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時空の掌握者~クロノティウム・インぺリウム~  作者: 棚からぼたもち
第1章
9/22

第9話 馬鹿コンビ

ちょっと短いです。

 さて、ラピスの誘拐時間は俺が解決した訳なんだが・・・俺がそれをやったとは分かる訳ないにもかかわらず、この馬鹿・・・エリオム兄さんは何をやっているのだろうか。


「王族の面汚し!俺の邪魔をしやがったな!」


「いや、何のことですか?」


「とぼけるな!お前が邪魔をしたんだろう!」


「だから何の邪魔ですか?」


 ラピスに俺の理の印(ノーマ・シグナム)について説明をした次の日、エリオム兄さんは俺の部屋に突撃してきていた。

 ラピスがまだ来ていない時間だから、多少はよかったものの、もしもいたなら、話がもう少しこじれて、面倒なことになっていたことだろう。


「しらばっくれるな!」


「しらばっくれる以前に、何のことかすら分からないんですが?」


 いや、もちろん分かるけどな。

 ラピスの誘拐が失敗したことだろう。

 誰かに邪魔されたというのはどうせ捕まった奴に聞いたんだろうし、その時に邪魔した相手のことについても聞いているだろう。

 黒髪という情報を聞いて、勝手に俺だと思ったのだろう。

 まぁ、体の成長度合いが違うので、俺だと判明することはないが。


()()を任せた奴らがお前に邪魔をされたと言っていたんだ!」


「いったい、何の仕事ですか?そもそも、俺はこの部屋から出ないので、この部屋でする仕事以外の邪魔になるはずがないんですが?」


 こういうのはすっとぼけた方の勝ちだ。

 俺だとバレる要素はないのだから、堂々としておけばいい。


「仕事って言うのはなぁ!」


「殿下!落ち着いてください!」


「ええい!放せ!ディルク!」


 さすが、馬鹿兄さんだ。

 その仕事とやらの内容が犯罪であるにもかかわらず、堂々と言おうとするとは・・・。

 エリオム兄さんの専属執事であるディルクが止めなかったら、大声で喋ってしまっていただろう。


「王国の面汚しの相手を殿下がなさる必要はありません。ここは、私にお任せください。」


 やっぱり、エリオム兄さんの専属執事だけあって、エリオム兄さんと同じく、まともではない。

 継承権がないとはいえ、俺も王族には変わりないのだが、目の前で堂々と侮辱しやがった。


「ふむ・・・それもそうだな。分かった、ディルク。お前に任せよう。」


「ありがたきお言葉です。」


 馬鹿2人による茶番を見せられる俺の気持ちにもなって欲しい。

 あまりにも馬鹿馬鹿しすぎて、うっかりと本当のことを喋ってしまいそうだ。

 これが狙いなら、ある意味凄いが、絶対に狙ってやったことではない。


「さて、アーテル殿。」


 さっそくやらかしてるんだが?

 王族である俺は、王位継承権がなくとも、公爵家の当主と同等の立場にある。

 そんな俺に対して、様付けをしなくてもいいのは、他国の王族や重鎮、そして、この国の王族、つまり家族、あるいはこの国の公爵家の当主くらいだ。

 王族の専属とはいえ、たかが一介の執事がしていい呼び方ではない。


「昨日の夕方あたり、どこにいらっしゃいましたか?」


「どこって?この部屋だけど。そもそも、この部屋から出ることは基本的にないな。」


 そんなストレートに聞いて、普通に答えると思っているのだろうか、この馬鹿執事は。


「嘘をつくのはあまりよろしくないですよ?」


「いやいや、どこぞの兄さんが礼儀知らずにも顔を見せずに大声を届けてくれたからな。危険だと思って、部屋から出ないようにしてたんだ。」


 王族の言葉を嘘と断定するのもアウトだ。

 兄さんが俺の言葉を聞いて、睨んでくるが、そこは無視する。


「ちなみに、その時、俺の部屋に騎士がちょうど来ていたから、父上に報告が届いているかもな。」


「「えっ!?」」


 もちろん、嘘だが、この礼儀知らずの執事と兄さんが顔を青くしてうろたえるのを見て、少しスカッとした。

 俺が少し笑ったことで、ディルクはさすがに嘘だと気づいたのか、顔を真っ赤にして手を振り上げる。

 どうやら、俺を叩くつもりらしい。

 まぁ、無理だろうがな。


「このっ!?」


 俺を叩こうとしたディルクの手は掴まれて止まることとなる。


「誰・・・だ・・・」


「・・・ディルク、貴方は何をしようとしていましたか?」


 ディルクの手を掴んだのは、王城の執事のトップである執事長で、先代の王の頃から仕えているプロムスだった。

 非常にダンディな爺さんで、いきなりフッと現れて、仕事をして、フッと姿を消す神出鬼没な人だ。


「いえ、このことは後で聞くことに致します。エリオム殿下、アーテル様、陛下がお二方をお呼びです。」


 一応言っておくが、プロムスが俺に殿下を付けないのは決して、俺を軽んじているからではない。

 殿下は王位継承権持ちのみが付けられる敬称だからだ。

 他の国では、王位継承権を放棄したとしても、王族は殿下と付けられるみたいだが、グロリア王国では、王位継承権を完全に放棄した場合は、殿下という敬称は外されることとなり、様付けになるのだ。

 差別的なのではなく、必要な区別という訳だ。


「父上が?分かった、すぐに行こう。」


 エリオム兄さんは父上や母上には従順だ。

 この従順さを他のところでも発揮してほしいところだが・・・まぁ無理だろう。


「・・・。」


 それはともかく、このタイミングで父上の呼び出しというのが、どうにも嫌な予感しかしない。

 プロムスが背後から俺の事をじっと見ていることも、その予感を高める要因の1つだった。

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