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同じ気持ち………だったら

(主人公目線)花火大会の日の時刻を少し戻します。


 またか…。

 夕方頃、夕飯を食べるために外に出ると、仕事でよく行くキャバクラのお姉さんに捕まってしまった。

「あー加賀くんだー」

 すぐさま右腕を掴まれる。…だるいな。

「ねーねー今日花火大会じゃーん?」

「そうみたいですね。もうすぐ仕事が始まるんじゃないですか?」

 そうなんだよー残念ーって言葉が返ってくると思っていたのに

「先月までで辞めちゃったんだよね。いまは無職!だから、なんか奢って♫」

「嫌です」

「いーじゃんかーケチ!」

 なんで俺が惚れてもない女のために金使わにゃならん…。

「じゃあ、花火一緒に見るでしょ?」

 …なんで、強制なんですかね…苦笑

 うん。とも言っていないのに、花火大会で皆が集まる場所へと連れてこられてしまった。

 わりと大きな公園で花火大会の穴場的な場所だ。ともすれ、最近は暑くて花火大会なんて来たことなかったけど。

「あそこ座ろー周りカップルばっかだね」

 ベンチに座ると元キャバ嬢は、俺の肩にもたれ掛かってきた。

 花火見る気あんのか…と呆れてしまう。

「最近、遊んでくれなくなぃ?」

「そうですか?仕事が忙しいだけですよ」

と、いうことにしておこう。

「じゃあ、花火見たら家に行ってもいい?」

「無理です。部屋汚いんで」

と、いうことにしておこう。

「私の家でもいいよ?」

「ドピンクの部屋は落ち着かないので遠慮します」

 この人の部屋は、ベットシーツもピンク、クッションもピンク、カーテンもピンクなのだ。目がチカチカするなという印象だったことを覚えている。

 ベンチに座ってから、いつまでもキャバ嬢のほうを向かない俺の耳元に顔を近づけてきたキャバ嬢がささやく。

「花火上がってる間に、ココでもいいよ?」

 甘ったるい声がそう言うと、俺の視界に入ってきて勝手にキスをする。

すると、どこかでドサッという音がした。

「畑谷!!」

 目を向けると、少年くんと走り去る美鈴の姿が見える。…なに?この展開……

 考えるよりも先に俺はベンチから立ち上がった。

「ごめん」

 俺はキャバ嬢置いて走り出した。

「え?加賀くん??」

 俺を睨んでいる少年くんのいる位置を通り過ぎようとして、少年くんに腕を引っ張られた。

「オレ、やっぱりアンタのこと嫌いです」

「美鈴にふさわしいのはオレだ!って言いたいなら、こんなところに立ってないで君も追いかけるべきだったんじゃない?」

 俺は地面に落ちている美鈴の鞄を拾うと、少年くんの手を払って、美鈴が走って行った方向に、また走り出した。


 美鈴は、公園の入り口あたりでようやく走るのをやめたらしく、そこへ俺も追いつくことができた。

「美鈴!」

「え?なんで…」

 俺が呼びかけると、ふりかえってビックリした顔をされる。

「鞄」

 そんな美鈴の顔面に持ってきた鞄を差し出す。

「すいません………」

 受け取ったあとも気まずさと沈黙が当たりを立ち込めている。

「今日は少年くんとデート?」

「え、違いますっ!」

 答えはすぐに返してもらえたけれど、なんで2人はここにいたんだろう。

「もう、俺の事は好きじゃなくなっちゃった?」

「そんなわけないじゃないですか!!私が花火大会に一緒に行きたかったのはお兄さんです!!」

 それを聞いて、俺は少し安心してしまった。

「俺も美鈴と一緒に行きたかったよ?でも、今日塾だと思ってたから…」

「あ、それが…塾には塾だったんですけど…早めに終わってしまって小野くんに無理やり連れてこられて……」

 なんだか、申し訳なさそうに今日の出来事を話してくれた。

「そうだったんだ。俺と同じだね。俺も無理やり連れてこられたんだ」

「そうだったんですね」

 お互いの誤解が解けたところに、少年くんとキャバ嬢が追いついてきてしまった。

 俺は、自分たちの距離と走ってくる2人の距離を確認してから、美鈴の顔に自分の顔を近づけると美鈴にしか聞こえない声で小さく囁いた。

「美鈴が俺と同じ気持ちなら…………走って?」

「え?」

 俺は、美鈴の手をとると、2人で一緒に走り出した。

『え?!ちょっと!!』

 後ろの方で少年くんとキャバ嬢が何か訴えたそうな声をあげていたけれど、俺達はそれから逃げるように必死に走り出した。

 学校をサボって先生から逃げている生徒みたいで、なんかエモいなって思った。

 公園を出て、どこに行ったらいいのか分からないままに、走って走って…人が少ない橋のところまで来て、ようやく足を止めた。

「はぁはぁ……全力ダッシュとか、いつぶりだろ…しんど…あ、勝手に手を繋いでごめん」

「あ、いえ…(手をはなされちゃった」

 俺は橋の上に尻もちをついた。

「しんどいけど、なんか俺も青春してるみたいで楽しかった」

「青春、ですか?」

 美鈴が俺の横にきて、ちょこんと座る。

「俺、少年くんにヤキモチ妬いてたんだ。こないだウチに来た時、2人がキラキラしてて…羨ましくて…俺だけ2人の輪に入れてない気がして」

 青春って若い時にしか出来ないのかなって少しショゲてたんだよね。

 それが、今日言われた「アンタに美鈴は合わない!」っていう言葉に直結していて、オッサンな事もあいまって本当に好きになってもいいのかってモヤモヤしていたんだと思う。

 …ま、いまだに相手は未成年ってことを気にしてはいるんだけど。

「私もヤキモチやいてますよ」

 美鈴が少し怒ったように呟いた。

「え?」

「お姉さんと…その、キスしてましたよね?」

 公園でのアレを見られていたみたいだ。

 俺からしたわけではないのだけど。

「そんなことが羨ましいの?」

「私だって!お兄さんとキスしたいですもんっ!」

「そんなこと言われてもなぁ」

 俺は、どうしたらいいのか分からず顔をかいた。

「私!来月には誕生日がきて、成人するんですからねっ」

「あ、そうなんだ」

「いろいろ覚悟してくださいねっ」

 えと、何を覚悟しといたらいいんだろう?

「たとえば?」

「いろいろは、いろいろなんです〜!」

 美鈴から具体的な計画があるわけではなくて、思わず吹き出してしまった。

「うん。りょうかいw」

 自分でも何を了解したのか分からないけれど、お互いがようやく笑顔になった。

 すると、19時になったのか花火が上がり始めた。

「あ、花火。意外と橋の上ってキレイに見えるかも特等席じゃん」

「たしかにキレイです。お兄さ……」

 俺は、お兄さんと言いかけた美鈴の唇にそっと手を置いた。向こうも俺が言いたいことを察してくれたみたいだ。

「みゅ……ミュートさんと2人で一緒に見られてよかったです」

「俺も同じ気持ちだよ」


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