花火大会へ
(女子高生目線)
『明日は、花火大会だね。お兄さん誘ったりしたの?』
私は、学校の友達からのメールを受け取っていた。
「明日も塾だし、それにお兄さんも21時まで仕事だろうし」
『あーそっか…ざんねんだね』
お兄さんの浴衣姿とか想像したらカッコよすぎて隣を歩ける気がしない。
そんなにお兄さんの隣をまだ歩いたことはないけど、いつも緊張してしまう。
私なんかが真横を歩けるような気もしなくて、少し後ろを歩いていると、心配そうにちゃんとついてきているか確認するようにふりかえってくれるのが、なんだか嬉しい。
私達の関係はいまだに文通友達でしかないんだけど。
「なんかね。こないだお弁当を作ったら、お兄さんからもお弁当作ってもらえた」
『え?なにそれ?!もう付き合ってるの?』
「付き合ってはないと思う。べつに好きとか言われてないし…」
『好きじゃないのにお弁当作らないでしょ』
うーん…友達はお兄さんに会ったことがないから、わからないんだと思う。
お兄さんにとって、べつに私は特別なんかじゃなと思う。
だから、お弁当もただの優しさなんじゃないかな。
友達とのメールに一区切りをつけると、私は今日も塾へと向かった。
その途中で、いつも通りにお花屋さんに寄ってみたけれど、今日はお兄さんがお休みなのか、オーナーさんにしか会うことが出来なかった。
「(今日がお休みだって知ってたら花火大会………ううん。塾を休むなんて言ったらお兄さんが心配しそう…」
そりゃ毎日仕事なわけないけど、恋人ではないから相手のスケジュールとか何もわからないのが、私達の間には何もないという現実を思い知らされる。
「あ!畑谷…今日さ」
「小野くん、後ろで先生呼んでるよ」
こないだお兄さんの家に一緒にいった男子は小野という名前らしい。塾の成績トップにいつも位置ずいていて、こないだ名前を知った。
…お兄さん、今日なにしてるんだろう。
なんだか、全然勉強に集中できないや。と、思っていると…
「じゃ、今日は塾18時までとします。近くで花火大会があるらしいので、通常の終了時間に電車が混み合う可能性があるため早めに帰って復習してください。」
「………え」
まさかの夏期講習が18時で終わるなんて思っても見なかった。
たしかに、こないだの隅田川の花火大会の日にニュースで駅のホームに人があふれかえって帰れなかったみたいだし、そんなことになったら親からの電話が塾に殺到しちゃうのかもしれない。
私が席から立つと小野くんに呼び止められた。
「畑谷!花火大会一緒にいこう?」
もしかして、さっき言いたかったのはそれのことだったんだろうか?
「え?講師の先生が帰って復習しろって…」
「花火大会に行って息抜きするのもいいですねって言ってたろ」
言ってたかな…そんなこと。
「それは、成績がいい人だけだよ」
「いいから、ほら」
私は、小野くんに腕を掴まれて無理やり花火大会に行くことになった。
塾のビルのすぐ近くに大きな公園があって、わりとそこのベンチで毎年花火を観る人が多い。
やっぱり浴衣を着ている人ばかりが目立つ。
「……こないだは、ごめん」
「え?」
小野くんが歩きながらいきなり謝ってきた。
「ほら、その…畑谷の恋の邪魔して」
「うん。本当に迷惑」
「でもさ、あんな年上の男の人は畑谷に似合わないってゆーかさ…もっとふさわしい人いるよ」
自分でだって無謀な恋なことは分かっているからこそ、放っておいてほしい。
そんなことを喋りながら歩いていると、私は見知った人物を見つけて硬直して足を止めた………。
お兄さんとまた知らないべつの女の人がベンチに座っているところを目撃してしまった。




