最終話
「で、上尾。何でお前がここにいるんだ?」
取り敢えず事態は収束し、許してもらえることになった僕。
痛いけどな! 頬がめっちゃ腫れてるけどな!
あと崎宮だが今はちゃんと服を着けている。
…………いや別に残念とか思って無いよ?
「何でって…………僕はお見舞いに来ただけだが」
「そういうことを言っているのでは無い。私はどうやって私が入院していることを知ったんだ、と聞いているんだ。私は病気で学校を休んでいることになっている筈だし、何らかの理由で私が怪我をしたことに気づいたとしても、病院の、それも病室の位置を特定出来るわけが無い。それをどうしてお前はここに来ることが出来たんだ?」
「聞きたいか?」
「ああ。まあ大方察しはついているが」
「僕は千里眼の使い手だからお前の場所など瞬時に特定出来るんだ」
「それは予想出来なかった!」
「だからさっきの…………下着姿をいちいち恥ずかしがる必要は無いんだぞ? 僕はいつでも見ているんだから」
「なるほど。もう二、三発打ち込んでおく必要があるのか」
「じょ、冗談だ。冗談!」
これ以上殴られたら今度は僕が入院してしまう。
「じゃあ何だと言うんだ?」
「本当はな…………」
「ふむふむ」
「お前のストーカーをしている時に偶然知ったんだよ」
「さっきよりも衝撃の事実!」
「え? ストーカーというのはストーキングしているという意味だよ?」
「知っている! そこに疑問を抱いているわけでは無い!」
「そんなに驚くことかよ?」
「上尾…………自分がストーカーされていると知って驚かない女子はいないと思うぞ?」
「ええと……何か僕の言い方が悪かったようだな。ストーカーというのは別名“怪我しないように、事故に遭わないように見守る者”の略称だぞ?
「何か犯罪者の痛い言い訳みたいなだな」
それに私事故に遭ったし、と続ける崎宮。それもそうだ。やはりこれでは誤魔化すことは出来ないか。
「で、本当はどうなんだ?」
「ええとだな…………」
「ちなみに、次また嘘をつくようであれば、その軽そうな口を重くするために詰め込めるだけ石を詰め込むぞ?」
「怖いこと考えるなお前は!」
そう言いながら思い出す。
ああ、そう言えば崎宮とはずっと、こんなやり取りをしていたよな、と。
休み時間も放課後も、他にも色々なところでずっと。
やはり悪くない気分だ。
本当にそう思った。
「実を言うと木島先生がお前のことを詳しく教えてくれたんだよ」
「木島教諭が? ……はあ……秘密にしておいてくれ、と頼んだのに。…………まったくしょうがない人だ」
「ちょっと待ってくれ。それに関しては僕が無理やり聞きだしたんだよ。木島先生は悪くない」
「無理やり? 上尾がか?」
崎宮がキョトンとした顔でこちらを見ている。……まあ気持ちは分かる。無理やり聞きだすなんて自分でも性に合わないことだと思ってるよ。
「それに木島先生は何だかんだ言って生徒のことをよく考えている人だ。今回もお前のことを思って、僕にこの事を教えてくれたんだろうよ」
「で、でも私はお前に心配掛けたくないと思って…………」
「…………お前、驚異的に気を使うのが下手だな」
まったく……木島先生といい、何で僕の周りはこんなにも気を使うのが下手な奴ばかりなのだろうか。
「な!? 私はちゃんと考えて……」
「そうだよ、崎宮。お前が怪我をしたことを聞いて僕は真っ先に心配した。不安だった。けどな」
僕は大きく息を吸い込み、半ば叫ぶようにしてこう言った。
「友達のことを何も知らない方がよっぽど心配だし、不安だと思わないか!?」
「……友達?」
崎宮はそう呟き、口を半開きにしている。
この病室、他に誰もいなくて良かった(ベッドは他にも置いてあったが、崎宮以外の入院患者は出掛けているのか、誰もいなかった)。僕等のこんな様子を見れば注目を集めることは目に見えているからな。
「ああ、友達だ。僕はお前がいないと寂しい…………そしてお前と一緒にいると楽しい。この数日悶々と過ごしていたのと、今お前と話してみて、ようやくそれが分かったよ」
僕は一度間を空けて、気分を落ち着かせる。そして言葉を続けた。
「この前は、お前に向かって怒鳴ったりして本当に済まなかった。あれは無かったことにしてくれ…………なんておこがましいかも知れないが、本当に悪かったと思ってる。反省している。だから許してはくれないだろうか」
「いや、そもそも私はそこまで怒っているわけでは無いのだが……」
「それでもだ。それでも僕は最も最低なことをした、本当にごめんなさい!」
秋と言えど夏の残暑が厳しいこの時期、しかし窓から入ってくる風の心地良さが今が秋であることを感じさせてくれていた。
その中で崎宮は僕のつたない謝罪に対してただ静かに微笑んでいた。
「それと崎宮。僕はもう一つお前に言っておきたいことがある」
「ええと……何だ?」
「まあ、あらためてだけどな…………」
僕は崎宮に向かって手を差し伸べつつ、こう口にした。
「僕と友達になって下さい」
微笑んだ崎宮の顔が一瞬崩れたが直ぐに立て直す。
「知っているか? 上尾」
「……何がだ」
「友達というのは馴れ馴れしく接していても問題無い関係のことを言うんだぞ」
「…………何かよく分からん認識だけど、それがどうしたんだ?」
僕の質問が言い終わるか否か、崎宮は僕が差し伸べた手を握りつつ、こう言った。
「ありがとう、大知。私達は友達だ」
瞬間、目のくらむような満面の笑みに表情を入れ替える。
崎宮の笑顔はここ最近幾度となく目にしていたが、今回のそれは今までのを越えて格別の――――それでいて見た事も無いような、それは良い笑顔だった。
少なくとも、
馴れ馴れしく下の名前で呼ばれたことなんて、そんな些細なこと気にならないくらいの、とても良い笑顔だった。
その時、僕は思ったね。
これから先の人生、その大半を僕は独りで歩いてく――――それは間違いないだろう。
それは目に見えてる。僕なら多分そうなる。
けどな、こうも思うんだ。
たまには、回り道をするのも悪くないってな。
そう――――――僕は思うんだよ。
これで一先ず完結です。ここまで読んで戴いた方、本当にありがとうございます!
また、評価や感想などあれば是非ともお願い致します。ホント、是非是非!
また、楽しんで戴いた方に告知と言いますか……。
現在、また新たに新作「ウィザード×コンフリクト」という小説を更新し始めています。
こちらも本作同様に書き溜めから一気に更新していく予定です。
宜しければそちらもお願い致します。
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長くなりましたが、ここまで読んで戴いた事、本当にありがたく思っています。新参の小説、ホントに読んで戴けないんでね……(遠い目) ここまで読んで戴けた方は私にとっては神にも等しいです。祈らせて下さい、なむなむ。
では、今後とも宜しければどうぞお願い致します!




