おねんね隼人くん
「ふぁああぁ…」
ある夏の日の放課後。
新聞部の部長を務めている僕は、仕事で疲れが出たのか睡魔に襲われていた。
各々がガタガタと席を立ち、帰り支度を始める。
「じゃ、おつかれさーん」
「それでは失礼します。今日はお疲れ様でした」
「お疲れ、隼人くん! 新聞楽しみにしてるね!」
それぞれがそれぞれの挨拶を僕にかけて部室を出て行き、あとに残ったのは僕と貴博だけになった。
タオルを首から下げたまま頬杖をついている僕に、貴博はいつものように明るく声をかける。
「綾小路先輩、お疲れ様です」
「あぁ……」
「よっぽど疲れてるんですね」
薄れかけている意識の中、貴博が僕の隣に寄り添うのが見える。
窓から射し込む太陽の光が部室を照らし、僕は机に突っ伏してウトウトしていた。
「そのまま寝てていいですよ。僕がいますから…」
耳をくすぐるような優しい声…。
ゆっくりと目を閉じると、頬に何やら柔らかい感触がして、チュッと音を立てて離れていった。
「…………え?」
「ふふ。綾小路先輩、かわいい」
貴博は天使のように優しく微笑んでいた。
僕の髪を撫でながら、赤ちゃんを寝かしつけるように少し小さめの声で歌っている。
♪ あなたのすべてが大好きです
あなた無しでは生きられません
僕はあなたに恋してます
離れていても愛しています ♪
フワフワした白い空間に引き込まれ、僕は静かに眠りに落ちた…。