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魔法少女ビビット・マジカ  作者: 雪音月華
第2章〜魔法少女の初めての日常〜
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第22話〜決意の日〜

「んぅぅ…」


 目を覚ました瞬間、柔らかなシーツに包まれた身体は心地よく、まるで温かな羽毛に埋もれているようだった。しかし隣に感じる妙な違和感がその安らぎを一瞬でかき消した。微かに聞こえる呼吸の音、隣の温もり――まさか、誰かが私の隣に寝ている!?ぼんやりとした頭の中で、疑念が次第に膨らんでいく。


「誰…?」


 私はゆっくりと目を開け、恐る恐る隣を覗き込んだ。そこに見えたのは、桃色の髪が枕に広がる見知らぬ女性。否、思い出してしまった。ジブリール…そうだ、彼女は天使長のジブリール。あの冷静で力強い天使が、なんと私の隣でぐっすり眠っている。


「えっ!?」


 驚きが私の身体を突き動かし、瞬間的に跳ね上がるように反応してしまった。結果、私はベッドから滑り落ち床にしりもちをつく。


「いっつぅ…っ」


 鋭い痛みが腰に走り、私は驚きと戸惑いで頭の中が真っ白になる。


「なんで天使様が私の隣に…?」


 目の前で起きた光景が信じられず、思わず自分の頬を軽くつねってみたが、当然ながら夢ではない。脈打つ心臓の鼓動が身体中に響き渡り、顔が一気に熱を帯びて赤く染まっていくのを感じた。もしや、私は天使様と一晩…一緒に?天使様と…!?


「うそでしょ…」


 目の前がぼんやりと霞んできて、軽いめまいが押し寄せる中、隣で眠っていたジブリールが私の騒動で目を覚ましたようだ。まだ眠そうな彼女は、ゆっくりと目を開け、手で軽く目をこすりながらぼんやりとこちらを見つめていた。


「おはよう…」


 彼女は微笑んで、のんびりとした声で挨拶をしてきた。いつもの優雅な佇まいとは違い、寝起きのせいか少し無防備な姿に見える。私は完全に混乱してしまい、何をどう言っていいのかも分からず、焦って言葉が口から飛び出してしまった。


「ど、どうして…天使様が隣で寝てるんですか!?」

「昨日は激しかったわね…ふわぁっ…」


 ジブリールは寝ぼけているのか変なことを言い出した。


「!?!?!?」


 ジブリールは目を掻きながら軽く肩をすくめた。


「まぁまぁ、落ち着いて。昨夜、宿に帰る途中であなたを抱えていたんだけど、どうやらあなたがしっかりと抱きついてきてしまってね…何度も離れようとしたけど、あなたが放してくれなかったのよ。だから仕方なく、そのまま一緒に寝ることになっちゃったわ」


「…ええええっ!?」


 私は思わず大声を上げてしまった。そんなこと、全く覚えていない。私がそんな風にジブリールにしがみついて離れなかったなんて、あまりにも恥ずかしい。頭の中で昨夜の記憶をかき集めようとするが、はっきりとは覚えていない。ただ、無意識のうちに彼女に甘えてしまったのだろうか。ジブリールは、私の反応に少し笑みを浮かべながら穏やかに言った。


「うぅぅ…恥ずかしい…」

「そんなに気にしないで。顔を洗ってきた方がいいわよ?」

「いってきましゅ…」


 彼女のその言葉に、私は少しずつ冷静さを取り戻した。自分の顔に触れてみると、熱で真っ赤になっているのが分かる。慌ててベッドから立ち上がり、ジブリールに促されながら、お風呂場へと向かった。


「なんでこんなことに…」


 お風呂場に入ると、湯気が立ち込める中、温かい水で顔を何度もバシャバシャと洗った。顔を洗うたびに、昨夜の出来事が少しずつ落ち着いていくようだったが、それでもまだ心の中には恥ずかしさが残っている。ちなみにジブリールさんは全裸に掛け布団を羽織っている状態だった。美しい曲線美の肉体をまじまじと見せつけられ、私の脳内がオーバーヒートしそうになっていた。


「どうしてあんなことに…。天使様と一緒に寝ていたなんて、信じられない」


 しばらくして、やっと落ち着いた私は部屋に戻り、ジブリールと共に荷物をまとめた。彼女はまるで何事もなかったかのように優雅に振る舞っているが、私の頭の中では、まだ昨夜の出来事がぐるぐると渦巻いていたのだった。



「これから朝ごはんでも食べに行きましょう。実はもう予約しているのよ」

「いいですね、行きましょう。私、お腹減りました」


 街一番のレストランに向かう途中、朝の光が通りを照らし、賑やかな人々の声が響いていた。街の活気は、昨夜の緊張感がまるで嘘だったかのように、穏やかで明るい。ジブリールは歩きながら、私に街の名所やレストランの評判などを教えてくれていたが、私は彼女の言葉をほとんど聞き流していた。昨夜の出来事がまだ頭から離れない。


「さあ、着いたわ。ここのお店よ」


 そしてレストランに着くと、そこには既に自警団や冒険者たちが集まっていて、楽しそうに談笑しながら朝食をとっている姿が見えた。天使たちも既に到着しており、ラジエルやハールーン、マールーンは、端のソファでぐっすりと眠っていた。どうやら彼らは徹夜で情報収集をしていたらしく、疲れが見える。


「ここが街で一番評判のいいレストランよ」


 ジブリールの言葉に促されて、私たちはレストランの中へと足を踏み入れた。店内は温かい雰囲気で、木の香りが漂い、活気に満ちている。


「これって…?」

「祝勝パーティよ?それも勿論、貴女の」


 レストランに足を踏み入れた瞬間、私の耳に飛び込んできたのは、にぎやかな笑い声やグラスがぶつかり合う音だった。店内は温かい光に包まれ、木製のテーブルや椅子が並ぶ空間に、さまざまな人々が集まっていた。自警団や冒険者たち、そして何より天使の存在がこの場所に特別な雰囲気をもたらしている。


「私の…?」


 彼女の背後に広がる賑わいはまるで祝祭のようだ。天使三人、ラジエル、ハールーン、そしてマールーンも端のソファでぐっすりと眠っていた。


「あの子たちは徹夜で動いててくれたのよ。だから寝かせてあげて?」


 私たちはテーブルに案内され、すぐに温かい料理や色とりどりの飲み物が運ばれてきた。ローストした肉に、新鮮な野菜を添えたサラダ、そして焼きたてのパン。香ばしい香りが私の鼻をくすぐり、思わずお腹が鳴りそうになる。


「さぁ、存分に楽しんで」


 ジブリールは優雅にグラスを持ち上げる。私はそれに習い、控えめにジュースを一口含んだ。甘酸っぱい果実の風味が口いっぱいに広がり、体の疲れをほぐしてくれるようだった。だが、宴はこれで終わりではなかった。突然、部屋の奥から声が上がり、アリゼとアリナが私のもとに歩み寄ってきた。


「ルナさん、こっちに来てください!」


 アリゼが私に何かを渡してくる。見下ろすと、手の中にはジュースの入ったグラスがあった。私は少し戸惑いながらもそれを手に取り、彼女たちに促されるまま壇上へと上がっていく。壇上から見渡すと、たくさんの顔がこちらを見ていることに気づいた。自警団の団員たち、冒険者たち、街の住民たち――彼らの視線には尊敬と感謝が込められている。心臓がドクンと大きく脈打つのを感じ、緊張感が一気に押し寄せてきた。その時、誰かが声を張り上げた。


「勇敢な魔法少女に敬意を祝して、乾杯!」


 一瞬の沈黙の後、部屋全体に歓声が響き渡った。グラスが一斉に持ち上がり、カチンと音を立てながら互いにぶつかり合う。私は驚きと感動で胸がいっぱいになりながら、自分もその一部になっているのだと感じた。こんな風に多くの人に祝福されるのは初めてだった。


「乾杯…」


 小さく呟きながら、私はそっとグラスを掲げ、彼らに応えた。気づくと、私の顔には自然と笑顔が浮かんでいた。



 宴会が本格的に始まり、皆が自由に会話を交わし、食事や飲み物を楽しんでいる。私も一息つきながら、ふとジブリールが隣に座っているのに気づいた。


「ルナさん、少し聞いてもいいかしら?」


 彼女は優しい微笑みを浮かべながら、私に問いかけてきた。


「あなた、天使に興味はあるかしら?」


 その質問に、私は驚いて彼女を見つめた。天使…王国で最も優秀な魔法使いに与えられる称号であり、まさに王国の象徴とも言える存在だ。しかし、私は今までそれを目指してきたわけではない。私の目標はあくまで魔法少女としての強さを極めることだった。


「いえ、私は…魔法少女として、もっと強くなりたいんです。なので、すみません」


 少し戸惑いながらも、正直な気持ちを伝えた。ジブリールは一瞬、考え込むように眉をひそめたが、すぐにまた微笑んだ。


「なるほど、あなたの目標はしっかりしているのね。でも、強くなりたいなら天使育成機関の訓練サポートはどうかしら?あなたにとっても、良い経験になると思うわ。」


 天使育成機関…それも聞いたことがある。王国中から集められた才能ある者たちが、さらなる高みを目指して修練を積む場所だ。私がもっと強くなるための道として、それも一つの選択肢かもしれない。すると隣にいたリーゼが突然声を上げた。


「私、行きたいです!」

「リーゼ!?」

「私、強くなりたいです。もっと、強くなりたいです…!誰かに守られるだけはもう嫌なんです…!」


 私も驚いて彼女を見た。リーゼは真剣な表情で私を見つめ、力強く頷いた。


「私も力をつけて、みんなを守れるようになりたいです」


 その強い意志に、私の胸は熱くなった。リーゼもまた、自分自身の目標を持ち、それに向かって進もうとしている。私は彼女の手を取り、力強く頷いた。


「わかった、なら私も行く。リーゼのことを守る、それは私の使命だから」


 そう言った瞬間、心の中に一つの決意が芽生えた。リーゼとともに、もっと強くなる。そのために、私は天使育成機関での訓練サポートを受け入れることにした。一週間後、旅支度を整えて最西都市コーンウォールへ向かうことが決まったのだった。

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