第42話〜祝福と帰還(後編)〜
翌日、私たちはカムラン村を出発することになった。カムラン出発の日の朝は晴れ渡る空が村全体を包んでいた。私たちの旅立ちは村の人々に見送られるようだった。
「魔法少女ビビット・マジカ!気をつけてな!」
村の戦士の一人が声をかけると、他の村人たちも口々に感謝の言葉を伝えてくる。
「本当にありがとう!これで子どもたちも安心して眠れるわ!」
「君たちがいなかったら、私たちは……」
村人たちの感謝の言葉に、私たちはそれぞれ微笑みながら応えていた。
「またこの村に来るよ!その時は天使っていう肩書きを引っ提げてくるからね」
自信たっぷりにそう言うと、村人たちは安堵の笑顔を浮かべた。
「こんな村いいな。私、住むんだったらこんな村がいいかも」
マーヤは少し名残惜しそうに村の景色を振り返りながら呟く。
「私もこんな村に住んでみたいです」
「でも今は私たちは戦いの真っ最中!成長した姿をみんなに見せる為にも頑張らないとだね!」
「そうですね」
「うんうんっ」
エリスは少し離れた場所で、村の門の近くをじっと見つめていた。母の記憶が残るこの村を離れることに、彼女はどこか寂しさを感じているようだった。するとラジエルがエリスの元へと向かっていく姿が見えた。
「……エリス、大丈夫かい?」
ラジエルが気遣うように声をかけると、エリスは振り返り、小さく微笑んだ。
「うん。大丈夫。私も……もっと強くならなきゃ、って思うから」
「そっか。エクシアの推薦はどうするんだ?今年も蹴るのか?」
「受ける寄りの保留かな。少し考えたい」
「わかった。良い結果を楽しみにしてるよ」
「それじゃあそろそろ行くね!みんなありがとう!ラジエルさん置いてくよー?」
「ああ、待ってくれ。じゃあなエリス。また今度会おう」
村の門を潜ると、村人たちの見送りの声が次第に遠ざかっていく。その背中を見つめる村人たちの瞳には感謝と希望が宿っていた。
「さあ、行こう。ロンディムへの帰り道は長い」
ラジエルが軽く肩を叩きながら先頭を歩き出す。
「ロンディムに戻ったら次の街に行くんでしょ?」
「いや、次のやることは星教会のダンジョンに行っての修行だ」
「えぇえ…嘘ぉ…」
私たちの背中には、それぞれの想いが宿っている。戦いの記憶、救った人々の笑顔、そしてこれからの旅への期待。それぞれが新たな一歩を踏み出す決意を胸に、私たちはロンディムへの道を進んで行くのだった。
*
ルナたちが去った後、私は母の遺品整理をするため、家の片付けを始めていた。母が使っていた部屋を掃除している最中、ふと本棚に他の本より劣化していない本があることに気づいた。
「……これ、何だろう?」
その劣化していない本に触れてみると本棚が動き出し、そこには地下へと続く隠し階段が現れた。
「こんなところに……」
階段を下りていくと、そこには母が使っていた研究施設のような部屋が広がっていた。書物や道具が並ぶ中、一対の美しい双剣が壁に飾られているのが目に入った。その下には、封をされた手紙が置かれていた。
「これって…!」
私は手紙を開き、母の文字で書かれた言葉を読む。
『エリス、貴女自身の道を進みなさい。私の夢は、貴女の未来の中にあるのだから――お母さんより』
「お母さん……ありがとう」
私は壁に掛けられた双剣を手に取り、静かに頷いた。そして、心に決めたのだった。
「残された時間で……私ももっと強くなる。そして、私の道を見つける。まずはその為に――――」
私は双剣を腰に身につけ、コーンウォールへと向かうことを決心した。あと二ヶ月。エクシアの推薦者としてもっと実力をつけなければ、エクシアの名前に泥を塗らないように、そう思いながら私は旅の準備をし始めるのだった。




