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ヤンデレ短編劇場  作者: 雨内 真尋
2/7

監禁クイズ

「ん?ここは……って何だこれ、手錠!?くそっ、動けない……!」


 目が覚めた時、俺はなぜか両手を手錠で拘束された状態でベッドに寝かされていた。手錠とベッドは鎖で繋がっており、ベッド周りしか行動できる範囲がない。

 と言うかそもそもこの部屋は何処なんだ?


「うっ、何だこれ。俺の写真が壁一面に貼ってある……」


 周囲を見渡した瞬間目に飛び込んできたのは、大量に貼られた俺の写真だった。壁という壁全てに隙間なく埋め尽くし、その上さらに天井にまで貼られている。

 狂気に満ちた部屋模様を前に、吐き気と鳥肌が止まらない。


「一体何がどうなってんだ……?」

『目が覚めたようですね、サトル君』

「っ!だ、誰だ!?」


 突然訳の分からない状況に放り込まれ困惑していると、いきなり謎の声が聞こえてきた。ボイチェンをしているらしく誰かは不明で、テーブルに置いてあるスピーカーから出ているようだ。


『私が誰か分かりませんか?』

「分かるわけ無いだろうが!声は機械音みたいに変えてるし、見たこともない部屋に縛られてるんだからよ」

『そうですか。じゃあ折角ですしクイズをしましょう』

「クイズ?」

『そうです。私が誰かを当てることが出来たら、サトル君の言うことを何でも聞きましょう。その代わり、もし外れたら一生ここで暮らしてもらいます』

「はぁ?」


 勝手に監禁しておいて、随分と自由なことを言ってるなこいつ。だが今の俺に断るという選択肢は無いのだろう。

 仕方ない、こうなったら犯人が誰なのかを当てて警察に突き出してやる。


「分かった。やるよクイズ」

『ふふっ、良い覚悟ですね。凛々しくてカッコイイです。サトル君の回答権は3回で、全部外したら私の勝ちということにしましょう。では早速スタートです』

「なっ、おいスタートって、ヒントとかはないのかよ!?」

『この部屋自体がヒントみたいなものですから、よく観察して考えて下さい」

「そういうことかよ……」


 ヒントは与えられるものではなく自分で探せとは、なんともセコいやり方だ。思わず舌打ちをしてしまった。だがチャンスは3回もあるんだ。慎重に考えれば不可能ではないはず。


「まず一番情報がありそうな写真を物色するか……うわ、これ正面から撮ってるのが1枚もないな。全部隠し撮りかよ。そんで部活動の写真が多いところをみるに、犯人は陸部の関係者か?」


 陸上部の活動シーンが多めなことから、犯人は部員の誰かじゃないかと当たりをつける。

 俺の家は裕福な家庭ではないから身代金などの線は無い。そうなると男子に俺自身を監禁するメリットは皆無だ。犯人は女子の中の誰かか。


「陸部の女子、そこから更に犯人を絞り込める情報は無いか……あ、あれは教室の風景?誰もいないから放課後だ。何か作業してるな、委員会か?」


 写真の中に何枚か、教室を背景にしているものがあった。教室に隠しカメラを設置しての撮影みたいだが、クラスにカメラを置ける人物などごく一部に限られる。

 犯人は俺のクラスメイトで陸部の女子だ。その中で俺と中が良く最も可能性の高い奴は……


「分かったぞ。犯人は、幼馴染のミハルだ!ミハルは面倒見が良くお節介焼きだから、それを拗らせてこんな真似したんだろ?」

『不正解でーす』

「ぐっ、違うのかよ……!」

『でも陸上部関連というのは良い線いってますね。ほら、後少しですよ?ファイトー』


 他人事のような声援が腹立たしい。バカにしやがってこのやろう。


「ふん、まあいいさ。陸部関連というヒントは得られたのだから」


 不正解だったがそれでもヒントは得られた。クラスで他の部員となると……いや待て、そもそもの話だが、監禁なんて誰も彼もが簡単に出来るものじゃないぞ。出来る可能性があるのは金持ちか、もしくは物件関連にコネクションのある奴だ。


「よし、今度は金かコネ関連で怪しい写真を探してみるか」


 そう的を絞って物色を再開した時、とある写真が目に入った。それは近所の公園で一休みしている俺の姿だ。

 あれは確か部活が休みの日、後輩に付き合わされて走っていた時のもののはず。練習しようと決めたのは誰もいない部室で二人きりだった時だから、あの場所を知っているのは後輩以外有り得ない。

 待てよ、そう言えばあいつの両親は不動産会社勤務とか言ってた気がするな。それも結構偉い立場だと言っていた。それなら監禁部屋を用意するのも容易いだろう……


「今度こそいける、2回目の回答だ。犯人は、後輩のカナだな!人をおちょくるのが好きなカナなら、冗談で監禁をすることもあるだろう」

『はい違いまーす』

「この、あっさり流しやがって……!」

『ほらほらどうしましたー?頑張らないとあと1回間違えたら、サトルは一生私のものになっちゃいますよー。キャー!た~の~し~み~!」

「があぁー!うるせえ!集中するから黙ってろ!」


 くそっ、もう後がない。絶対に次で正解させないと俺の一生はここで終わる。そうならないためにも全神経を研ぎ澄ませて考えるんだ。

 大丈夫、たとえ間違っていたとしても答えには一歩ずつ近づいているはず。後ひと押し、何か大きな発見があれば正解を導き出せる気がする。


「他に怪しい写真は……あれ?何であの辺だけ私服なんだ?それにあそこは、行きつけのスポーツ用品店か」


 ほとんどの写真が部活動中か学校生活の中でのものだというのに、一部私服の写真があるのはどう考えても不自然だ。

 それにあの店は俺が中学生の頃から通っている所だから、今の高校で知っているのはミハルだけのはず。でもあいつは犯人じゃないんだ。


「いや、ちょっと待て。確かつい最近、先輩にどこかおすすめの店はないかと聞かれてあそこを案内したんだった!」


 先輩が犯人と仮定すると全ての辻褄が合う。

 先輩は生徒会にも所属しているから、何かしら理由を付けて他クラスに入ることなど容易だ。

 それに後輩のカナとも一番仲が良いから、俺と自主練するという話を本人から聞いていても不思議じゃない。

 そして極めつけは、先輩の家が大金持ちということだ。家が裕福ならこんな無茶苦茶な環境を用意するなんて朝飯前だろう。


「全ての答えが分かった。犯人は、アキホ先輩だな!」

『……』


 犯人からの返答はない。これはもしかしなくても、アキホ先輩で確定ということか!?


「残念ながら不正解だよ、サトル」

「ひっ……!」


 突然耳元から声が聞こえて、心臓が止まるかと思った。

 その上回答も不正解だと……?いや、それよりも今の聞き覚えのある声、まさか犯人は……!


「フ、フユシマ先生!?」

「そう、正解は私だ。惜しかったが残念だったな」


 犯人は陸上部顧問のフユシマ先生だった。先生の背後にあるクローゼットの戸が少し開いているということは、ずっとそこに潜んでいやがったのか。


「勝負に勝てたのは嬉しいが、同時に少し残念でもあるよ。だって、サトルが考えている候補に私の存在が無かったのだからさ」

「なんで、先生が犯人なんだ……」

「サトルの推理は目を見張るモノがあったが、後少し発想が足りなかったな。部活動のは元より教室の撮影など教師なら容易く、自主練の情報も部室に盗聴器を仕掛けていたから簡単に入手出来た。アキホとのデートは直接話しているのを聞いたからな、当日後をつけさせてもらったまでさ。ちっ、私のサトルとデートをするとは、アキホは後で消しておくか」

「この、狂人が……!」


 怒涛の種明かしに頭の理解が追いつかない。だがそれでもそう言われてみれば、先生にも全ての条件が当てはまるのは事実だ。

 恐怖と拒絶反応で全身の寒気が止まらない。どうにかしてここから逃げないと……!


「おっとー、何処にも逃しはしないぞ。ふふ、そろそろ麻酔薬も効いてくる頃合いだな。さーて、ネタバラシも終わったことだし、これからは互いの愛を育むとしよう。二人っきりで、たっぷりと、永遠になぁ……」

「う、身体が、動かない。誰か、助け、あ、ああああぁぁぁぁぁ……!」

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