第2話〜初めての友、芽生える希望〜
「そういえば、ルナさんは普段からあのように戦っているのですか?」
リーゼが興味深そうに私を見ながら尋ねた。
「うーん。普段って言われても…これが初めての実戦だから、なんとも言えないかな」
私は少し考えた後、胸を張って笑顔で答える。
「でもね。私が目指しているのは、ただ強いだけじゃない戦いなんだよ!」
「ただ強いだけじゃない……?」
「そう! 私の理想はね。人を守ることだけじゃなくて、見てる人の心に希望を灯す戦い方!」
私が胸を張って語るとリーゼは驚いたように瞬きをした後、クスッと笑った。
「ふふふっ。面白い人ですね、貴女は」
そんな他愛のない話をしながら二人で市場へ向かう路地を探し、静かな裏通りを歩いていくのだった。
「そういえば、修道士さん。毎回『修道士さん』って呼ぶのも面倒くさいし、名前を教えてくれないかな?」
私がふと思いついて尋ねるとリーゼは少し驚いたように目を瞬かせ、それから優しく微笑んだ。
「もちろんです。私の名前はリーゼヴェルデ・セレスティア。リーゼと呼んでください」
「リーゼかぁ、覚えたよ! じゃあ、よろしくね。リーゼ!」
「こちらこそ、よろしくお願いします。ええと……貴女は? まだお名前を聞いていませんでしたね」
「私?えへへ、ちょっと待っててね」
リーゼの問いに私は思わずにやりと笑い、数歩歩いてから わざとらしく振り返る。
『この瞬間を待ってた!お母さん直伝のご挨拶を披露する時がついに来たんだ……!』
「人々を救済し、悪を断罪する正義の味方!魔法少女ビビット・マジカ、ここに参上!」
裏路地に響き渡るように、私は堂々と宣言する。その瞬間、ルティナの街角を冷たい海風が吹き抜け、頬をかすめるのだった。……うん、ちょっと寒い。でも気にせずに私は胸を張り続けた!
「ビビット・マジカさん? ふふっ、あまり聞いたことのない名前ですね」
リーゼは微笑を浮かべながら、少し戸惑ったように首を傾げる。
「ああっ! えっと、違くて!」
私はあわあわと慌てて手を振る。
「そうじゃなくて!えっと、違くはないんだけど……私の本当の名前はルナ・ナナホシ。でもビビット・マジカは、魔法少女としての名前なの!」
「そ、そうなんですの?」
リーゼは魔法少女という聞き慣れない言葉に戸惑いつつも、納得したように小さく頷いた。
「なるほど……では、よろしくお願いしますね、ルナさん」
「ねえ、差し支えなければ、歳も教えてくれる?」
「さ、さし……なんですか?」
リーゼは一瞬きょとんとした顔をした。
「あっ、ごめんね。年の話!」
「あ、はい。年ですね?ええと、私は十二歳です」
「うそぉ!?私も十二歳だよ!偶然?それとも運命!?これはきっと運命の女神様が私たちの出会いを導いてくれたんだよ!」
「運命の女神様? ……ルナさんも教会に所属しているのですか?」
リーゼは不思議そうに尋ねてくる。
「ううん! 運命の女神様っていうのは、お母さんの書庫にあった御伽話に出てきた神様フォルトゥナのことだよ!」
「そんな神様もいらっしゃるのですね。知りませんでした」
「あは、あははは……そういうことじゃないんだけど」
私は少し照れ笑いを浮かべるのだった。その後、私たちは他愛のない会話を続けながら市場へ向かうのだった。
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実はこの時私たち二人は同じことを考えていたみたいだった。『この人、本当にちゃんと生きていけるんだろうか……?』ってね。