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第九話 彼との出会い

翌朝、夫は仕事に出かけた

夫は私のいつもと違う様子に気付いたのか

今日は出かけるのか?

と聞いてきた

私は別に、とはぐらかせた

夫からの電話に出られないと不信がられるので、携帯は壊れて修理に出していることにした

何かと細かいことにうるさいのだ

自分のやったことは何も話もせずに…何様のつもりなんだ

佳奈のためにも近いうちに話し合わなければならなかったが冷静に話すためにはもうしばらく時間を置く必要があった

それからしばらくして佳奈が起きてきた

私は佳奈を連れてうちをでた

そうして地下鉄に乗って天王寺へ向かった

待ち合わせの時間にはまだ少しある。

私は佳奈とデパートにいってみた

何かを買う目的があるわけではないのだが見ているだけでも楽しかった

ぶらぶらしているうちにもうすぐ待ち合わせの時間が近づいていたので私と佳奈は天王寺駅へ向かった

駅には沢山の人がいた

この中から宮前さんを見つけることが出来るだろうか

取りあえず改札口で待ってみた

電車が着くたびに沢山の人が降りてくる

私はあちらこちらに視線をやったが宮前さんらしき人はいない・・・

もう少し探してみよう

「ねえ、ママ。あの携帯ママのと同じだよ」と佳奈が私を引っ張っていく

みると売店で何かを買っている男性がいる

グレーのスーツ、黒の鞄・・・携帯は・・・?

本当だ、私の携帯・・・だと思う

声をかけたほうがいいよね・・・

・・・・・

・・・・・

・・・・・

はぁ・・・なんていったらいいんだろう

緊張して声がかけられない

もし間違っていたらどうしようか


「こんにちは」

と声をかけたのは佳奈だった

買い物が済んだ男性はっこちらを振り向いた

声が出せない私に

「あ、もしかしたら高原さんですか?」と携帯をみせてきた

「あ、はい・・・高原です」

この人だったんだ

「あの、拾っていただいてありがとうございました

それに届けていただいて、なんて言ったらいいか・・・」

「気にしないでください。仕事できたんですから。

それより少し時間あります?」と宮前さんは話してきた

「あ、はい・・・ありますけど」

「それはよかった。僕これから昼食食べようと思ってるんです。

良かったら一緒にどうですか?せっかくこうやって出会えたんだし

携帯を返すだけなんてもったいないな・・・」


「ほんとにいいんですか?」

「えぇ。どうぞ。」と宮前さんは笑う


私はなんだか胸が苦しくなった

この痛み・・・随分昔に忘れてきた痛み

切ない気持ち

私は少しだけ女の感覚が戻ってきていた


そして私は宮前さんが連れて行ってくれるというお店へ向かった

「ここなんです、一度来てみたかったんだけどこういう店って男一人じゃ入りづらくて…」

と宮前さんは言った

ランチバイキング…飲茶かあ

確かにお店の雰囲気は男一人で入れるような感じではなかった

カップルや女の子グループばかりだ

「おいしそう〜」と私は本音がでてしまった

「でしょ?娘さんでも食べれるものもたくさんあるみたいだし…OKかな?」

「はい、喜んで。」

好きなものを頼んでもってきてもらう

佳奈もこういうのは大好きだから喜んでいる。

「娘は佳奈といいます、もうすぐ六歳になるんです」

「そうなんだね。佳奈ちゃん今日は一緒にご飯食べてくれてありがとうね」

佳奈は少しだけ恥ずかしそうに笑った

「あ、そうだ。これを渡しておかないとね」

と宮前さんは携帯を返してくれた。

「本当にありがとうございました。

届けてもらった上にお食事まで…あのこれ、交通費の足しにしてください」

と私は宮前さんに封筒を渡した。

「え、いいのかな?」

頷く私をみて、宮前さんは快く受け取ってくれた

「それではそろそろ次の仕事が入ってるので…今日はお昼一緒に食べてくれる人がいて楽しかった…お先に失礼します」

と宮前さんは一礼して店をでていってしまった

私もお辞儀をして佳奈と二人帰ることにした

帰りながら「おいしかったね」って佳奈と話していた

宮前さんはみるからに優しそうな感じだった

うちに帰ると緊張していたからかフゥーとため息がでた

私は着替えながら宮前さんとのランチを思い出していた

鏡に写った私は少しだけ綺麗にみえた

今日のことは心の隅にしまっておこう…


今なら夫に話しを聞き出せるかもしれない

そんな心のゆとりができていた


そうだそうだ…

携帯を失くさないようにしなきゃね

私はポケットに携帯をしまった

???

携帯に何か挟まっている…メモ用紙だ

私は携帯を開けてみた


宮前修二です

よかったら連絡ください待ってます


携帯の番号とアドレスが記入されていた


私は秘めたるメモに心が動揺していた…


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