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一同がグラウンドで見た、とんでもない光景。それは一体何?

久しぶりに来たお題『野球部でレギュラーになれない、その理由は何?』で大喜利を行う一同。

のんびりと回答を続ける大喜利部だったが、小手毬先輩の一声でグラウンドに繰り出すことになる。

出題者がいると思われる野球部に出向き、お題の出題者を探しに行くのであった。


グラウンドに到着した大喜利部一行。

既に日は傾き始めており、夕焼けが見える。下校時刻になってしまう前に、早めに出題者を見つけ出す必要がありそうだ。


軽い気持ちで外に出てきてしまったが、この学校のグラウンドはかなり広い。野球場までの距離を歩くというだけで、かなり憂鬱な気分だ。

というわけでやる気の低い自分が後ろに、女性陣3人が前に、という布陣になっている。


割と強い向かい風が吹いており、自分の足取りの重さを表しているかのようだ。

そうしてのんびり歩いていると、風に乗って3人の会話が聞こえてきた。


「せ、先輩。野球場までだいぶ遠くないですか?」


「『大仏、置くな』ですね。」


「ああ、そうだな。野球場までは多少の距離がある。」


「『詐称の、プリ』ですね。大仏が、プリ。」


「だが大したことはない。野球部員は毎日往復しているのだしな。」


「で、ですね。ガンガン行きましょー!」


「いのちだいじに~」


「い、いのち?もしかしてグラウンドには、危険なトラップが……?」


「ですです。そこら中にモンスターと、落とし穴がたくさん。」


「え、ええ……!こ、小手毬先輩、気を付けて歩かないと危ないですよ……!」


「ふむ。落とし穴があるとしても、我々のみが落ちる穴を作成するのは現実的ではない。安全と考えてよいだろう。」


「で、でも……」


「心配であれば、誰かの歩いた跡を歩くのを勧める。ノナの後ろをついていけばよい。」


「いや、落とし穴というのはただの冗談で……」


「はい!ノナさん、よろしくお願いします!」


「まあいいですけど……。」


「私はその後ろを歩こう。これなら後ろから襲われる心配もない。」


3人の会話は大抵こんな感じだ。

当然落とし穴も、モンスターもいるわけがないんだが、そういうことにはならないらしい。


結局、ノナの後ろをラン、その後ろを先輩が歩く形になったようだ。ちょうど身長順になっているから、三姉妹のように見えてほほえましい。

わざわざ4人が縦に並んで歩いていると、それこそ某RPGのような陣形である。先輩が勇者の枠になることはおよそ間違いないだろうな。


そんなこんなで長い道のりを歩いて、ようやく野球部の練習場所までたどり着いた。

が、当然野球部は練習中。誰が出題者なのかわかるはずもなく。

というかそもそも、出題者がこの中にいるのかもわからない。


「先輩、ここからどうやって出題者を探すんです?」


「さあ、わからないな。」


「ええ……もしかして何も考えてないんですか?」


「というわけでユキ、頑張って探してくれ。」


「相変わらず無茶ばかりですね……。」


何の手掛かりもない以上、探しようがないというのが正直なところだ。

ここで諦めて帰ってしまってもよいとは思うのだが、そんなことをすれば先輩に何を言われるかわからない。

仕方がないので、顧問の先生に頼んで部員を集めてもらった。


練習を止めてしまって申し訳ない気持ちになりながらも、あとは小手毬先輩に任せよう……と思っていたのだが。

先輩の視線を見るに、ここは自分が話すことになっているらしい。


経緯を説明しようにも伝えようがないので、ありのままの真実だけを伝えることにする。


「大喜利部のお題箱にお題を入れた方を探しておりまして、もし心当たりのある方がいれば……」


何の話だ?とざわめく野球部。そりゃそうだ。

急に部活を訪れた4人組は、野球部からすればイレギュラーにもほどがある。

そもそも大喜利部の存在すら認知されていないと考えるのが自然だ。


もちろん野球部以外が出題者の可能性もあるし、出題者がいても出てこない可能性もある。

期待せずに反応を待っていると、集団の後ろの方から声があがった。


「あ、たぶんそれ俺です。あの3階にあるお題箱ですよね?」


「ああそうだ。君、すまないが少し時間をくれ。じゃあ、他の者は戻っていいぞ。」


小手毬先輩、3年生もいるはずなのに、その言葉遣いのままで大丈夫なのだろうか……?

そんな自分の疑問とは裏腹に、お題を入れたという1人以外は、何事もなかったかのように戻っていった。

まあ、部活帰りに話のネタにでもしてくれればいいか。


「で、お題を入れたというのは君で間違いないかね?」


「そうっすね。……俺のお題、なんかまずかったっすか?」


お題を入れたという彼は、訝しげな表情をしている。

彼からすればただお題を入れただけなのだろうし、当然の反応である。


「いや、そういうわけじゃないんですけど……」


やはり何と説明すればいいか困ったものだ。もしかして困っているんですか?とは聞きにくいし。

そもそもこの人のことを何も把握していない。


「あ、あの。ちなみにお名前と学年は……?」


こういうとき、ランは比較的常識人だから助かる。


「1年の田中と言います。」


同級生だったので、肩の荷が1つ降りた。内心ひやひやしていたが、上の先輩に無礼なことをせずに済んでよかった。

ちなみに自分と同じ学年ではあれど、当然見覚えはない。例のごとく、同じクラスではないと思うんだが。


「へえー。田中ということはもちろん、下の名前は太郎?」


……こういうとき、ノナは全く非常識だから困る。


「えっ、違いますけど……」


「なるほど。小手毬先輩、彼は太郎というらしいですよ。」


「ふむ。本当の名前はまあいい。君は太郎ということにしておこう。」


残念ながら、大喜利部での君の名前は太郎に決定してしまった。この部活において先輩の命名は絶対である。

もしかすると匿名のままにしたのは、先輩なりの優しさなのかもしれない。


「で、太郎とやら。君が『野球部でレギュラーになれない、その理由は何?』というお題を入れた、ということで間違いないな?」


「はい、そうっすね。」


「さて。単刀直入に言うと、我々は君が助けを求めているのではないかと思ってここに来た。」


普通は聞きにくい一言を直球で投げつける、先輩らしいピッチングが炸裂した。

明らかに太郎は困惑しているが、先輩は全く動じていない。


「助け、っすか……?」


「ああ。お題を見て、君が『レギュラーになれない』という悩みを抱えているのではないのかと考えている。」


「そ、そうです。何か野球部で困っていることとか、ありませんか?」


「えーと……。」


太郎は何か考えている様子だ。ちょうど質問をしたランから少し目線を逸らしている。

もしかして、本当に悩みを抱えているのだろうか?


「うーん、特にないっすね……。」


「って、ないんかーい」


……こういうとき、ノナの口は物理的に閉じておいたほうがいいかもしれない。

まあ、実は自分も同じことを思ったのは、心の中だけに留めておこう。


「ふむ。では、なぜあのお題を入れたのかね?」


「いや、部活に入部したばかりで、レギュラー遠いなあと思いまして。そのときちょうどお題箱があったんで、つい。」


「それは悩みではないのか?」


「1年はよほどのことがないとレギュラーになれないんで、みんなそんなもんじゃないっすかね。」


「そのシステムに不満は?」


「実際実力も足りてないんで、特に悩んでるとかではないっすよ。」


「それ以外に困っていることなどもないのかね。」


「ないっすね。」


「本当に何もないか?」


「は、はい……。」


「そうか、それなら良かった。では、レギュラー目指して練習に励みたまえ。」


「はい。ありがとうございます。」


というわけで、わざわざ出向いたにも関わらず、特に何か起きることはなく。太郎はそのまま練習へと戻っていった。

途中から先輩が、おせっかいな親戚のおばちゃんか何かに見えなくもなかったが、それはよしとしよう。


「さて、帰りましょうか。」


「そ、そうですね。何もなくてよかったです!」


「『ナニ・モナーク』、ちょっとかっこいいですね。」


「そうだな。何事もないのが一番だ。」


練習場から校舎までの帰り道。

先輩の表情は変わらないが、心なしか足取りが浮かれていたのは、おそらく見間違えではなかったと思う。


と、この件については何事もなく幕を閉じた。


「次の日の部活があんなことになるとは、このときには思ってもいなかったのだ。」


「え」

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