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魔法少女ビビット・マジカ  作者: 雪音月華
魔法少女ビビット・マジカ〜出会いと旅立ち〜
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第4話〜新米冒険者の最初の試練〜

「ごめんなさい!昨日報告するの、すっかり忘れてました!」


 私はバタバタと駆け込むように冒険者協会のカウンターに駆け寄り、受付嬢のアリゼさんに頭を下げた。勢い余ってカウンターに手をついたせいで、机が「ガタンッ!」と鳴る。


「えへへ……でも依頼はちゃんと終わらせました!猫ちゃん、無事に見つかったよ!」


 アリゼさんは少し驚いた様子だったが、すぐに柔らかく微笑んでくれた。


「さすがですね、ルナさん。初めての依頼とは思えないほど手際が良かったですよ。昨日のうちに依頼者から感謝の手紙が届いていました」

「やったあ!初任務クリア!」


 私は思わずガッツポーズを取る。依頼をこなしたことで達成感はあったけど、わざわざ感謝の手紙まで送ってもらえるなんて! これは、ちょっとテンション上がるやつ!


「でも……今日入ってきた依頼も、やっぱり雑用ばかりなんですよね。ルナさんにはあまりお気に召さないかもしれません」

「うぐっ……」


 私は肩を落とした。そんな気はしてたけど、やっぱり雑用ばっかかぁ……。いやでも、こういう地道な仕事をこなしてこそ、次のステップが見えてくるってもんだよね!たぶん!


「まぁ最初は地道にやるしかないよね、うん!」


 自分に言い聞かせるように頷くと、ふと昨日のことを思い出した。


「そうだ、そういえばさ! 昨日買い物してたら星教会の修道士さんに会ったんだよ! リーゼヴェルデ・セレスティアっていう名前の、めっちゃ優しい人でさ!」


 アリゼさんは少し驚いたように目を丸くする。


「リーゼ様、ですか。すみません。私、最近入ってきた修道士様の名前は知らなくて……」

「彼女、市場での買い物を任されてたんだけど、すっごく普通の女の子って感じだったよ! ほんわかしてて、癒し系で、すごく素敵な人だった!」


 私は机の上に肘をつき、頬杖をつきながら目を輝かせる。あのふんわりした雰囲気、優しい声……いや~、ほんと癒されたなぁ……。


「ふふ、それは素敵な出会いですね。今度私にも紹介してください、ルナさんのお友達を」

「もちろん!いつか一緒にお茶でもしようね!」


 そんな話をしていると、アリゼさんの表情が急に真剣になる。


「そういえばルナさん、実は……ルティナの街は平和すぎて、冒険者の重要性を忘れがちなんです。昼間から酒を飲んでいる冒険者も少なくありません」

「急にどうしたの?平和なら良いと思うんだけど」

「平和なのは良いことなんですけれど、そうやって腑抜けていると人は怠惰になってしまうものなんですよ。毎日昼から酒に入り浸る人も多くなってきているんですよ」


 言われてみれば、昨日リーゼをナンパしてたあの輩たちとかもそうだったかもなぁ………。なんて思っていたら——


「バンッ!!」


 突然、冒険者協会の大きな扉が勢いよく開いた。


「っ!?」


 驚いて振り返ると、そこには屈強な男が立っていた。背が高く、筋骨隆々で、肩には大剣を担いでいる。いかにも荒々しい雰囲気……そして何より——


「……あ、ハゲだ」

「それあの人の前で言わないでくださいね?」

「あ、はい」


 めっちゃツルツルな頭が目に入り、つい小声で呟いてしまった。いや、光りすぎじゃない!? 反射しそうなんだけど!?私は思わず目を細め、手をかざして光を避けようとする。お母さん、ハゲがいるよ!私、初めてこんな綺麗なハゲを見たよ。すると小声でアリゼさんが私に囁いた。


「そろそろくる気がしてたんですよ、ルティナ支部の冒険者の中で一番厄介な人が。ルナさん、彼はボマーと言ってAランクの冒険者です。強いんですけれど、少々素行が悪くて……。話しかけられても軽く流してくださいね」

「なるほどね~、めんどくさそうなタイプだ」


 ボマーは隣の受付で依頼完了の手続きをし終わったのか、こっちに視線を向けてきた。そして、じっくりと私を見定めるように目を細め、ニヤリと笑いながら近づいてくる。


「おい、田舎臭ぇガキが何してんだ?こんなところで命張るよりも、家に帰ってママの母乳でも飲んでろよ」

「ぎゃはははっ!兄貴、確かにそうデスね!いいデスか?ここは子供が来ていいところじゃないんデスよ?」


『……おぉぉぉい!? なんだそのチンピラみたいな絡み方!? つーか、母乳!?さすがに無理があるでしょ!!』


 私はツッコミを口に出すのを堪えながら笑顔で流そうとするもボマーとその仲間はニヤニヤしながら私を見下ろしている。くそっ、このハゲめ……! でも『このハゲ!』って言うだけじゃ子供らしいか。


「へぇ~、そんなこと言うならさ、アンタこそママの元に帰って“オギャバブ”でもした方がいいんじゃない?暇つぶしが冒険者の仕事なら、私でもA級取れちゃうかも?」

「おうおう、随分と舐めた口きくじゃねぇか。ちなみに俺の母ちゃんはもう死んじまったよ」

「舐めたんじゃなくて、事実を述べただけだけど。もしかしておじさん、耳が遠いんじゃない?そんなことじゃ依頼に出てもすぐにママの所に帰るだけだよ」


 ボマーは面白がるようにニヤリと笑い、挑発を返してくる。


「面白いなガキ。買ってやるよ、その喧嘩」

「いいね、なら決闘で勝負しようか」

「いいじゃねぇか。コテンパンにしてやるよ、覚悟しとけよ!このチビ野郎!」

「あははっ、こっちのセリフだよ!」


 一触即発の空間が目の前で繰り広げられている中、アリゼさんはため息をつきながらレモネードの入ったコップに手をつけるのだった。


「……はぁ、どうしてこうなっちゃったんだろう」

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