夏休み
そういえば、あれから文通は3週間くらい続いている。
よく飽きないな。という気持ちではある。
いまは7月の後半になったので、もしかしたら女子高生は夏休みに入ったのかもしれない。
部活は引退したと言っていたけれど、塾があるのか、昼すぎくらいにフラリとやってくるようになった気がする。
そういえば、こないだの手紙の中に、「仕事のお休みっていつですか?」という問いかけがあったような気がするな。
「こんにちはっ」
夏休みに入っても制服を律儀に着ている女子高生って偉いな。
「こんにちは」
挨拶を交わすことへの距離感は、だいぶなくなってきたような気がする。
「今日は、課題をまだやってなくて早めに塾にいかないとなので」
俺と話す時間が短くて名残惜しそうに去っていく相手の手を俺は掴んだ。
「え?」
女子高生が振り返って、俺と目が合ってオロオロしている。
「明日」
「?」
「明日、仕事休み」
俺の言葉を聞いた女子高生が、労いの言葉をかけてくれた。
「それは、よかったですね!」
「どっか、行きたいとこある?って聞いてるつもりなんだけど」
「………………え?!でもでも、明日も塾があって」
「ランチだけとか、塾の前にデザートだけとかでも俺はいいけど、あまり乗り気じゃない?」
俺達の関係性はもしかして、文通相手とかになってしまっていた?のか?
「いえ、誘っていただけて嬉しいですけど!なんか、実感がなくて!夢みたいだなって……明日も13時半から夏期講習なんですけど」
「じゃ、その前にどっか行こうよ。俺と出掛けたい時間にココに集合で」
俺は女子高生の手をはなすと、待ち合わせ場所は、この花屋でと指をさす。
「はい!わかりました。また、明日です」
女子高生は、嬉しそうに手を振りながら塾へと向かっていった。
そのやり取りを見ていたオーナーがニヤニヤ顔で俺に話しかけてきた。
「あれあれ?女子高生は範囲外じゃなかったの?」
「成人するまでは、手を出さなければいいのでは?と、気持ちを切り替えてみました」
「それはそれで、男には酷なのでは…」
オーナーが俺に苦笑してみせる。
「でも、たまに大人になると学生に戻りたいなって時、ありますよね」
「それは、わかるっ時間の流れとかねっ」
オーナーの切実な涙ぐましい悩みを聞いたところで、俺は仕事を早めに片付けると早上がりをして帰った。




