始まり
王道のファンタジー物が書きたくて、この物語を執筆し始めました。
まだまだ未熟ですが読んで頂ければ嬉しいです。
山の中腹にあるガガナ村は、辺りを厳しい環境が覆っている小規模な集落だ。
いまこの村は冬を迎え、降り積もった雪により一面を純白に染めていた。
そんな中村から少し山を登った処に、唯一雪が不自然にぽっかりと穴が開いたように積もっていない場所があった。
その日も激しい突風と共に、雪が吹雪いているというのにこの場所には剣を激しく振るう少年が一人黙々と鍛錬を積んでいた。
少年の名はガウルといい、村の中では一番の剣の使い手であり毎日どんな悪天候であろうと午前中は欠かさずこの場所で修練に励み、午後からは山奥に進みモンスターを倒すといった事を日課にしている。
ガウルはいつも通りモンスターをである、レッサーゴブリンと暴れ猪を倒し日が暮れる前に村へと戻った。
その頃には激しく降っていた雪も止み、風も穏やかになっていた。
「おう、ガウル帰ってきたか」
「ああ、今日は暴れ猪を仕留めたから後で肉をもってくよ」
鶏小屋の親父と軽く帰りの挨拶を交わしたあと家へと真っすぐ向かう。
村の中の雪はある程度搔き分けられているので、そこまで足元も悪くなく帰ることができた。
石作りの簡素な家に到着したガウルは背中に背負っていた剣を壁に立てかけ、外に置いていた暴れ猪の死体を家の横にある小屋へと引きずっていき解体作業を始めた。
暫く時がたち、解体が終わると肉を小分けにして大きな葉で何個か包むと村人たちに配るため外へと出かける。
暫く村を回り一通り配り終わるとガウルは村の中で一番大きな家へと向かう。
扉を叩くと中から返事をする声が聞こえ、暫くたった中から白い髭を蓄えた小さな老人が出てきた。
「村長、今日は暴れ猪を仕留めたからお裾分けに持ってきたぞ」
「おお、毎度助かるな。冬は猟師も迂闊に村の外には出れんからこうしてこの季節に肉を食べられるのはお主のお陰じゃよ。特にここ一ヵ月ほどは雪が酷くてこの村では外に出られる者はお主ぐらいのものじゃからのう」
「別に大した事じゃないさ。自分が好きで勝手にやってることだからな。それに山岳農家のおばちゃんや鶏小屋おっちゃんは野菜や卵をくれるし、それに他の人たちも村の中で取れる薬草や木の実とか料理のお裾分けをくれるから皆持ちつ持たれつだろ?村長だって村人を纏めたりその他の事色々やってくれてるしさ」
「お主はいつもそう言うのお。そんな処が好きで皆お主の事をしたっておるんじゃろうな」
「ムズ痒いからやめてくれ。まあ村長もこの肉食って元気に冬こしてくれよ。んじゃ肉も渡したし帰るな」
「なんじゃ、ルミアには会っていかんのか?」
「この時間はあいつ夕飯の支度で忙しいだろうしいいよ。それに五日後には成人の儀でどうせ顔合わすんだし」
「むう、そうか。それにしてもお主ら二人とも冬の生まれというのは辛いのう。成人の儀は生まれた日に行う習わし、村長とはいえ太古から続くこの風習変える事はできん。可愛い孫娘をこんな時期に山頂に登らせる等気が気ではないのじゃが。唯一の救いはお主がルミアと同じ日の生まれということじゃろうな」
「心配しすぎだって。確かに今年は例年に比べても酷い豪雪だが山頂の祠までは結界が張ってある階段を登っていくんだし大丈夫だって。それにもしなにかあっても俺がこの命変えてもルミアを守る。約束するよ」
「そう言ってくれると頼もしいのう。じゃがお主も無理するでないぞ、お主も大事なこの村の家族なのじゃから。儂はせめて当日が晴れるように祈っておるよ」
「ありがとう、村長。じゃあそろそろ帰るな」
ガウルは村長の家を後にすると、暴れ猪の肉を使って今日の夕食は何にしようか考えながら家へと帰っていくのであった。
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ここは世界の最北端に位置するランバルティアと呼ばれる地域。
この土地は世界に厄災を齎すという神々が住まう場所と言われ、人々は決して近づかない禁則地となっていた。
誰も近寄らない筈の険しい山々に囲まれたランバルティアの中央に巨大な城が聳え建っていた。
その城のある一室にその者は居た。
人間離れした青白い肌、先の尖った耳を持った男は後ろに控えていた全身を鎧で覆われた大柄の人物に話しかけるように口を開いた。
「要約です。この時を私は待ち望んでいた。時は来た、ゼジンティスよあなたの軍を率い手始めに聖国シルヴァニスを落としてきなさい」
「しかと、このゼジンティス全力をもって遂行致しましょう」
そう言うと鎧の男、ゼジンティスはマントを翻し消えるようにその場を去った。
「遂に卑しい寄生虫供からこの世界を解放する時がきたのですね」
一人部屋に残された男は今にも泣きだしそうな震えた声でそう呟くと窓から見える空に顔を向け、大きな声で叫んだ。
「我らが主、崇高なる神々に栄光を!!」
お読みくださりありがとうございました!