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遊星迎撃隊―Starship Breakers   作者: 暗黒星雲
系外惑星探査
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第6話 天体衝突と恋人たち

 アキツシマの損害は軽度とは言えなかった。

 タンデムツイン型の核融合エンジンに岩石が命中したのだ。

 修復に一年以上かかるらしい。

 

 不幸中の幸いだったのは死者がいなかった事。

 負傷者は45名。そのほとんどは艦長と艦長指揮下の保安部隊だった。城島少佐以下パワードスーツ部隊の面々に素手でボコボコにされたらしい。


 大勢の子供が乗ったシャトルをハイジャックした、という情報が入った途端に城島少佐以下パワードスーツ部隊の面々は怒り沸騰して大暴れしたのだ。手錠をかけられていても体当りと足技だけでKOの山を築いた恐るべき肉弾戦特化集団である。また、艦内では火器を使用しないことになっていたのも幸いした。銃で艦を損傷させない為保安部隊は麻酔用の電磁警棒を装備していたのだが、夢見る野獣たちには無力だった。彼らは弱い者虐めを嫌う。中尉らしい招集だった。


 その後の調査で衝突したのは小惑星だと分かった。直径は900m程で速度は秒速24㎞、銀河北極より銀河南極方面へ、太陽系を斜めに横切る軌道だった。この軌道を綿密に計算した結果、太陽系外から飛来した小惑星であることが分かった。その方向を調査したのだが、そこには驚くべき事実が隠されていた。数億個の小惑星群が太陽系に向かって飛来していたのだ。その小惑星群の直径は約150au(天文単位、1auは地球と太陽の距離)で、太陽系の大きさ(太陽から外縁天体までの距離は約50au)の約3倍だった。今後約30年の間、地球に被害を及ぼす可能性のある小惑星が数百個あると見積もられた。



 オレは今、休暇を貰い月面のホテルに滞在中だ。

 紀里香きりかと同じ部屋に泊まっている。

 まあ、そういう事だ。余計な詮索は止めて欲しい。


 目の前にいる紀里香。やや丸顔だが太い眉と大きな目が強い意志を感じさせる。髪を短くしているのは、ヘルメット装着の際に邪魔にならないようそういう規定があるからだ。今は何も身に着けていない。


「和馬君。あの話は聞いたかな?」

「あの話って……小惑星群の事?」

「ええ。その事」

「信じられない。直径が太陽系の3倍だとかどんなデカさなのか想像できない」

「そうね」

「その中に直径10㎞以上の大きなものが数百万個あると見積もられている……とかも信じられない」

「直径10㎞以上の小惑星だとチクシュルーブ・クレーター級よね。恐竜絶滅の原因になったと言われているユカタン半島のアレよ」

「それも想像がつかない」

「地球は今後約30年間、天体衝突の恐怖に怯えることになる」

「まるで信じられない」

「想像力が貧困なのね」

「人間、未経験の事は想像できないんだよ。だからジュール・ヴェルヌなんかは尊敬されてるんだ。26世紀になってもまだ語られている」

「そうね。私が最初に読んだSFはジュール・ヴェルヌの海底二万里だったわ」

「アレは面白い。今の視点でも見劣りしない名作だな」

「貴方が最初に読んだSFって何?」

「オレが読んだのも古典SFだった。銀河パトロール隊だったかな?たしかレンズマンシリーズの第一作」

「私は読んだことないな」

「宇宙を飛びまわるスペースオペラだな。レンズってのがいまいちわかんなかったけど、それつけると超能力みたいなのが使える。ワープしないで光速を超えて飛び回るんだが、ああいうのは深く考えちゃダメだろ?銀河パトロールと宇宙海賊の戦いが痛快だったのを覚えてる」

「そう。男の子が好きそうな物語ね」

「そんな感じだ」


 オレたちはしばらく黙っていた。


「ねえ、和馬君」

「何?」

「もし、地球が滅びるとしたら?」

「どうするのかって?」

「そう、どうする?」

「そりゃ決まってる」

「何が決まってるの?」

「小惑星を砕く。他に選択肢はない」

「そう言うと思ってた」

「なら聞くなよ」


 紀里香きりかはまた黙り込む。

 そして立ち上がり窓の方へ歩き外を眺める。


 スリムとは言えないが、鍛え上げられた体が美しい。


「私はあなたにずっと抱いていて欲しい」


 そう言って微笑む彼女が限りなく愛おしかった。




 その後、系外惑星探査計画オケアノスは凍結された。

 太陽系に接近する小惑星群の探査及び排除に全力を尽くすことが決定されたためである。


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