急な雨で電車動かず
東京の天気は変わりやすい。夏場は、最近とくにそんなような気がする。
昼間は、めっちゃくちゃ晴れているのに、夕方くらいからゲリラ豪雨のような雨が降ってきたりする。
今日は、そんな日だった。
瞬間的に降り続くゲリラ豪雨は、わりと短時間でやんでしまうはずなのに、なんとか線状体?のせいなのか、夕方からずっと雨が降り続いていた。
「(………傘とか持ってるのかな」
閉店ギリギリまで悩むお客さまがいたので、お店を閉めるのが遅くなってしまった。21時半ごろにお店のシャッターを閉めようとしていると、カバンで頭をガードした美鈴ちゃんの姿が見えた。
「おーい」
「あ!お兄さんっ」
女子高生が、花屋の屋根のあるところまでやってきた。
ザーザーの雨にうたれてずぶ濡れ状態だ。
「大丈夫?」
「今日、折り畳み傘を持っていなくて」
傘を貸したいけど一本しかない。
「でも、あとは家に帰るだけなんでっ」
心配にはおよびません。みたいな口調なのだが、夏用の制服をきている美鈴ちゃんは、雨粒がはりついて肌が透けてしまっていた。
「えっと…………そのまま、電車に乗るの?」
「え?」
必死に前だけを見て走っていたのだろう。自分の姿をお店の鏡で見た瞬間に俺が言いたいことを理解したみたいだ。
「わぁ!」
肌が透けているというか、下着まで透けてしまっている。
「ちょっと待ってて」
俺は、お店のロッカーから、カーディガンを持ってきた。
「はい。これ、着て」
「あ、ありがとうございます!でも、なんで?」
「花屋って常に冷房が効いてて寒いから、俺冷え性なんだ」
美鈴ちゃんは、黒いカーディガンに腕を通して、前を締める。
「あと、シャッター閉めるだけだから、駅まで送る」
そういってお店の電気を消して、傘を持って戻ってきた。
「ごめん。傘一本しかないんだ」
「あ、いえ!すでに濡れてるので…私のことはあまり気にせず」
「でも、できる限りコッチよって」
なんか、ドキドキしている相手の鼓動が聞こえてきそうで、なんだか自分までドキドキしそうになる。
歩き始めると、水たまりに勢いよく踏み込んだように足元が濡れてしまう。
少しして、渋谷駅までつくと、大変な事態に見舞われることになる。
「あ…………あれ?電車止まっちゃってる」
「あー夕方から結構降ってたから、その影響なのかな」
スマホを持ってないとこういう時、不便だなと思う。
「復旧の見込みなし。ってなってる…」
なんの影響かはわからないけれど、電光掲示板には、何分後に発車するのかという事が書かれていない。
「うちに来る?」
なんとなく言った言葉だけれど、女子高生には大事のようだった。
「えぇ?!そんなそんな!え!(お泊まり?!」
「むしろ、塾の人達はどうしてるの?」
美鈴ちゃん自身が塾の終わりから、走って駅にきたように、他の生徒さん達も同じ事で困っていたりはしないのだろうか?
「うーん…みんなお迎えとかくるから…どうなんだろう。あ、でも他の人も立ち往生してるみたい」
美鈴ちゃんはスマホを見ながらグループメールなのか、連絡網なのかを見つめている。
「都内の友達の家に泊まる人とかいるみたいですけど…とりあえず私も学校の友達に聞いてみます」
こういうときに、車があると良いってことなのかもな。俺も誰か車を持っている人に借りたほうがいいだろうか。
「あの!お兄さんの家に泊まるのって本当に大丈夫ですか?」
不意に、意を決したように美鈴ちゃんから話しかけられた。
「急にどうしたの?」
「その、あの、友達に事情を話したら…実家には、うちに泊まってる事にしてあげるから、お兄さんの家に行ったほうがいい!って…なんか…すごい言われてて」
学校の友達に恋を応援されているのだろうか?
「俺はかまわないけど」
初めからその提案はしているわけで。
「あの!じゃー私、お兄さんの家にお邪魔しますっ」




