表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/42

霧晴れの朝にて

遺跡の天井の崩落を避けるようにして、ユリウスは転移装置の残骸を越え、地上への道を辿った。


 その足取りは重い。だが、迷いはなかった。


 ノクス=アストラルとの対話。その余韻はまだ胸中に残っていたが、今はまず──仲間たちの元へ帰ること。


 遺跡の出口に差しかかると、ひときわ強い陽光が差し込んだ。まるで長い夜を抜けたかのような、穏やかな朝の光。


「──ユリウスさん!」


 声に振り返ると、そこには見慣れた顔ぶれがあった。


 〈蒼銀の剣〉の仲間たち。シエラ、リリィ、リオ、エルド。そして、アリシアもその中にいた。


 驚きに目を見開くユリウスに、シエラが駆け寄ってきた。


「無事だったのですね……本当によかった……!」


 シエラは、思わずその胸に飛び込むようにして彼を抱きしめた。ユリウスが硬直していると、すぐに気づいて離れる。


「あっ……すみません。つい、心配で……」


「いや……こちらこそ、心配かけたな」


 そのやり取りに、リリィが泣き笑いしながら近づいてきた。


「本当によかったです……ずっと心配してました……!」


 エルドは腕を組み、ふんっと鼻を鳴らす。


「無茶すんなっつっても無駄だって分かってたけどよ……今回はマジで戻ってこいって祈ってたぜ」


 リオも目を細めて頷いた。


「アリシアさんから連絡が入った時は、正直間に合わないかと思ったが……さすがですね、ユリウスさん」


「……アリシア?」


 ユリウスが視線を向けると、アリシアが静かに一礼する。


「……遺跡の外で目を覚ました時、すぐに支援要請を出しました。転移装置の一部が稼働していて、それで外に逃げられたみたいです。あなたの剣が、私たちを守ってくれたんだと思います」


 彼女の目には、涙が浮かんでいた。


「ありがとう、ユリウスさん。本当に……ありがとう」


 ユリウスは、わずかに微笑んだ。


「俺一人の力じゃない。みんながいてくれたからだ」


 その言葉に、ギルドの仲間たちが頷いた。仲間との絆──それこそが、彼の剣を支えたものだった。


 アリシアが小さく息を整え、再び口を開いた。


「それから、他の調査隊の皆さんも、大部分は無事です。一時はあの異形に捕らえられていましたが、拘束が解けたあと外で保護されました。重傷の方もいましたが、幸い命に別状はありません。ユリウスさんがあの異形を倒してくれたから、被害を最小限に抑えられたのだと思います」


 ユリウスは、静かに頷いた。


「……そうか。それを聞いて安心した」


 少し離れた場所で、シエラがそっと口を開いた。


「……それで、あの“異形”とは……どうなったのですか?」


 ユリウスは空を仰ぐ。その先には、祭壇の天井にあった歪みが、ほんの微かに揺れていた。


「終わってはいない。でも、対話の道は残された。戦うだけが全てじゃないって……今、少しだけ信じられる」


 シエラはその言葉を聞いて、優しく笑った。


「そう……ユリウスさんがそう言うなら、きっと間違っていないのでしょうね」


 彼女の口調には、いつもの穏やかさが戻っていた。仲間がそばにいる──それだけで、普段の自分を取り戻せる。それはユリウスも同じだった。


 空はすっかり晴れていた。


 遺跡の探索、そして未知との邂逅。


 だが、それは終わりではなく、始まりでもある。


「……帰ろう。まずは、報告と休息が先だ」


「はいっ! 帰ったらちゃんとご飯食べて、寝て、あとシエラさんにたくさん説教されてくださいね!」


「も、もう……そういう茶化さないでくださいよ」


 笑い声が、遺跡の入口に響いた。


 ユリウス・レインハルト。


 彼の旅路は、まだ続く。だが今は──


 仲間と共に在る、その“現在”を胸に刻みながら、彼は歩き出した。

そして、彼が背にした遺跡の奥底には、いまだ静かに脈打つ力があった。


 “影”との邂逅、それは運命の序章。


 記されぬ歴史の片隅に、ひとつの選択が刻まれた。


 光と闇、その狭間で。


 誰も知らぬ対話の記録が、静かに未来を待っている。

感想、評価、ブックマークよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ