食卓の香りはカルボナーラ
とりあえず、雨の中を合計傘2本の3人は、俺のマンションへと到着した。
相合傘で帰る俺と美鈴ちゃんを見ていても心が折れない少年も、しっかりマンションまでついてきた。
「とりあえず、ずぶ濡れだからお風呂に入らないとかな…」
「なんか突然来たのに、すいません」
「大丈夫だから、気にしないでいいよ。俺のトレーナー着てもらうでも大丈夫?」
玄関から洗面所へやってきた。とりあえず、湯槽にお湯を張り始める。
その間に、トレーナーとタオルをカゴに出した。
「えっと、脱いだものを洗濯機にいれてもらって、このボタンを押せば乾燥までは自動だから、お風呂から出てきたらボタン押してね?」
「は、はいっ」
「シャンプーとリンスはたくさんあるけど、好きなもの使って大丈夫だから」
ひと通り使い方を教えて、ドライヤーを渡してお風呂場から退室する。
「さてと、君の着替えはどうしようか?とりあえずのシャツと短パンでいい?夕飯はもう食べた?」
「そこまで濡れてないので…夕飯は食べてないです」
さっきまでの威嚇はどこへやら、初めてやってきた猫のようになってしまった彼に拍子抜けしてしまう。
「リビングへどうぞ。簡単に食べれるものを作るから」
「なんか、すいません」
「美鈴ちゃんのこと大好きなの?」
「むしろ、こっちが聞きたいんですけど」
まだ、少し怒っているのかトゲトゲしさを感じる。
「俺は、まだ知り合ったばかりだから、気になるってくらいだけど、君は毎日塾が一緒なんでしょ?」
「そう…なんだ。こないだ塾に畑谷が私服で着たときはビックリして、どんなヤツなんだ!って思ったんだけど…まさかこんなオッサン…」
なんだか、とても呆れられてしまっているようだ。
「ごめんね。同級生とかじゃなくて」
「なんか、彼氏でもないのに彼氏面がムカつく……」
「パスタ食べたくないの?」
「しかも性格まで悪い……」
俺の評価は著しく低いみたいだ。逆にそれくらいが丁度いいような気がする。
これ以上喋ってもずっとバカにされ続けそうなので、俺は黙った。
沸騰した鍋に麺をいれて、そのあいだにソースを作る。
「畑谷の受験の邪魔しないでくださいよ」
「それはもちろん」
「オッサンが高校生に手を出すのは犯罪ですよ」
「知ってますよーはい。カルボナーラとブレットね」
攻撃がとまりそうもないかったので、夕飯を提供することにした。
「いただきます」
そこは、礼儀正しいんだ。
「今日、途中で電車動くようなら送って行くよ。2人ともね。それで、文句ない?」
「あるに決まってるじゃないですか」
「うーん……じゃ、君と美鈴ちゃんの恋を俺が応援したら、君は満足なの?俺だって同年代同士が恋したほうがいいって思ってるよ」
少年くんから大きなため息がこぼれる。
「オッサンが良い人だったら、負けても悔しくないのに……こんなのに負けてるかと思うと…………」
俺は、相当に救いようのない人間らしい。………そんなに??
そこへ、お風呂から出てきた美鈴ちゃんがやってきた。
「お風呂お先にありがとうございます。って、なんか食べてる!!」
「いま、夕飯もらってた」
「ズルい!!」
俺のスエットをきたダボダボの美鈴ちゃんが少年くんに怒っている。
この可愛さなんだから塾でモテないわけもないよな。
「美鈴ちゃんの分も作るから席について。少年くんは食べ終わったらお風呂行きな?」
「あ、はい」
少年くんは気のない返事をして、俺の料理が気になる美鈴ちゃんは、俺の隣へとやってきた。
「料理が趣味だって言ってましたよね」
「パスタは簡単すぎて料理に入らないかもしれないけどね」
「そんなことないですよっ私は、あまり自分で料理したことないので、すごいって思いますよ!」
すでにパスタは茹で上がっているので、ソースと絡めるだけの作業だ。
2人分のパスタが出来上がると、仕上げに黒胡椒を振るのだが、その瓶を美鈴ちゃんに手渡した。
「はい。仕上げやってみる?」
「え?え?どうしたらいいですか?」
「パッパッって両方やって」
緊張気味の美鈴ちゃんが黒胡椒の蓋を外すと、ぎこちない動きで黒胡椒をかける。
「そんなもん、そんなもん」
「これくらいでいいです??ほんとに?」
「うん。上出来です」
俺は、お皿2つを持ってテーブルがあるほうへと行く。スプーンとフォーク、ブレットと飲み物を持って来る頃には、少年くんは食べ終わっていた。
「じゃ、オレはお風呂」
「私はいただきますです」
少年くんが席を立つと、逆に美鈴ちゃんは座る形で、俺も席についた。
「俺もいただきます。サラダとかも作れればよかったんだけど、マンションに食材あまりなくてね。申し訳ないね」
「いえいえ、そんな!お兄さんのご飯食べれるなんて夢みたいです!!」




