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1話

次の授業が始まるまでスマホを弄っていると小林から声をかけられた。


「なぁ笹倉、今度の終末あそこ行こうぜ」

「あそこってどこだよ」

「あそこって決まってるだろ封鎖区域!」


20年前、俺が生まれる前の事だ。とある大事故により東京の都心が封鎖されてしまった。どういう事故だったのかはわかってないらしい。

ただ言えるの都心で化物が出たということらしい。


「やめとけよ、化物が出るんだろ。それに最近じゃ封鎖区域外にも化物が出没してるって噂があるぞ」


 ここ数年前から封鎖区域以外もはや全国と言っていいほどだ。目撃情報があるたびに報道番組に取り上げられるほどだ。

 もはや封鎖区域に近づくだけで化け物が出てくる可能性が高い。


「なんだよビビってるのか?」

「そういうわけじゃねぇよ。ただ危ないからやめとけって」

「やっぱビビってるんじゃねぇか」

「はぁ、もういい」





結局俺は小林を止める事は出来ずに一緒に封鎖区域まで来てしまった。小林は俺の他に中村と鈴木にも声をかけていた。

だが封鎖区域に来たと言ってもまだ結構距離が離れていたりする。


「おぁ~すげぇ。二重に封鎖してるんだな」


距離が離れてて高さがわからないが封鎖区域は10メートル、もしくはそれ以上ありそうなコンクリートの壁で視界端まで囲んでいた。さらに壁からたぶん何十メートルか離れた先にまた金網フェンスが視界の端までグルっと囲んでいた。

 事前に調べたが、金網フェンス側には警備がいる。見張りの警備員が何か怪しいものを見かけたり、何かがあった場合に対処するらしい。コンクリートの壁と金網フェンスの距離があるのも見渡せるからと同時に、広い場所での戦闘を考えているからだそうだ。


「見張りもいるし、監視カメラもあるんだからあんまり近づくなよ」


小林を制する声をかけるが「へーきだ」など帰ってきた。何事もないといいが。


「案外化け物は既に出てこっち側にいたりしてね」


中村がそんな事を言ってきた。


「お、おい何てこと言うんだよ!」


 そんな事言った鈴木の顔色はあまり良くなさそうだ。行く時は一番元気だったのに目的地に近づくに連れてだんだん口数が減ってたんだよなぁ。

 

「まぁまぁ、今回の目的は封鎖区域をしっかり見学することだ。あんまりビビんな」


 だが「でも化け物も見れたら見たいんだよなぁ」と小林が小声で言ってるのが聞こえた。やっぱそれが目的なのか……。


 しばらく歩いているがなんか徐々に空気が重くなっていく。なんか気分が悪いな……。どうやら鈴木も同じだったのか口を開いた。


「な、なぁもういいだろ、帰ろうぜ」

「何言ってるんだまだまだこれからだぜ!」


まだ進む気がある小林。だが俺も流石に限界だ。


「おい小ばや「うわああああああああああ!!!!」

「「「「!?」」」」


突然の叫び声に皆驚いた。


「な、なんだ」


何が起きているんだ? 俺は周りを確認した。


「あ…………ああっ……!」


周りを見てると鈴木の声がした。鈴木の方へ視線を向けると鈴木は指を指していた。その方向へ目を向ける。


「!」


何…………しているんだ。


人型の人間とは思えない何かが腕だけで警備員らしき人物を貫いているように見えた。ドラマかなにかの撮影か……?

 そして人型の化け物は、


こちらを見た。本能的に察した。コイツはヤバイと。


「に、逃げろ!!」


 全員来た道を全速力で走った。足音でわかる。すごい勢いの音がするからだ。振り返っては駄目だ。だがある声に俺たちは足を止めてしまった。


「うわぁ!」


 鈴木が転んでしまったからだ。


「おい、何やってるんだよ」


 今まで余裕だった小林も今はそれどころじゃない様子だ。中村が鈴木を助け起こそうと近づいたが、ドンッ! というすごいと同時に砂塵が舞った。砂が開けそこに見えたのは倒れた鈴木の上に乗っている化け物だった。

 化け物の片腕の先に見えるはずの手が見えない。

 俺は…………、俺は知りたくない!だが化け物は無情だった。化け物は立ち上がりながら手が見えない腕を持ち上げる。なぜか鈴木も一緒に持ち上げる。

 その腕には胸を貫通された鈴木いた。鈴木の目は虚ろだった。


「ぁ……」


 声にならない声が出た。足が震えて動かない! 頼む! 動いてくれ!


「う、う、うわあああああああああ!!!!」 


 小林が大声を上げて走り出した。小林の叫び声を聞いたせいか俺の身体も動いたので走り出した。ずっと走しってたが予想だにしないことが起きた。

 先頭を走ってる小林の前に化け物が飛び出した。小林は全速力で走ってて止まれず化け物にぶつかってしまう。化け物は小林の身体を掴んでいた。

 この先の光景を見たくない。俺と中村はそのまま走り続けた。俺たちの力じゃ小林を助けることなんて出来ない。


「た、助けてく」


 後ろから聞こえる小林の声は途中で消えた。代わりに聞こえたのはボキボキと何か硬いもの折ったような音が聞こえた。

 気にしたら駄目だ! 走り続けろ! 人がいるところまで!

 走り続けると爆発音と同時に俺の身体は中に浮き吹き飛ばされた。


「はぁ、はぁ、何が起きたんだ」


 周囲はなぜか焼け焦げていた。匂いも臭い。

 そしておれは目にしてしまった。


「う、うう……おぇえ」


 急に来た嘔吐感を抑えることは出来ず、吐いてしまった。

 俺は息を整え、立ち上がり走り出す。丸焦げになってしまった中村に目もくれずに。


 ずっと走っていると警備用の建物が見えてきた。そこまで来ればきっと大丈夫だ。だが近づくにつれて様子がおかしい事に気付く。

 1人の人影がみえる。その周りになにかある。いや、人が倒れていた。思考しなくてもわかった。この人間が十数人の人間を殺したんだと。


「あれ、まだ生きてたんだ」


 俺は怖くて口を開けない。


「ちょっと断~ただの人間になに手こずってるのさ」

「ゆっくり楽しんでただけだぜ俺は」


 振り向くとあの化け物がいた。コイツ喋れたのか……。


「あ~でも面白かったぜ。俺を見て慌てて逃げる姿は最高だった。友達がやられてるのに助けもしないんだぜこいつら」


 クソッ! ……俺や皆を馬鹿にしやがって。だが俺にはこの状況をどうする事も出来ない。逃げるしかない俺はまた別方向へと走りだした。


「何の力もない人間がむやみに僕たちに戦いを挑まず逃げるのは正しい選択だと思うよ。ただ相手が悪かったね。僕たちは人を殺したくて仕方がないから、さぁっ!」


 俺は足を止めない。あいつらの言葉なんか気にしていられないからだ。だが身体に衝撃が走る。俺は足を止め顔を下に向ける。


「……っ!」


 俺の腹が真っ赤になっていた。

 痛い痛い痛い痛い!


「あー苦しそう~。ゴメンね、心臓狙うつもりだったんだけど」


 なんだか楽しそうに喋ってる声が聞こえるが、俺はあまりの痛さにそれどころではない。痛さで感覚を失い身体が倒れた。


「君は上手く死ねるのかな?それとも理性がない化け物になるのかな?それとも……歓迎はしないけど新たな人種になるのかな?」


 俺の意識が朦朧としてきた。あぁ…………俺はここで死ぬのか。父さん、母さん親孝行全然出来なくてゴメン。

 俺はまだ…………


「ぃ……た……ぃ……」


 最後に俺が目にしたのは見知らぬ男の姿だった。


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