花を届けにきた事によって、お兄さんの知名度が知れ渡ってしまい、お花屋さんが、学校の生徒であふれてしまったのだ。


「私も…あの中の1人にすぎないのかな」




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