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〈蒼銀の剣〉の夜宴

戦いの余韻がようやく静まった夜、〈蒼銀の剣〉のギルドホールは久々の賑わいと笑顔に包まれていた。


長机にはリリィとシルヴィアが準備した料理が彩り豊かに並び、ローストチキンの香ばしい匂い、香草を効かせたポテトグリル、濃厚なキノコシチュー、焼きたてのパンの湯気が部屋いっぱいに広がる。


「──皆、強さは剣の腕だけじゃない。言葉を交わせる仲間がいることが何よりの盾だ」

クラウスがグラスを掲げると、周囲の声も自然に重なった。


「乾杯──!」

グラスの音が響き、笑顔が交錯する。


「この香り、たまらんな……!」

エルドが満面の笑みでローストチキンを頬張る。ガロウも無言でスープを啜りながら頷く。


「見た目によらず味にはうるさいガロウさんが黙るなんて珍しい」

カレンが笑い、レオンも肉を頬張りつつ会話に加わった。


「王都の騎士団って、毎日こんな豪勢な飯が出るのか?」

ヴァルドが苦笑しながらローストチキンを小皿に分ける。


「そんなわけないさ。粗食続きで胃が縮んでるよ」

シルヴィアが微笑みながら応じる。


「でもこれを食べると、昔の戦場帰りのこと思い出すな。ユリウスが作ってくれた飯がなかなかの味だった」

ヴァルドの言葉にカレンが目を輝かせた。


「ユリウス様がお料理を?」

リオも興味深そうに耳を傾ける。


「そうだ。剣だけじゃない、ユリウスは何でもやる男だった。生き残るために、仲間を守るために」

フィアはワインを口に含みながら静かに話す。


「今も変わらないわね」

ユノが遠くを見るように呟く。ほんの少しだけ寂しげな目だった。


話は戦いの話題へと移る。

「今日の一撃で一番驚いたのはヴァルドさんだ。あの大剣の一振り、空気が震えた」

「そうだ。あの異形が頭から真っ二つになった」

エルドが大きく頷き、レオンも感嘆する。


「フィアさんの連撃もすごかったぜ。双剣ってあんな風に使うんだな」

「双剣は状況と流れを読む武器。反応より先に展開を作る。お前の槍も似ている」

フィアの視線にレオンはにやりと笑った。


「こんな話ができる日が来るとはな」

会話が弾む中、リリィが料理を運びながら声をかけた。


「あの……昔のユリウスさんって、どんな人だったんでしょう?今の彼からは想像がつかなくて……」

「そうだな。もっと人間味のある話を聞きたい」

リオも興味津々で身を乗り出す。


「寝坊とか、うっかりミスとか……」

ヴァルドが即答した。


「あったよ。ユリウスが魔術の修練に没頭しすぎて髪がチリチリになったこともある。静電気まみれで雷精霊の怒りを買ったとか噂されてな」

「それ見たかったです!」

カレンの目が輝き、リオも笑い、シルヴィアもくすくすと笑った。


「そんな素顔を見せたら、もっと親しみやすくなるのにね」

「やめてくれ」

ユリウスが眉をひそめると、皆が一斉に笑った。


料理も進み、談笑の輪が少しずつ細分化する。


リオとフィアは戦術模型のパンくずを前に静かに話し合う。

「俺の矢が届く前に、魔獣は左へ逃げる……」

「あの種の魔獣は熱源の高い方へ向かう傾向がある。ユノの魔力も動きを誘導する要素よ」

「なるほど……狙撃の精度ばかり考えてたけど、動きを誘導するのも戦術なんだな」

「貫通力も大事だけど、戦場では“選ばせる”ことが強い。あなたの弓にもできることよ」

わずかな微笑みを交わす二人。


別の一角ではユノが魔術理論を語り、シルヴィアやリリィが興味深そうに耳を傾ける。


「氷魔術は冷却や凍結ではなく、エネルギー伝達を遮断することが本質よ」

「凍結は結果に過ぎず、動きを封じる点で回復魔術とも似ています」

「なるほど……勉強し直さなきゃ」

シルヴィアが感心し、リリィも目を輝かせた。


「リリィは基礎がしっかりしているから、応用も伸びるわ」

ユノの珍しい笑顔にリリィが頬を赤らめ、カレンが焦りながら近づく。


「ユノさんの笑顔、ずるいですよ!ユリウス様が見てたらどうするんですかっ!」

「彼に学び、尊敬しているだけです」

シルヴィアのにこやかな言葉に場が一瞬静まる。


「ここにいる女性陣、ほとんど彼のこと特別に思ってるんじゃない?」

誰かが軽く言うと、リリィ、カレン、ユノが一瞬固まる。


「私はただ感謝してるだけ……」

「ユリウス様は神聖な存在……」

「否定はしません」

それぞれの答えに、レオンとエルドがワイン片手に吹き出した。


「にぎやかでいいじゃねぇか」

「こりゃバトルより修羅場だな……」

クラウスも笑いながら、その場の穏やかな空気を見守る。


そのとき、受付嬢シエルが駆け込んできた。


「すみません、遅くなって……」

「遅刻の罰だ。ちゃんと食べてけ」

エルドがスープを差し出し、ガロウがパンを渡す。


「ありがとうございます!でも皆さんに報告も──」

「報告は明日でいい。今は仲間の時間だ」

クラウスが断言し、皆が頷いた。


戦いの日々は続くが、この夜だけは、ただの仲間として──


温かな灯の下、笑い合い、語り合い、そして未来を誓う場所。


それが〈蒼銀の剣〉だった。


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