第26話〜夕暮れの想い〜
噴水広場へ向かう道中、三人は街の広場を通り抜けていた。そこにはたくさんの露店が並んでおり、カラフルな装飾品や雑貨があちらこちらで売られていた。
「ねえ、見て見てリーゼ!あのぬいぐるみ、可愛くない?」
ふと足を止め、指さした先には可愛らしいぬいぐるみが並んでいるお店があった。
「本当ですね、すごく可愛いです…!」
リーゼもそのぬいぐるみに目を留めた。まるっこいフォルムに愛らしい表情のぬいぐるみたちが、店先で色とりどりの並びを見せている。
「マーヤにこれ、プレゼントしてあげたら喜ぶかな?」
私はそう言いながら、一つの黄色いぬいぐるみを手に取った。五色あるうちの三色をリーゼと話し合い決めた。黄色はマーヤ、ピンクは自分に、青はリーゼに――と、それぞれの色違いを選んでいた。
「お揃いですね」
リーゼは微笑みながら自分の青いぬいぐるみを抱きしめる。
「うん、マーヤもきっと喜ぶよ。お揃いなら余計にね」
私もピンクのぬいぐるみを握りしめ、満足そうに頷く。
「可愛いものに囲まれるのは良いものだな」
リコリスさんは少し照れくさそうに言いながらも、三人でお揃いのぬいぐるみを買う姿を見て彼女自身も微笑んでいた。
「すみません!これお願いします!」
店主にお金を払いに行き、お揃いのぬいぐるみを手にした瞬間、なんだかとても幸せな気持ちが広がっていった。
*
ぬいぐるみを買った後、三人は噴水広場のベンチに腰掛けて少し休むことにした。夕焼けが広場を優しく照らし、噴水からは涼しげな水音が響いている。
「今日はありがとう、リコリスさん」
感謝の気持ちを伝えると、リコリスさんは静かに頷いた。
「私も楽しかった。久しぶりにこういう時間を過ごせてよかったよ」
リコリスさんの口調はいつものクールな感じだが、その表情にはほんのりと温かさが感じられた。
「これで旅の準備も万全ですね」
リーゼが短剣をちらりと見ながら言う。リコリスさんが選んでくれた武器が、これからの旅で大きな支えになるだろう。
「そうだな。でも、これからが本番だよ。強くなる為には?」
「心技体、三つを鍛えるんでしょ?わかってるよリコリスさん」
リコリスと噴水の水面を見つめながら私とリーゼは答えた。その後しばらく噴水広場の静かな時間が流れた後、リコリスが立ち上がった。
「さて、私はこれで。君たちの旅が無事であるよう祈っているよ」
リコリスは軽く手を振って、別れを告げる。
「リコリスさん、また会おうね!」
力強く手を振るとリコリスはふと足を止め、振り返って小さく笑った。
「もちろん。次に会う時、試させてもらおう」
そう言って、リコリスは背を向けて歩き出す。夕焼けに染まる広場の中、彼女の姿はだんだんと遠ざかっていく。
「リコリスさん、本当に強い人ですね」
「うん。でも、強さだけじゃない。優しさもあるんだ」
私の言葉に、リーゼも同意するように微笑む。二人はしばらく噴水を見つめ、リコリスの言葉を胸に刻み込んだ。そして、再び教会へと歩き出すのだった。




