表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
三人の転生者《イレギュラーズ》 ~神様チートはないけれど、仲間と一緒にやっていく~  作者: 凡鳥工房
第5章 三人の転生者《イレギュラーズ》、羽ばたく

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

61/78

5-09.魔術師学園(仮)

 試練の迷宮にて恩恵ギフトを得た俺たちは、伯都ツェルマットに戻った。


 休暇兼恩恵(ギフト)の検証、習熟はもちろんとして、ちかいうちに我が師父ネイトナル様からのご依頼があることが内示されていたこと。

 また、過去一年で蓄積した旅の所見をフィードバックし、道具の改良や所持品の見直しなども実行中であったためである。


 それぞれに手分けして買出しだのパーティ・ホームの掃除だののなか、俺はミナヅキ、ハヅキと連れ立って魔導技師のメセドリウスさんを訪ねた。

 でかいところだと馬車の改造、こまいところだと魔道具【リターン・アンカー】の改良をお願いしていた結果あるいは進捗の確認だ。


「こんにちはー、どうっすかあ」

「来たか」


 メセドリウスさんは、不愛想であった。


「おまえの作った光玉の魔導回路付きの、呪符スロット付きの杖、制式採用予定だってな。俺は聞いてなかったぞ」

「え?」

「え?」


 互いに間抜け面をさらしていたら、ミナヅキとハヅキからつつかれた。

 気を取り直してどういうことかと尋ねれば、メセドリウスさんも怒気の抜けた顔でこれこれこういう話だと。


 つまり、我が師父が任されている、魔法使い候補の育成プロジェクトにおいて、俺の杖を採用するとかどうとか。

 魔力を自分の体外に出すという第二関門をクリアした者、つまり呪符使いにはなれる者には、俺の呪符スロット付きの杖を支給する云々。


「聞いてないよー」

「そ、そうか」


 ダチョウ的な芸人風のリアクションを決めた俺に、メセドリウスさんはやや腰が引け気味であった。


「というか、売れるなら別にいいのでは?」

「気楽に言ってくれるがな、俺は魔導技師で杖屋じゃねーんだよ」

「杖屋に仕事……流すわけにもいかないか。一応は魔道具組み込みだしなあ」

「一応言うな、クソッ。急ぎで教師分と予備が欲しいって、面倒くさい仕事だったんだぞ」

「それこそ師父に言ってくれよぉ」


 前年度、俺たちも動員された魔法使い候補の発掘事業では、各所への割り振り前の段階で、ツェルマット領で四十数人、ヤマトゥーン領から三十人弱の子どもたちが確保された。


 ツェルマット領で確保された子の中から教会の養成院で確保する人員が差し引かれ、ヤマトゥーン領からの子は別枠で一般解放された法術師コースへ。

 これは将来的な所属の問題なので明確に区分けがある。

 そして、魔術師組合の登録魔術師の弟子云々についてはすったもんだがあったものの、個々人で弟子を引き取るのではなく、我が師父ネイトナル様の教育事業に合流。


 ツェルマット伯爵様にしてみれば、自領で四十人もの候補人材を発掘できるとは思っておらず、養成院側で引き取った分を抜いても、当初予定していたニートナル屋敷ではキャパが足りない。

 さらに人材発掘を毎年続けるとなると、数百人規模の施設や相応の教師陣が必要となることは自明となり、登録魔術師の動員を決定。

 ここに一大学園構想が持ち上がり、育成プロジェクト筆頭である師父ネイトナル様の下にツェルマット魔術師組合も結集、ということになった。


 ゆえに、我が師父はあちこち駆け回るハメになっている。


「何度聞いても泥縄やなあ」

「そりゃおめえ、まさか数十人も、魔法使い候補が見つかるなんて思っちゃいなかっただろうよ」

「養成院でも、法術師コースに入るのは年に数人でしたからねえ」


 逆に言えば、教会管轄下だけでも運任せで年に数人の魔法使い候補が出ていたわけだ。

 領内めぐってハンド・トゥー・ハンドでの魔力通しで一次選別をかけるだけでも、数倍数十倍は予見できていたはず……


「ああそっか、当初は人材発掘も込みで師父の事業だったのが、教会噛んだところから狂ったのか」

「教会が絡む前は、ウヅキが旅の途中で『ついでに探す』予定でしたからねえ」


 組織が噛むと影響範囲もでっかくなっちゃうよね。

 だから俺はわるくねぇ。


 現在、ツェルマット市街を囲う壁外に新たな一画を整地。

 急いで宿舎を立てて、集めた子どもたちを城内から移しているところ。

 夏までには仮称・ニートナル魔術師学園が開校できる、はずである。


 カリキュラムは俺による弟弟子たちの育成プランが土台となる。

 いわば、ヤクートとレオーネは、ガキどもの大先輩様だ。

 読み書き計算からの基礎教育とは別で、錬気瞑想と魔石チャージという魔力量の増大と制御力向上の基礎修練を課す。

 一~二年程度で『才能』が発芽するかどうかの目途がつくだろう。


 たとえ魔法使いとして芽吹かなかったとしても、読み書き計算仕込んだ貴重な人材となるので、伯爵家も男爵家も、そして教会も、卒園生を囲い込むことに異論はない。

 七十人中の数人が魔法使いになればそれで十分に元が取れる。

 高度人材の教育事業ってそういうもんだよね。


「まあ、そっちは師父の話だし、俺の頼んでたモンはどうなってる?」

「馬車はできてる。見て問題なければとっとと引き取ってくれ」


 馬車には、臼ひきのときにも使ったモーターがわりの魔道具を車軸に組み込んだ。

 いうなればモーター・アシスト付きの荷馬車だ。御者台のスイッチでアシストのオン・オフだけの簡単仕様。

 冬の最中を共に過ごしたお馬さんのためにも、ぜひ取り付けようということで改造を頼んだ。

 魔石チャージは自前でできるので、空荷なら自走できるだけのパワーを求めてみたが、メセドリウスさんは口の端をゆがませた。


「二セットを水平対向で組付けた。出力バランスの調整には苦労したぜ」

「さすメセ!」

「誉め言葉かよ、それ!」


 サスペンションはねえ、簡単な板バネはあるにはあるんだけど、馬車につけてもないよりマシ程度の効果しか得られないのがわかってる。

 荷馬車じゃなくて、人用の箱馬車、それも伯爵家仕様のモンに乗った経験から、本当にないよりマシ程度。

 重量が大幅に増加することも見逃せないし、そこに大金突っ込むなら、クッション揃えようぜで話は終わった。


「ほな様子見て、問題なければ馬さん連れてきますわ」

「よろしくー」


 馬車はハヅキに任せ、俺はメセドリウスさんとの距離を詰めた。


「リターン・アンカーの件は?」

「仕事として、今の俺にできる限界までは小さく細かく刻んだが、俺も歳だ。目が悪くなってきている」


 リターン・アンカーは、魔力線マジック・ラインを結ぶだけの魔道具だ。

 魔道具とは、魔導刻印と導線からなる魔導回路によって消費魔力が変わる。


 単純に、魔導刻印が大きくなればなるほど消費は増え、導線が太くなればなるほどより多くの魔力を流しロスも生じる。

 【魔法の矢】の呪符のように、発現する威力と消費のバランス的にこのあたりという経験上の最適解を持つものもあれば、魔導刻印の大きさ、つまりは消費量が機能に影響しないようなものもある。


 リターン・アンカーの場合は後者。

 座標指定のための目印という使い道では、魔力線マジック・ラインは繋がってさえいればよく、線の太さが精度や情報量に影響したことはない。

 であれば、魔導回路を極限まで微細化できれば、消費魔力も減るというものである。

 ついでに回路に使用する銀の量も減ってお財布へのダメージも減るというものである。


 メリットしかない。

 ならやるしかない。

 メセドリウスさんが。


「これ以上となると、若いヤツを鍛えるか、それこそドワーフの細工師でも探すべきだろうよ」

「メセドリウスさんの最善なら、文句はないんだが」


 俺は呪符にちっこく彫りこまれた刻印を確認した。

 髪の毛ほどとは言わないが、ひっかいただけで切れそうな細い線で回路が構成されている。


「若いのでもドワーフでも、あてはある?」

「ねえな」

「そっかあ」


 探すにも、見たことないんだよなあドワーフ。

 エルフは王都で見かけた。特に用はなかったのでスルーしたけど。


 ともあれ用事は済んだのでパーティ・ホームへ戻る。

 続く数日を、金勘定や物資の仕入れ、女子組の強い強い主張により家財道具の調達などに費やし、なかなか落ち着けないなと野郎組でしみじみと語りあかす。

 師父の呼び出しを受けた俺は、ニートナル屋敷の書斎にお伺いした。


「待たせてしまったか?」

「いえ、俺のほうでも準備などありましたので」

「そうか」


 師父こそお疲れかと思いきや、意外に元気であらせられた。

 渋い声にもハリとツヤが感じられる。


「ん? 子どもたちがな、せんせーせんせーとうるさいんだ」

「それはそれは」


 我が師父は偉大なる教師であらせられるからな。

 子どもたちにもそれがわかるのだろう。なかなか見どころの有る連中だ。

 杖の件は驚きましたよー、おおすまないなどと前座を済ませ、本題。


「おまえにも残ってほしいが、いまさらではある。これを頼む」

「イエス、マスター」


 俺は、師父から王都の弟君へ向けたお手紙を受け取った。

 先の大旦那様死去のおりにも連絡に行ったが、今回はさらに責任重大だ。

 師父はツェルマット伯爵家およびヤマトゥーン男爵家肝入りの教育事業に力を注ぐため、弟君への家督継承を早め、錬金術師としての地位を工房ごと譲ることを決断なされた。

 なんなら、YOUも学園の教師になれよ。手がたんねぇんだYO!的な内容が記されているそうだ。


「王都か。行くのは初めてだよ」

「でけー街ではあるな、川(みなと)も抱えた要衝でもある」


 ツェルマットは王国版図のほぼほぼ北の端にあり、王都まで単純に一か月以上かかる。

 事実上の諸侯独立国の連合体であるのにかかわらず、それだけの広大な面積を一つの国としてまとめるだけの力と権威を持つのだから、凄いのだろう。

 俺的には物価が高いのと、人ごみが苦手なのであまり感慨はない。


 今回の旅も、ミナヅキとハイラルの二人の助祭様の巡礼行という外観を装う。

 ただし、リターン・アンカーでのツェルマット拠点との接続を維持することは諦め、逐次の基点付け替えで数日分の戻りはできる状態を維持するにとどめた。

 メセドリウスさん入魂の微細化した改良型でも、基点からの距離に応じて消費魔力が増えていくし、そもそも俺たちの転移門トランスファー・ゲートで転移できる距離は数日分でしかない。


「それにつけても治安の悪さよ」

「聖職者様の巡礼行って、関所にはそれなりに効いたんやけどなあ」


 何を言いたいかというと、あれですよ。

 俺たちの前と後ろに、盗賊さんの集団がニヤニヤ顔をさらしているのですよ。


 参ったねえ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ