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最終回 行ってらっしゃい!

ついに今日は俺が病院から退院する日になった。検査も異常無しで俺の担当の医者は奇跡的な回復力とか言ってたっけな。自分にもよくわからないけどとにかく何事もなく終わってよかった。静のあの心配様から見るとほんとに危ない状態だったみたいだしな。


「帰ってきた…」


静は病院まで迎えに行くって言ってくれたんだけど元気だから家で待っててって連絡をしておいた。どうやら俺が倒れた日に両親が一時帰国していたらしいが俺が目を覚まして検査に異常無しって分かった日には帰ってしまったらしい。俺が起きてる時にも顔を出してくれてもいいじゃんかとは思ったが昔からそういう性格の人だから特に気にせず何も言わなかった。何より俺の事が心配で一時的にも起業中の会社を放置してまで来てくれただけでも嬉しいしね。


「どうしよう…俺の家なのにピンポン押す勇気が出ない…」


俺は家の前で3分ほど固まってしまった。


「よし、行くか」


ピンポーン、ピンポーン


ほんと緊張する。2週間家に帰ってなくて家に彼女いるってだけでこんなに緊張するものなのかな…


「はい、天谷ですが」


なんだか静の声で天谷ですが言われると結婚したみたいでなんだか照れくさかった。まだまだそんなこと考える歳でもないけどね。


「あー、純一だけど」


「あ!純一!今開けるね!」


中からドタバタと音が聞こえて数秒後…ドアから静が顔を出した。なんだろう…少し会ってなかっただけでもすんごい泣きそうになってしまった…


「おかえり純一」


「うん、ただいま静。やっと帰ってこれたよ」


「うん…」


俺はそっと静を抱きしめた。


「ちょ、ちょっと!ご近所さんに見られたらどーするのよ!」


「いいよ、別に。ダメか?少しこうしてちゃ」


「ううん、いいよ。私もずっとこうしたかったから」


静は顔を真っ赤にして、それも目を赤くして抱きしめ返してくれた。


だが家の中から思わぬ人物が出てきてそれを止めに入った。


「あ!ダメだよ静抜け駆けは!」


「早苗ちゃん!?待っててって言ったのに」


「絶対そういうことしてると思ったんだもん。早く入ってよ。ご飯も冷めちゃうよ」


「んー、わかったよ」


なんで早苗ちゃんが俺の家から出てくるんだろうか…俺は玄関の靴が5足あった事に気付いた。ってことは静、早苗ちゃん、菜華ちゃんと多分タカ。それで後1人か…まぁあの人だろうな。学園の魔女ゆかりさん。


「誰が魔女よ。あんたのせいで私に裏ある事バレたんだから責任取りなさいよね。まぁ何事もなくてよかったわ」


「人の心読むのやめてもらってもいいすか…ってかバレたんですか!?」


「まぁ色々あってね。だからしばらくはゴミのゆかりさんだから。ねぇ小久保君?」


「ゴミ言ったのは悪かったすけどここまで粘着されると思わないっすよ…」


「あっそ」


取り敢えず俺が寝てる間にタカとゆかりさんの間で何かあったのは間違いなさそうだな…


「純一!早くリビング来てよ!何してんの!」


「ごめん、今行く」


「すげ…」


俺の目の前にはこれでもかとばかりに豪華な食卓が広がっていた。俺が好きな物ばかりを作ってくれたのか静…


「これ全部静が?」


「ううん、早苗ちゃんも手伝ってくれたよ。タカとゆかりと菜華は戦力外だったから何もしてないよ」


「ノーコメント」


「まぁ俺は皿とか運んだけどな」


「私はゆかりさんに捕まってた」


「皆ありがとうなほんと。もう絶対こんなことないようにするからさ」


「当たり前でしょ。次倒れられたらこっちが倒れたくなるわよもう」


「また静が赤ちゃんみたいに泣くからフォローするこっちの身にもなってよね」


「ちょっとゆかり!」


なんだかんだでやっぱり仲良いよなこの2人。



俺達はその後静と早苗ちゃんが作ってくれた料理をペロリと平らげた。


「ごちそうさま。美味しかったよ」


「お粗末様でした」


「じゃあ俺は部活あるから行くわ。あ、言い忘れてたけど次のキャプテン俺になったんだ」


「マジで!?頑張れよタカ。来年は絶対甲子園行こうな!」


「おうよ!それじゃまた明日学校でな」


「おう、いってら」


「私も引継ぎ終わってないんだった。面倒だけど行かなきゃ」


引継ぎ?うちのマネージャーってゆかりさんしかいないのに誰に引継ぐんだ?


「引継ぎってマネージャーいませんよねうち?」


「そこの早苗ちゃんがマネージャーになってくれたのよ。後アクアちゃんもね」


「ええ!?早苗ちゃんがマネージャー!?ってか赤星さんまで?」


「うん、この間の紅白戦でまた野球熱来ちゃってマネージャーいないならやらせてもらおうかなって。だから私ももう行かなきゃ行けないんだけど純一君に一つだけ言いたいことあるんだけどいいかな?」


「ん?なに?」


今後の野球部についてとかかな。早苗ちゃんの野球の見方とか経験者だから結構頼りになりそう。


「えっと…そのぉ…」


「ん?」


「私も純一君の事が好きなの!だから第2婦人とかでもいいから付き合って下さい!」


「ぶふっ!はぁ!?ちょっと待って待って」


後ろの方ではゆかりさんとタカが爆笑してるのが見えた。一方の静はこちらを心配そうにしているのが見えた。菜華ちゃんは知らない間にリビングからいなくなっていた。


「待てない!私人を好きになったのってこれが初めてなんだよ!だから告白するのとかももちろん初めてで…だから早く返事ちょーだい!」


凄い剣幕で迫られて俺は返事をせざるを得なくなった。


「ええと…ほんと俺なんかを好きになってくれてほんとにありがとう。でもごめん。俺2番目とかは作らないよ。俺が好きなのは静だけだからさ」


「そっか…ありがとちゃんと返事くれて。でも諦めたわけじゃないからね、じゃあ部活行ってくるよ。純一君もお医者さんから許可降りたら戻ってきてよね!」


「おうよ」


こうしてタカとゆかりさんと早苗ちゃんは野球部の方に行ったみたいだった。それにしても経験者2人がマネージャーとは心強いな。


「さっきの台詞臭すぎ」


「そりゃねーだろ…」


おかしいなぁ…俺が倒れてた時の優しさは何処へやら…


「菜華はなんか友達の家行ったよそーいや。じゅんにぃの元気な顔見れてよかったって。ついに兄離れってか純一にくっつくのやめたのかもね」


「そーだったんだ。それはそれで残念な気もするけどな」


「ロリコン」


「うるせぇよ」


「ふふ、やっぱり私達はこうでなくっちゃね。変に気遣いせずやってくのが1番だよ」


「だな。流石飼い主と犬だよ。そろそろご褒美くれてもいいんじゃねーか?」


飼い主と飼い犬。これは俺が中学生の時に友達に言われた言葉だった。静の事が好きで仕方なかった俺はずっとくっついてたもんな今思い返せば。くっついたせいで静にはずっとこき使われっぱなしだったな。それを喜んでやってた俺をタカはドMとも言ったけか。今思えばほんとに懐かしい。それに静と恋人同士になれるなんてあの時は思いもしなかった。今の俺は本当に幸せだと思う。


「ご褒美ね。ふふ、そーよね。飼い主と犬から恋人同士になったんだもんね。いいよ、あげる」


俺は静をリビングのソファーに押し倒した。


「優しくしてくれなきゃ怒るからね」


「うん。なぁ静、今幸せか?俺はすんげぇ幸せだよ。好きな人とこうして一緒に居られるんだからな」


「バカ…私も幸せだよ。純一の彼女でよかった」


この日俺達は1つになった。


---------------------


10年後……


「こら若葉!早くしないと幼稚園遅れちゃうよ!」


「うっさいママのバカ!パパ助けて!ママがいじめるぅ!」


「そーやってすぐにパパに助け求めるのいい加減にしないと怒るわよ!」


「若葉知ってるよ!そう言うの嫉妬って言うんだよね」


「んな!?そんな言葉どこで覚えてくるのよ…」


「静も若葉もその辺にしときなよ。ほんとに幼稚園遅れても知らないからね、置いてっちゃうよ」


「ごめんパパ今行く!」


高校を卒業した後、俺と静は一緒の大学に入り大学を卒業してすぐに籍を入れた。野球は高校で辞め。大学では主にスポーツの医学を勉強し28歳となった今ではプロ野球チームの専属の医師をするほどにもなった。そして23歳の時に娘も出来た。名前は若葉。静に似て元気な女の子に今は成長している。今年で5歳になる幼稚園児でまだまだ生意気なところもあるが可愛い娘だ。


「ほんと誰に似たんだろうねこの子、私はお父さんに逃げたことなんてなかったよ」


「俺に甘えて来るとこなんてそっくりだと思うけどな」


「いつ私があんたに甘えたのよ、1回頭ぶん殴ろうか?」


「遠慮しとくよ」


「パパー!準備出来たから行こー!」


「ほらほら行った行った」


「じゃあ行ってくるよ」


「気を付けてね」


「おう」


俺は若葉と一緒に扉を開け1歩を踏み出した。

この話で最終回となります。今まで読んでくれた読者様本当にここまでお付き合い下さってありがとうございました!


アフターストーリーなどは不定期ですが更新する予定です!

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