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自問自答


 次に起きた時は、夜中の2時になっていた。

 リビングの電気はついたまま、3人共寝てしまっていたみたいだ。

「…………ごくろうさまです」

 なんとなく小声で二人を起こさないように気をつける。

 そっと美鈴ちゃんの頭を撫でるも、起き出してきそうになかった。

 俺は、勉強をして開いているページのノートの端っこにペンで走り書きをした。

 『頑張れ』という言葉は、いまの受験生の重荷になってしまうだろうか…。ともすれ、それ以外の言葉を思い浮かべる事ができなくて、それ以上ペンを走らせることが出来なかった。

「……よっと」

 俺は、スエットの美鈴ちゃんを持ち上げると、自分の部屋まで運んだ。

 こんなに小さくて軽い生き物が世の中を背負っているって考えたら、自分も少しはマシな人間にならなくては、とか考えなくもない。

 そんなことを考えたところでどだい無理なことは言うまでもない。

 美鈴ちゃんを自分の部屋のベットに寝かせる。掛け布団をかける。

 どうにか起こさないように運べたみたいだ。自分の部屋のドアを慎重に閉めた。

 リビングに戻ってきて、少年くんをソファーに移動?とも考えたけど、それはなんとなくやめておいた。

 少年くんにタオルケットを掛けると、リビングの電気を消して、そのままベランダに出た。

 雨はあがっていた。4階に吹くビル風が少しだけ気持ちよかった。

 ようやく吸えるようになり、タバコに火を付けると、辺りに甘い香りが漂った。前に付き合っていた人が置いていった忘れ物だ。

 静まり返った夜は好きだけれど、孤独をより感じてしまうから好きではない。

誰かと一緒にいられたら幸せだけど、その幸せが明日にも続いてくれはしないような気がしてしまって苦しくなる。

 相手に好かれる優しさを身につけるより、相手に嫌われるような行動をとっても離れないでいてくれるのかを常に考えてしまう俺は人間として終わっている。

 少年くんの言う「こんなのに」というのは、確かに俺を表現するには相応しい表現だとさえ思う。

「初めから手放すつもりなら、近づかないで欲しかった」と、よく言われるけれど…毎日、理想の自分を追い求めては、相手が求める自分になろうとネジ曲がり、自分を捨てるが故に自分を見失って、ふと我にかえってしまうんだ。…ただ、それだけなんだ。

 自分自身が本当の自分らしくいられる相手を見つけられたらいい。とは、思うけれど、本当の自分を好きになってもらえるわけもなくて、毎日苦笑してしまうんだ。目の前にいる人は、俺が苦笑しているとも知らず、笑っているように見えているんだろうな……。

 こんな年になって、本当の自分と向き合ってくれる人が現れたら、素直に一緒にいられるかと言われたら……それはそれでNOな気がする。

 大人なんてそんなもんだ。綺麗事だけ言ってキレイになんて生きられない生き物なんだ。

 俺は、ベランダから戻ってくると風呂に入った。今日、着る洋服に腕を通す。

 朝方4時頃に、2人分の朝食を作り始める。あまり音をたてずに作れそうなものを考える。ラップをかけて、テーブルに置く。そこに、マンションの鍵を置いておいた。メモと一緒に。

 マンションから出ると、俺は花屋に向かった。朝早い時間に行くと、仕入れに向かうトラックが止まっている。

「あれ?早いね」

 花の仕入れに向かうオーナーの助手席に乗り込み、ガタガタと揺られる軽トラの中で俺は眠りについた。

 オーナーが7時にお店をオープンさせると、俺は店の裏で朝の通勤ラッシュが終わるくらいの時間までうたた寝をしていた。朝日が眩しくて、仕方なしに起き上がるとエプロンを手に取り、今日も仕事をすることにした。

 9時手前頃に、マンションの鍵を持った女子高生が花屋にやってきた。

「お兄さん、おはようございます。あの、鍵を返しにきました」

 部屋の鍵を差し出される。

「ありがとう。よく眠れた?」

「はいっベット使ってしまって、すいませんっ(いつ運んだんですか?」

 女子高生とのやり取りを聞いていたオーナーがニヤニヤしながら近づいてきた。

「あーもしかして、そういうこと?ついに??」

「たぶん想像してるような感じじゃないですよ」

 一応、めんどうだけど訂正しておく。

「そうなの?」

「はい。くどいですね…」

「あの、今日の手紙です。それじゃ、いってきます」

 俺は、手紙を受け取るとポケットにしまった。

「いってらっしゃい」

 店の前で待っていた少年くんと一緒に塾に行くみたいだ。

「あれは誰なの?」

「新しい恋人?じゃない?」

「え?今日も手紙受け取ってたよね?」

 進まない恋と加速的な恋のどっちを取るかって言ったら高校生なら、そばの圧に負けるんじゃない?と思う俺がいる。

「え、三角関係?」

「さー?」


君と一緒にいたあの半年間の間は、

毎日頑張っている君に『頑張れ』という言葉を使いたくなくて、それ以外のどんな言葉をかけたらいいのかって必死に考えていたような気がする。…それもこれも、もう思い出なのかも

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