第30話〜魔法少女の旅立ち〜
「明日出発することに決まった。だから今日はお休みにしよう!各自自由行動!」
私、リーゼ、そしてマーヤはいよいよ明日ルティナを出発することになった。それぞれが自分のやるべきことを終わらせ、最後の準備を整えることにした。
「ふふふっ、良いこと思いついちゃった」
私は部屋にこもり、ひとつの計画を思いついた。これは二人にとってサプライズになるはずだ。そう考えた瞬間、なんだかワクワクが止まらなくなった。私たちはこれから冒険者として新しい道を進むことになる。二人がどんな反応をするか楽しみで仕方がなかった。
「よし、必要な材料買ってこないと!」
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その頃リーゼは教会内を歩き回り、これまでお世話になった人々へのお礼参りをしていた。
「…感謝の気持ちは、伝えるべきですから」
彼女は静かにそう呟き、お世話になった聖女や司書さん、教会長など一人ひとりに挨拶をしていた。修道士としてのリーゼはいつも落ち着いていて優雅である。けれどその内に秘めた強い信念と心優しさが、彼女の強さの源なのだと彼女を知る人物は理解しているのだった。
「お世話になりました」
挨拶回りを終えたリーゼは、次に冒険者登録をしに協会へと向かった。新たな旅立ちの準備を整えるために。
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「ぽぽぽっ…ピーッ、接続完了」
一方で、マーヤもルナと同じように自室にこもっていた。しかしルナとは違い、その様子はどこか異様で普段のふんわりとした雰囲気とは違っていた。彼女は虚ろな目で、誰に向けるともなく呟いていた。
「……ロンディムの………の回収。わかりました…。」
数時間後、マーヤはベッドでぐっすり眠っていたことに気がついた。
「いつのまにか眠ってたみたい…」
魔時計を眺めると時は既に夕方を指し示していた。するとお腹の虫が鳴り響く。
「ご飯食べなきゃ…」
そう言うとマーヤはパジャマのまま食堂へと足を運ぶのだった。その後ろ姿は呑気な物だった。無論指示の内容や誰からの指示なのか等彼女は知る由もないのだった。
*
翌朝私たちはルティナの関所に集まるとラジエルがすでに馬車の前で待っていて、いつものように優雅な笑みを浮かべていた。
「準備ができたようだね。じゃあ、馬車に乗って?」
彼女が優雅にそう言うと、リーゼとマーヤが動こうとする。でも、私はまだ大事なことが残っていた。
「ちょっと待って!」
ラジエルを呼び止め、私はバッグの中からイメージカラーのリボンを飾り付けたステッキを二つ取り出した。これは、リーゼとマーヤのために作った魔法少女としての新たなる力。これを二人にプレゼントしようと、昨日ずっと作っていたものだ。
「これ、二人にプレゼント!お母さんから貰った私のステッキに比べたら全然性能良くないんだけど、受け取ってくれる?」
ステッキを二人に渡すとリーゼが驚いたように目を見開いた。
「ありがとうございます、ルナさん」
リーゼのイメージカラーは青。青のリボンがステッキに装飾してある。魔力を流し込んだ際の発光色も青で統一している。彼女の冷静で落ち着いた性格、そして修道士。否、聖女見習いとしての雰囲気にぴったりだった。
「リーゼにピッタリだと思って作ったんだよ」
リーゼは一瞬驚き、すぐに微笑んで言った。
「ありがとうございます、ルナさん。すごく素敵です…本当に」
その感謝の言葉に、私は胸が温かくなった。次にマーヤだ。マーヤもローブを見つめている。彼女に渡したステッキには黄色のリボンが装飾してある。発光色も黄色で統一してある。マーヤの明るく、ちょっと不思議な個性には、まさにこれが似合うと思った。
「これもマーヤのためにも作ったんだよ?どうかな?」
「ふぇぇ…わたしが、魔法少女…?」
「そうだよ!マーヤならすごく似合うと思うの」
マーヤはステッキを持つと少し恥ずかしそうにくるりと回り、ポーズをとった。
「ふふっ、これで私も魔法少女になれたのかな…!ありがとう、ルナお姉ちゃん…!」
「お姉ちゃん!?」
「ダメ…だった…?」
「ううん!ダメじゃないよ!」
「あ、ずるいです!私もお姉ちゃんですからね、マーヤさん」
「うんっ。ルナお姉ちゃん、リーゼお姉ちゃん…!」
彼女が照れながらも嬉しそうにしている姿を見ると、私まで幸せな気持ちになったのだった。
「今度こそ準備出来たみたいだね。じゃあ行こうか」
私たちが乗り込むと馬車は走り出した。さようならルティナ、またこの街に帰ってくるから。そう想い馳せているとロンディムへの国道に入った。いざ行かん、天使育成機機構のあるコーンウォールへ。
*
馬車が走り始めてからどれくらい経っただろうか。太陽が登り始めたと思っていたら気づけば太陽が遥か高い位置に来ていた。空には青空が広がり、風が心地よく吹き抜けていく。ラジエルが馬を走らせている中、私は重要なことを思い出した。
「そうそう、魔法少女としての名前を決めなきゃね。せっかくだから、二人が自分の魔法少女としての名前をつけようよ!」
「えっ、名前ですか?」
リーゼは少し驚いた顔をして、腕を組んで考え始めた。普段はクールな彼女だけど、こういうことになると意外と真剣に悩むんだな、と私はちょっと笑ってしまった。
「わたしの魔法少女の名前…何かカッコいいのがいいです…!でも派手なのはあまり好きではないですし…」
リーゼらしい真面目な悩み方だなと思いながら、私はアドバイスをした。
「リーゼならシンプルでカッコいい名前が似合いそうだよ!」
しばらくして、彼女は少し頬を赤らめながら、名前を口にした。
「じゃあ、私は…『セレスティア・ルミナス』にします。星教会における月の神様、ルミナス様から名前を拝借して…」
その名前を聞いた瞬間、私はすぐにピンときた。やっぱりリーゼらしい、神聖で強い名前だ。でもセレスティアって、自分の苗字だよね…?まあ良いか、似合ってると思うし。
「いい名前だね、リーゼ!」
彼女は頷き、満足げな表情を浮かべた。マーヤの方を見てみるとぼんやりとした様子で指をくるくると回しながら名前を考えていた。
「えっと…私はね。『プリズ・マギア』かな…!プリズムとマギア、なんだか響きがいいからこれにする…!」
「マーヤらしい名前になったんじゃない?」
私は思わず拍手をしてしまった。マーヤの独特なセンスは本当に面白い。こうして、私たちはそれぞれの名前を持つ魔法少女としての新たな一歩を踏み出した。リーゼは『セレスティア・ルミナス』、マーヤは『プリズ・マギア』。そして私は―――。
「魔法少女ビビット・マジカの冒険の始まり!」
私たちは笑い合い、馬車はロンディムへと向かって静かに進んでいった。旅路の先には、どんな困難や出会いが待っているのか、誰もまだ知らない。でも、今なら何でも乗り越えられる――そんな気がしていたのだった。
第一章これにて完結です!二章から本格的に世界観の掘り下げを行っていきます。
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