第10話 呼び出し
また短いです。
ちょっと忙しくて・・・。
プロムスに案内されたのは、家族で過ごすような部屋でも、食事の場でもなく、謁見の間だった。
これだけでも、嫌な予感が倍増しているのだが。
それに加えて、近衛騎士団の副団長であるガルトナーが傍に待機しているというのも、不安を煽る要素だった。
今から話すのは、プロムスと父上と母上とガルトナーを除けば、謁見の間には誰もいないので、内々で済ます重要案件、おそらく、エリオム兄さんが犯罪組織の方にコンタクトをとったことだろう。
それだけだと思いたい。
「さて、アーテル、エリオム。急に呼び出して悪いな。」
「いえ。」
「いいえ、父上。いくらでもお呼びください。」
本当に気味の悪いレベルでエリオム兄さんが従順だが、父上や母上の前ではこれが普通なのである。
ちなみにレイ兄さんの時は、敵視しているのか、露骨に睨んでいることの方が多い。
「さて、エリオム。まずはお前に話がある。」
「はい。父上。」
「エリオム・・・やりすぎだ。犯罪組織の方に直接コンタクトをとったな。」
冷たい視線がエリオム兄さんを貫く。
あの傲慢なエリオム兄さんがびくびくおどおどしていた。
「い、いえ、それは・・・」
「分からないとでも思っていたのか?それとも、許されるとでも?」
「・・・。」
エリオム兄さんが言い訳をしようとした瞬間、父上が追い打ちをかける。
さすがのエリオム兄さんもだんまりだ。
「今までも目に余った行為はあったが、自ら気づき、反省してくれると思い、見逃していた。だが・・・今回の件は見逃すレベルをはるかに越えている。第二王子エリオム・グロリア。グロリア王国国王レイガル・ド・グロリアの名において、お前の王位継承権を取り上げることを宣言しよう。余程の功績がない限り、お前に継承権が戻ることはないと思え。」
「そ、そんな!父上!待ってください!」
エリオム兄さんは父上が言ったことを信じられないのか、父上に向かって歩き出そうとする。
「ガルトナー、つまみ出せ。」
「はっ!」
ガルトナーはひょいっとまるで猫のようにエリオム兄さんの襟首をつかみ、持ち上げる。
「お、おい!ガルトナー、放せ!僕を誰だと思っているんだ!」
エリオム兄さんはバタバタと暴れて抵抗しているが、筋肉むきむきのガルトナー相手では、何の意味もない。
最終的にはポイッと謁見の間から放り出されて、謁見の間の外で待機していた騎士に連れていかれていた。
さて、問題はこれからだ。
ここに呼んだ理由が、父上が俺を心配して、ということなら問題ないが・・・どうもそういう雰囲気ではなさそうだ。
「さて・・・次はアーテル、お前にだ。」
「なんでしょうか。父上。」
いつもなら砕けた口調を望む父上だが、今は違う。
父としてではなく、王として、俺に対応していた。
「これだ。」
父上がガルトナーに視線をやると、ガルトナーはポイッと何かを投げ、俺の目の前にパサッと落ちた。
それはメイドが頭につけているカチューシャやヘッドドレスのようなもの、いわゆるホワイトブリムだった。
ただ、普通の物ではなく、血がついたものだった。
「これは・・・?」
俺は自分の予想が正しくないことを望んだ。
どの想定も否定したかったが、今落ちているものがその想定を裏付けていた。
遊びならいい、からかいなら、別にいい。
だが、これはそうではない。
「珍しく、察しが悪いな。誰の血か、分からないのか?」
「・・・父上、これは何の冗談ですか?」
この問いかけで分かった、いや、分かってしまった。
今日、ラピスが俺の部屋に来るのが遅れていたのは、たまたまでも、エリオム兄さんが来ていることを察知したからでもない。
「ガルトナー、連れてこい。」
ガルトナーが王座の横にある謁見の間から見えない通路からナニカを引きずってくる。
それは血だらけになっているラピスだった。




