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三人の転生者《イレギュラーズ》 ~神様チートはないけれど、仲間と一緒にやっていく~  作者: 凡鳥工房
第2章 三人の転生者《イレギュラーズ》、修行回に突入する

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2-07.できちゃった

 伯都中がウキウキ気分に染まる季節の祭り、夏至祭に、いつもの教会前広場に集った俺とハヅキはミナヅキの友人たちを紹介された。

 れっきとした養成院の候補生で、ミナヅキのイマジナリー・フレンドじゃない。


「やあ、君たちがミナヅキご自慢の親友だね」

「ふーん、まあ、よろしく」


 口火を切ったのは育ちの良さがわかる穏やかな優男、ヤマトゥーン男爵家の四男、ハイラルと名乗る灰色の髪の少年。

 対抗するように栗毛の髪の幼女、ヒルデガードが口の端を曲げながら挨拶とガンを飛ばしてくる。

 続いて少年ヘンドリック・バーバーと幼女フィリアの計四人と挨拶を交わし、俺とハヅキは左右からミナヅキの肩を抱いた。


「ミナヅキぃ……ボッチじゃなかったんだ。よかったなあ」

「ほんに、ほんによかったでぇ」

「だからボッチじゃないって言ってるでしょ!」


 早速ボッチじゃない記念の祝杯……じゃなくて、はじめましてのアイスブレイクをしようかと思ったら、ハイラル君がついてこいと言う。言われるままにホイホイとついていってしまった俺たちは、広場に並ぶ屋台ではなく五分ほど歩いた街角、オープン・カフェめいた席に陣取った。


「夏至祭で広場は混雑しているからな。せっかくだし、腰を落ち着けようよ」

「ハイラルは、伯都育ちの俺よりも伯都に詳しいな」

「そうでもない。この店は、母の好みさ」


 周りをうかがうと、いつもの屋台で買うようなブドウかす汁とは違う世界のお飲み物が供されている。

 お高い雰囲気に場違い感で委縮していたら、支払いは任せろとハイラル様が笑いながらのたまわれた。


 そう言われても、何を、どう頼めばいいのやらといった風情の幼女たちに、俺たち三人にしたって、前世記憶で類推はできるものの、初めての店のシステムを把握できていないのは同様。

 結局、気を回したハイラル様がこれがオススメなんだけどいいかいと確認をとって、手慣れた感じで給仕を呼び、みんなでおそろいの紅茶とクッキーを注文なされた。


 ちなみにこの伯都には、俺たち三人の出身村の領主家、エンダーのチビ若セオルドや末姫ソウニャ、ついでにおさげの悪魔ことシスティナもいるはずだが、ホセの件の時以外でやり取りは何もない。

 売り飛ばした元領民の子に興味がないならそれでいい。

 俺たちも関わりを持つ気はない。売り飛ばされてから約一年、それぞれに地歩を固めようと頑張っている。


「おいしい」

「ハイラルの兄貴、ゴチになりやす」


 任侠道に目覚めたらしいハヅキの隣では、えーと、目を細めたヒルデガードがまるで小動物のようにクッキーをかじっている。

 初見のガン飛ばしの印象が台無しじゃないか。せっかくのツンキャラかと思えば、がっかりだよ。

 俺の視線を追っていたミナヅキは肩をすくめた。その隣ではフィリアもまた、小麦色の髪を小刻みに揺らしながら一心にクッキーをかじっている。

 聞けば、幼女二人はいわゆる内部組、この春に七歳を迎え、教会運営の孤児院から養成院に入ったとか。


「同い年か……」

「なによ?」


 太れるのは富の象徴とはよく言ったもので、教会の孤児院に余裕はないようだ。

 幼女改め少女二人、せめてスレンダーに成長する未来への希望は忘れないでほしい。俺の分のクッキーも食っとけ。


 さておき、ハイラル様とヘンドリック君は外部組。前者男爵家、後者は騎士家。両者とも跡継ぎではないので、教会との伝手をつくるために送り込まれたとのこと。よくある話らしい。

 ミナヅキとの関係は、男二人は宿舎の同室。

 少女二人は、ツン崩れのヒルデガードがミナヅキに頭を下げたことからの縁だとか。


「ミナヅキの座学まとめノート、あれが欲しかったの」

「ああ、あれはいいものだ」

「うん、助かっている」

「わかりやすいんだよねー」


 年齢差はともかく養成院での先輩ミナヅキと、その座学まとめノート目当ての少年少女。

 メリットがあるから友達になる。大人も子供も変わらない真実であることよ。


「ハイラル様、本日は御馳走頂き、ありがとうございます」

「気にしないでくれ。座学ノート以外にも、いろいろ不慣れな僕は助けられている」


 うんうんと頷くヘンドリック君。世俗の身分入り混じる、宿舎暮らしの共同生活はいろいろと勝手が違うという。丁稚大部屋暮らしのハヅキも相槌を打っている。

 ハイラル様はそれに、と続けた。


うちの家訓でね、黒髪黒目は大事にしろというんだ」

「それはまた、珍しい家訓だね」

「僕は見ての通りの灰色髪だが、目は茶黒だろ。ご先祖様が黒髪黒目だった名残らしいし、今も昔も、ミナヅキのようにはっきりした黒髪黒目は珍しいからね」


 ……ヤマトゥーン男爵家ねえ。

 あからさまに転移者臭いな、そのご先祖様。そっと目線を飛ばすと、ミナヅキとハヅキも頷いた。

 まあ、だからといってどうということもない。好意には好意を返しておけばいい。

 前世の記憶があるというだけで、俺TUEEE無双だの全知全能じみたメタ知識だののチート能力とご縁のない俺たちに何ができるわけでもないのだから。


 養成院に在籍一年を過ぎるミナヅキだが、相変わらず、書庫はもちろん写本室に入る許可は出ていない。基礎中の基礎課程在籍中なのだから当然だ。

 しかし、同室のハイラル様から借りた本を写し、それを元手に別の誰かの本を借りて、以下同ループに入ることに成功したとの報告に俺とハヅキはミナヅキをほめたたえた。


 幸い、秋に入る前に四個目の魔石チャージが終了。自転車操業気味だが、当座の紙と鉛筆は確保できた。

 しかも今回は二か月を切った。順調に成長している。俺たちは祝杯をあげた。


 ミナヅキが貸与あるいは売り飛ばし用と自分用で最低二冊分を書き写し、ミナヅキの自分用をさらに俺が書き写す。

 ハヅキは勤め先の事情で私物入れが小箱一つ分、それも特に施錠などされていないので高価なものは置いておけない。

 よって俺が写した回し読み用は、屋敷の使用人部屋とはいえ自室を持つ俺が保管係ということになる。


 夏至祭以降、いつもの安息日の午後の会合に、ハイラル様とヘンドリック君、フィルとヒルも時々混じる。

 フィリアでフィルとヒルデガードのヒル。「そこはルディでしょう!」と言われたが知らんな。せっかくのツンだと思ったのに!


 そのフィルとヒルは、魔石チャージによるお小遣い稼ぎに興味を示した。

 写本収入?

 写させてくれる相手はともかく、元手となる紙や鉛筆なんかを手に入れてからの話ですからね。俺たちに余裕があれば、二冊分の紙を渡し、代価として一冊を徴収するというアコギな真似もできたが、余裕がないので仕方がない。

 俺たちの実績を考えればお金を手にするのはだいぶ先の話になると言っても、諦めずに食いついてきた。


 孤児院からの選抜、いわゆる内部組である二人は金がない。

 幼少期からの洗の……教育により、教会組織への親和性は高いが世俗権力や金銭的な後ろ盾を持たない内部組。

 対して、実家からの仕送りを活用して内部組を懐柔するのも外部組の常套手段であり、内部組としても懐柔されたり利用したりして人間関係力を磨いていくとか。


「ハイラルの兄貴、いつもご馳走様です」

「ははは、いいって。その代わり、いつかハヅキが大商人になったら頼むよ」

「えあっす!」


 もちろん人間関係だけに、局所的にドロドロしてしまうこともあるらしいが、別に蟲毒の壺めいた権謀術策の世界が広がっているわけではない。

 前世の学校や会社でもよく見られたお付き合いと立ち位置のすり合わせ程度の話だ。俺からもご馳走様です。


 なお、フィルとヒルにクズ魔石を渡し、魔石チャージは小遣い稼ぎでもあり、魔力の制御訓練云々の説明中に『不幸な事故』が発生したかどうかについては、ここで言うべきことではないだろう。


 秋には俺たち三人、各自通算五個目の魔石チャージ終了。

 俺の保管している写本を読みたいというハヅキの希望もあって、二人を伴ってニートナルのお屋敷に戻る。裏庭にいた執事さんに断って、俺の部屋へと案内した。

 本選びはすぐにすみ、三人で額を寄せ合う。

 友達が増えるのもご馳走頂くのもいいことだが、三人だけで込み入った話をできる機会も貴重になってきた。


「魔力量も、魔力制御も高まっているはずなのに、光の術に成功しません」


 光の術とは、教会がいう法術(魔法)のうち、簡単な部類かつ効果がはっきりわかり、害のないものである。

 養成院では、この術を発現できると、『才能あり』として法術コースに入れる。

 そして俺たちは、朝の錬気瞑想と夜の魔石チャージで『才能』を伸ばしている、と思っている。魔力量も制御力も伸びている実感はあるのだ。


「なんというかこう、できそうな気はするんですけどできない。呪文がね、それと発動語。結構難しいんですよ。注意して聞いて真似してるつもりなんですが、抑揚か発音か……人によっても微妙に違うし。熟練すればいわゆる短縮詠唱や無詠唱もできるって話なんですが……」

「その呪文やら発動語やらって、意味あるん?」

「え?」


 自己分析を続けていたミナヅキに対し、ハヅキが根底を覆した。


「いやだって、法術……魔法って魔力コントロールがキモなんよね?」

「だから呪文でその魔力コントロールを」

「人によって抑揚や発音が違う言うたやん? 短縮や無詠唱もできるって?」


 なるほど。ハヅキの言うことにも一理ある。呪文詠唱そのものに発現効果があるなら、短縮はともかく無詠唱はおかしい。

 まるっきり意味がないと言い切る根拠もないので、とりあえず、呪文や発動語はあくまで補助的なものとすれば、魔法の本質とは?


「魔法とは、魔力制御と魔力量」


 敬愛する上司、ネイトナル様の受け売りだとそうなる。

 個々の魔法について、発現させるための魔力制御と魔力量がいる。量はともかく制御はつまり手順だとして、手順とは求める結果に至るためのもので……あれ?

 とすると結果から逆算で組み立てるのか?

 具体的な組み立てはわからないが、それは養成院での光の術もわかっていて発現させているとは思えない。ということはつまり、できるという信念と、光という結果を知っていればいい?

 結果をイメージして、魔力を集中……


「……できた」


 俺の指先に、ぽわんとした光が生じた。


「アイエエエエ!? 短縮詠唱すらかっ飛ばして無詠唱!?」

「なんで、なんでウヅキ!?」


 騒ぐ二人をシャイニングするハンドで黙らせて、俺は推論を言い聞かせた。

 結果、ミナヅキとハヅキも、できた。


「コレだよコレ! コレでいいんだよ!」

「うひゅおほぉおお! 自分、魔法使いになったんですねえええええええ」


 憧れの魔法である。

 せっかくファンタジー世界に転生したのだから、会得したかった魔法である。

 よほどうれしかったのか、ハヅキは商人言葉から素のですます調に戻り、ミナヅキは光の術だけでなく、指先に小さな炎を生じさせてライターもどきを実演してみせたり。


「ゲハハハハ、僕のイメージ力を侮ってもらっては困る」

「うひょひょひょひょ、イメトレなら自分も負けていませんよ」

「くらえ、ホット・ブロー!」


 生暖かい風を浴びせてやった二人から、お返しのコールド・ブローとターボ・ブローを食らう。

 俺ロンゲだし、ドライヤー欲しかったのよねえ。


 だがこの後、喜びはしゃいだ俺たちを、悲劇が襲った。



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