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三人の転生者《イレギュラーズ》 ~神様チートはないけれど、仲間と一緒にやっていく~  作者: 凡鳥工房
第5章 三人の転生者《イレギュラーズ》、羽ばたく

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5-07.そういえば巡礼行なんだよね

 神々からの恩恵ギフトを得るべく試練の迷宮に挑戦中の俺たちは、実力チェックを兼ねた本気アタックを終え、休暇を取っていた。


 試練の迷宮があるのはノルトラムの街。パーティ・ホームがあるのは伯都ツェルマット。まともに歩けば片道三日、途中の市城門だ関所だと面倒くさい。

 俺たち三人の、魔道具リターン・アンカーを併用した転移門トランスファー・ゲートが届く距離なので、ついつい便利使いしてしまう。

 そのせいで弟弟子たちには本当に遍歴修行に出たのかと疑われる始末だ。


 ともあれ、休暇でツェルマットにいた俺は、師父ネイトナル様から呼び出された。


「魔法使いの発掘に関する件、伯爵家での方針が固まった」

「思ったより、時間がかかりましたね」


 魔法使い候補となる人材の発掘および教育事業は、師父と俺の連名で魔術師組合に発表したレポートが発端となっている。

 伯爵様の肝いりで師父に事業実行の命が下り、師父から俺に遍歴修行の旅の中でスカウトが依頼されていた。


 しかし、いざ頼まれていた人材発掘を試みたところ問題が発生。

 ハンド・トゥー・ハンドで魔力通しに成功した、つまり自分の中の魔力を認識することができた子を引き取るに際し、親や村が高値を要求してきたのだ。


 一応、親や村の立場は理解はできる。

 子は商品だからな。

 魔法使いになれる……かもしれない子、ならば高値を付けるのも当然。


 ところで、魔法使い候補を育てるのも雇用という形で囲い込むのも伯爵家の都合である。

 発掘した人材を買うなら買うでいいけど、我が師父の下で生活を保証し高等教育を施す事も含め、伯爵様への費用請求はどこまで許容してもらえるのか。

 さらに、余所の領地から引き抜くのは問題になりますよねと。


 師父を通して伯爵様に判断を求めていたのだが、秋も近い今になってようやく方針が固まった。


「各所との調整を踏まえると、早い方らしいぞ」

「政治って、面倒ですねえ」


 ツェルマット領内においては、魔術師組合および教会が主体となり、領内をめぐって魔法使い候補を探すという。

 各魔術師にとっては我が弟子探し、教会にとっても自前の法術師候補の確保という思惑があるのだろう。

 そのあたりの調整や人数枠を決めるのに駆け引きがどうこうと……。


 ともかく、魔力通しに成功した子については一度全員を伯爵家で召し上げ、親や村に支度金名目でいくばくかの金銭を支給。

 のちに各魔術師、教会、そして我が師父の下へと割り振るのだとか。

 領民はご領主様の私物だからね、それで問題ない。


「候補人材の発掘については、師父から手離れしたということですね」

「それが、他領については、発覚しないように引き抜きを行うべしとの意向が示されている」

「それ、絶対にばれて、現場の責任で俺が処断されるヤツじゃないですかー」

「いなくなっても問題のない者に的を絞るしかないだろうな」

「とほほ……」


 師父のお立場もわかる。

 やらなくていいとは言えないのだよね。

 それに、身寄りのないガキというのはどこにでもいる。

 荷物持ちに雇った子に、たまたま魔法使いの才能があってもおかしくない。かもしれない。


「あまり、期待してないでください」

「ああ、無理をする必要はない。おまえはニートナルであって、伯爵様の臣下ではないからな」


 師父の弟子、ニートナルの名を頂いた一門衆ではあるんですけどね。

 主の主は主ではない。ま、そういうことで。


「また、ツェルマット伯爵家とヤマトゥーン男爵家はその永年の友誼を確認し、相互的交流事業を拡大することを決定した」

「ヤマトゥーン家も噛んだってことですか」


『鶴松の伯父貴オジキ、例のシノギ、俺んとこも混ぜてくださいよ』

『山ちゃんには世話になっとるけんのぅ。しゃあない、座布団わけちゃる』


 ……任侠映画風のワンシーンが脳裏に浮かんでしまったが、あながち間違ってもいない気がする。

 中世貴族なんてヤクザな商売だかんねえ。


「ヤマトゥーン領内での人材発掘、ともかくその雛型だけでもやってくれとのことなのだ」

「請けざるをえませんが、パーティのみなに報告をするので、数日ください」

「試練の迷宮に挑んでいたのだったな。横槍となってしまったことを詫びる」

「いえ、師父の責任では……」


 ハイラルの実家ヤマトゥーン家に関しては、魔法使い候補の発掘プロジェクトについてポロっちゃった俺の自業自得でもある。

 ただなあ、さあこれからだって時に、しばらく俺だけ抜けますってのもなあ。

 気が重いぜ。


 ノルトラムの街からハヅキたちも回収、パーティ・ホームの会議室で事情を説明したところ、ハイラルが見事な土下座を決めた。


「当家の都合にウヅキを巻き込んでしまい、まことに申し訳ない」


 魔法使いは数が少ない。

 魔術師ならばファイヤー・ボールを使えれば戦術兵器にはなれるし、法術師ならば治癒術はまさしく奇跡の技と言えよう。

 世間の期待と実態との間にズレがあるような気もするが、おおむねそういう認識である。

 あのヒル子でさえ、先生とか様付けで呼ばれるんだぞ。


 その魔法使いを、幼少期から発掘し育て囲い込む。

 話半分どころか十人に一人の成功例がでるなら、運任せよりはるかにマシだ。


 領地領民を抱える貴族として、ヤマトゥーン家当主のオブムス様たちが当プロジェクトを見過ごせないのはわかる。

 よくツェルマット伯爵家を説得できたものだ。

 謀略とか陰謀とかは絶対に不向きな印象なんだが、脳筋には脳筋の、体育会系的な交渉術でもあるんだろうか。


 試練の迷宮チャレンジを中断してのヤマトゥーン領内での人材発掘について、ハイラルが自分の家の問題なのでと、俺とともに離脱を表明。

 おいていかれても困るとヒル子とミルディーフが言い出し、じゃあ二チームで、人材発掘と迷宮チャレンジに分かれるかとなって、ミナヅキがぼそっと呟いた。


「そういえば巡礼行なんだよね」

「そやけど、恩恵ギフトはどないするねん?」

「迷宮アタック、四人だと余裕がなくなってしまうのが怖いですね」

「それはある」


 いくつかの条件を整理し、まず俺とハイラルとスコールの兄貴だけで領都ヤマトゥーンへ。

 当主オブムス様と、大分体力も戻ったという騎士隊長ウイフェン様と会談。アイクリス様は相変わらず領内を駆け回っているそうだ。


「魔法使いは才能であっても、恩恵ギフトは運。そっちにも損はないでしょう」

「確かに承知した。兵や、収穫が終わった後には小作などからも選抜し試練の迷宮に送ることを約束する」


 俺たちが人材発掘に協力する報酬条件の一つとして、そっちで聖石集めといてという話である。

 ついでに、隊長級以外にも恩恵ギフトを得させることは、ヤマトゥーン家にとっても有益でしょうと。


 報酬のほかにも領内行動中の護衛の派遣や関等の通行許可など諸条件を詰めた俺たちは、二手に分かれてヤマトゥーン領内をローラーすることにした。

 片方は領主家のハイラルを立て、もう片方に同輩の助祭捕ミナヅキを立てる。

 これは、おおっぴらに魔法使い候補の発掘とは言えないので、七歳児に祝福を行う巡礼中の助祭捕という名目にしたことによる。


 俺たちにとってはすっかり過去の話だし七歳になる前に売られたしで実感がないが、今生において七歳というのは特別な歳である。

 死亡率のバスタブカーブが落ち着く、乳幼児から少年期への境目だ。


 それまではどこの家の小僧程度の呼び名でしかったものが、個人名をつけられるという風習もある。

 昔懐かしのハック&スラッシュなダンジョン・ゲームで言えば、一回戦って生き残ってレベルも上がったから名前つけるかくらいの……こんな例えじゃかえってわかりにくいか。

 七歳というのは、一つの区切りだと思っておけばいいだろう。


 巡礼だ祝福だーの言いながらハンド・トゥー・ハンドでの魔力通しが成功した子をピックアップ。

 あとは御領主様の直轄で召し上げ、我が師父の下か、あるいはツェルマット教会の養成院で門戸開放された法術師コースへ送り込むという段取りだ。


 魔力を認識する。

 魔力を体外に出せる。

 魔術師なり法術師なりの勉学を修めることができる。


 俺たちの想定する魔法使いへの関門は、おおきくこの三つになる。

 各段階でどのくらいの割合で『才能』のふるいにかけられるのかはまだ不明だが、第二関門までクリアできていれば呪符使いにはなれる。これも立派な魔法使いだ。


 七歳児が人口に占める割合を仮に三十分の一としても、領民三万人なら千人はいることになる。

 ん? そんなにいない?

 とにかく、そのうちの何人が魔力通し成功するのか。貴重な統計データになる。


「何か所回ることになるんだ?」

「まずは領都と、行政区としての村は五つだけど、細かい集落数は把握してないなあ」


 領都周辺だけでも十弱の集落はあったはずとハイラル。

 魔物という驚異の影響で、家屋を集中させる集村スタイルが基本だが、一つの村の中に集落は複数存在する。

 領内で五十集落としても二チームそれぞれ二十五か所のノルマ。移動滞在予備で一か所三日とられれば終わるまでに七十五日もかかる。


「できれば冬前に終わらせたい」

「寒い中うごきたくないもんね」


 現実は非情である。


 なんせおらが集落、お郷に巡礼の聖職者様がご訪問くださったんだべさ。

 しかもガキんちょに祝福だぁ言うてくださっとるべさあ。

 ならおいらたちにも祝福のおすそ分けをだべさあ。


 ……歓待もセットでねえ。

 兄貴とかハヅキとかもてまくリングですね。

 農奴には移動の自由がない中世クオリティでは、農村集落はどうしても閉鎖的になる。ゆえに外の血を欲するというわりと切実な事情がある。

 そのへんは俺がとやかく言うことじゃない。

 ハイラルはさすがに立場がアレなんで、ご落胤騒動おこすわけにはいかないと、実家的にも受け入れるべしな村長家クラスからのおめかけさんだけ領都送りでお茶を濁す感じ。


 俺は、ヒル子とミルディーフに両脇固められてたもんで。

 ミナヅキ君もフィルさんガードがついてるし。


 巡礼ってこう、禁欲的なイメージだったんですけどねえって感じでぐっだぐだになりながら、なんとか春が来る前にヤマトゥーン領内をまわりきった。

 報酬などを受け取って、ヤマトゥーン家が召し上げた子ども三十人弱および世話役なんかと一緒に、伯都ツェルマットまで戻る。


「助祭に昇階しちゃったよ」

「一年で助祭捕から助祭って、大出世だねえ」


 春を迎えた新年の祭事中には、ハイラルとミナヅキは七歳児への祝福行の功績が認められて、という名目で昇階した。

 もちろんこれは、魔法使い候補の発掘という裏事情について、二つの領主家とツェルマット教会との間で高度に政治的なやりとりがなされたことによる。


 一度、流れとして人材発掘プロセスができてしまえば、あとは組織の力に任せることに異論はない。

 今後の魔法使い候補のピックアップは、七歳児への祝福行という名目でツェルマット教会と二領主たちの直属部隊との協力の下で行われることが決まり、俺は晴れてお役御免となった。


「なんていうか、解放感?」

「俺は、祭りが終わっちまった寂しさかな」

「兄貴はおいしい思いしすぎだったっつうの」

「ふふっ」


 あらやだ、大人の余裕みたいな雰囲気までかもすようになっちゃったわよ、わたくしのスコールお兄様ったら。


 十四歳の春はおれたちにとって本来の年季明け、つまり成人となる。

 あっちの意味での大人への階段がどうこうは脇に置き、師父たちニートナル屋敷のみんなに成人を祝ってもらえた。


 俺たちは、改めてノルトラムの街に向かった。

 今度こそ、恩恵ギフトをもらうんだい。



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