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第3話

 先ほどから荻原は、汗だくになってスマートフォンをいじっている。汗と油の付着した髪が濡らしたように固まって、光っている。彼女はあれからどういう人生を歩んできたのだろうか。

 彼女の行為が人に知られなければよかったとは、思わない。あれからしばらく学校へ来られなかった神田は気の毒としか言いようがなかった。隠されたままであれば彼は余計に傷ついただろうし、隠し通せるものではない。

 それならば、彼女の行為を人に知らせたのが自分でなければよかったのだろうか。恐らくそれが僕の気持ちだ。誰かが気づかなければならなかったとしたら、自分以外なら誰でもいいから代わってほしかった。彼女を、あの常軌を逸した姿にする引き金を引いたのは僕なのだ。

 彼女の罪は確かに断罪されるべきだったのかもしれない。しかし、痛みを負った神田と彼の家族以外に、その権利はあったのか? 直接被害を受けたわけでもない人間が、面白半分に彼女を攻撃することが許されたのだろうか。あんなにひどく名誉を踏みにじる権利が、僕らに有ったのか? 

 僕はあの学年の連中に、好き放題いじくりまわしてよい玩具として、荻原を提供したのだ


 僕は気づかれないように立ち上がり、その場から逃げ出した。自分の罪を目の当たりにするのは耐えられなかった。きっとしばらく胸のつかえはとれないだろう。

 もはや暑さは消え去っている。地面から反射する光が僕の目に突き刺さった。

最後までお読みくださり、誠にありがとうございました。

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