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時空の掌握者~クロノティウム・インぺリウム~  作者: 棚からぼたもち
第1章
8/22

第8話 疑問と答え

すいません、遅れました。

「さて、アーテル様、昨日のことについてお聞かせ願えますか?」


 次の日となり、ラピスは俺の部屋に来てすぐ、そう言った。

 やっぱり、結構気になっていたらしい。

 ラピスはノックを忘れて、部屋へとそのまま入ってきた。

 俺が起きていたからよかったものの、起きていなかったらどうする気だったんだ。


「秘密ということじゃダメか?」


「ダメです。」


 取り付く島もない。

 話すのはもう覚悟を決めていたので、問題はないが・・・。


「じゃあ、朝食を食べた後にな。」


「えぇ、分かりました。逃げられると思わないでくださいね?」


「分かってるよ。」


 俺、そんなに信用ないか?


―――――――――――――――


 朝食を食べ終えて、俺とラピスは部屋へと戻った。


「では、アーテル様、昨日のことについて・・・」


「分かってるって。そんなに急かすなよ。」


 俺は持っていない()()理の印(ノーマ・シグナム)を第三段階まで覚醒させて、指をパチンッと鳴らした。

 指を鳴らしたのは演習というのもあるが、理の印(ノーマ・シグナム)を使って行う術、理術(ノーマ・アルス)を発動させるための補助的な役割、集中力を高めるためのルーティンみたいなものだ。


「今、何を?」


「結界を張っただけだ。他の人に聞かれると面倒だからな。」


「結界ですか?」


「まぁ、それに関しても今から分かる。」


 俺は布団に腰かける。

 ラピスは俺が言う前にちゃっかりと椅子に座っていた。


「さて、もう言わなくても分かるだろうけど、俺も理の印(ノーマ・シグナム)を持っている。」


「それは分かります。ですが、右手の甲にも、全身のどこにもないんですよね?それなら、何処に?」


「いや、右手の甲にあるんだ。」


「え?」


 ラピスはきょとんとした表情で首をかしげる。

 可愛いなぁ、おい。


「答えは単純、(シグナム)の色が透明なんだ。」


「・・・それは確かに見えるはずがありませんね。」


 盲点でした、とラピスは呟く。

 まぁ、普通は見えない色だとは思わないよな。


「で、俺の属性についてだが・・・俺も詳しくは分からん。多分、時間と空間が操作する力だとは思う。」


「時間の操作は分かりますが・・・空間の操作ですか?」


 ラピスはまた首をかしげる。

 どうやら、空間を操るっていう意味が分からないみたいだ。

 俺は前世の記憶のおかげで、空間を操るイメージはできたが、前世の記憶がなかったら、多分無理だったので、当たり前かもしれないが。


「う~ん、何て言えばいいのか・・・例えば、そうだな。この部屋の広さを広くしたり縮めたりできる。」


「それだと、部屋の壁とかが壊れてしまうのでは?」


「そうじゃなくて、何て言えばいいかな。外から見たらそのままだけど、中に入ってみると広くなってるみたいな感じ、分かるか?」


「あんまり分かりませんが・・・距離を広げたり縮めたりできるということですか?」


「うん、まぁそんな感じ。」


 悪いが、俺にはこの程度の説明しかできない。

 ラピスはまだ疑問があるみたいだが、また今度、実演してみせたら、多少は分かるだろう。

 なので、話を先に進める。


「時間の方は単純に時間を加速させたり、遅くしたりできるっていうだけだ。」


「それは想像がつきます。敵の子供2人が突然気絶したのは、時間を加速して何かしたということで合っているでしょうか?」


「それで合ってる。」


 ラピスは理解力が高いので、説明が楽でいい。

 一を聞いたら、十とまでは行かなくても、六か七くらいまでは理解してくれる。


「随分と驚異的な力ですね。」


「まぁな。さすがに第一段階の時は体内時計が正確で、周りの把握がしやすい程度でほとんど意味のない能力だったけどな。」


「そう言えば!アーテル様、どうやって覚醒の手段を知ったのですか?くそ殿下、いえ、もう、くそ野郎ですけど・・・それはともかく、まだ教わっていないはずですよね?」


「いやいや、くそ野郎って・・・いや、まぁ、確かに的を得てるかもしれないけどさ・・・」


 仮にも王族にそこまで言うか普通。

 いや、エリオム兄さんのせいで襲われたんだから、そう言うのも分からんでもないけどさ。


「で、どうやったんですか?」


「突然、(シグナム)の力の流れが見えるようになってな。それで、ちょうど、窓から外を見ていた時に、騎士の1人が覚醒していたところを見て、それを見様見真似でやってみたら、なんかできた。無茶苦茶痛かったけど。」


「なんかできたって・・・」


 そんな簡単にできるものじゃないんですが、と呆れた様子でラピスは俺を見る。

 いや、仕方ないだろ。

 できたもんはできたんだから。


「でも、その流れでさ、第三段階まで覚醒したら、ひどい目にあったよ。」


「っ!?まさか、第一段階から第二段階の覚醒方法で第三段階に覚醒したんですか!?」


「いや、そういうもんだと思ってたから、やってみたら、腕がズタボロになってな。」


 そう言うと、ラピスは俺のことを睨んだ。

 ちょっと怖いけど、心配してくれているのが分かるので、少しこそばゆい。


「もしかして・・・布団のシーツに血がしみ込んでいたのは・・・。」


「そう、鼻血じゃなくて、その時の血だったんだ。不幸中の幸いだが、痛みに耐えて、無理矢理やったら、第三段階まで覚醒できたんだけどな。」


「なんて無茶を・・・」


 ラピスの顔から血が引いて、青白くなっている。

 ラピスがここまで顔色を変えているのだ。

 よっぽど、危険な行為なのがよく分かる。

 俺はそこまで危険なことだとは思っていなかったので言ってしまったが、このことを教えるんじゃなかったと少し後悔した。


「・・・ですが、あの時、腕が負傷しているような感じではなかったはずです。」


「あぁ、第三段階まで覚醒したから、俺の腕の時間を戻して、怪我をする前に戻した。


「やっぱり無茶苦茶な力ですね。」


「自分でもそう思う。」


 いや、本当に。

 時間と空間を操るとか、神の力と言っても過言じゃないくらい。

 第三段階で数キロ単位での転移もできるし、数秒とは言え、世界の時間を止めることすらできる。

 世界の時間を止めるのは、かなり疲労するが、2回くらいならできるだろう。

 第三段階でこれなのだから、第五段階ならどうなるのか、非常に楽しみだ。


「ですが、それができたのなら、シーツについた血のシミも消すことができたのでは?」


「いや、それがな、あの時は覚醒したばっかりで、力の制御がうまくいかなくな。自分の体にはできたけど、それ以外にはできなかった。今はもちろんできるけどな。」


 う~ん、とラピスは頬に手を添えて、何か悩みだした。

 見た目が非常に整っているので、とても様になっている。


「そうですね・・・アーテル様、この話は国王皇后両陛下にお教えしましょう。」


「いや、人の話聞いてたか?いくら、父上でも教える気はない。」


「ですが・・・」


「考えてもみろ。()()父上にこの話を教えて、誰にも喋らないと思うか?」


「・・・無理ですね。」


 想像できたらしく、ラピスは頭を抱えて、ため息をついた。

 国王のことを考えて、とるような態度じゃないな。


「それにラピス、お前も隠してることあるだろ。その理の印(ノーマ・シグナム)について。」


「っ!」


 バッとラピスは慌てて、(シグナム)がある右手の甲を隠した。

 だが、そもそも俺は今まで何度もラピスの(シグナム)を見ているので、隠しても意味がない。


「悪いけど・・・ラピス、お前がこの件について誰かに言うようなら、お前の(シグナム)についても広めさせてもらうぞ。」


「わ、分かりました!ですから、それだけは・・どうか、お許しください・・・」


 ラピスは頭を下げる。

 よく見ると、ラピスは震えている。

 何か触れてはいけない話題だったのかもしれない。


「わ、悪かった。そこまでのことだとは思ってなかったんだ。誰にも言わないから、安心してくれ。」


「いえ・・・これに関しては私の心が弱いだけですから・・・」


 ラピスは泣きそうな、それにどこか消えてしまいそうな儚い雰囲気でうっすらとほほ笑んだ。

 その笑みを見て、ズキッと俺の胸が痛んだ。

 そんな気がした。


「・・・とにかく、俺のこの件に関しては誰にも言わないこと。」


「はい、分かりました。私とアーテル様の禁断の秘密ですね。」


「いや、言い方な?あれ?さっきのラピスはなんだったの?」


 さっきの儚げなラピスはどこに行ってしまったのか。

 いつものふてぶてしいラピスが戻ってしまっている。

 いや、そっちの方が接しやすくていいんだけどさ。


「何のことでしょうか?身に覚えがありませんね。」


「忘れるのが早いな。鳥頭かよ。」


「いえ、これでも記憶力には自信がある方ですので。」


「それ、本当か?」


 その言葉を最後に俺とラピスは顔を見合わせて、プッと噴き出して笑いだす。

 笑い終えた後は、ラピスが俺の部屋で仕事をさぼって、俺は布団でゴロゴロしたり、椅子に座ってゆったりする。

 そんないつも通りの一日だった。

日常って大事ですよね。

ですが、まだ騒動は終わりませんよ。

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