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第六話 現実逃避

気がつくといつのまにか辺りは薄明るくなっていた

とうとう一睡もできなかった

私はまた車を走らせた

私の体は私をどこへ連れていこうとしているのかわからなかった

車を運転していると佳奈が目を覚まして

「まだ車の中?」

と驚いたように私を見た

私は夕べの出来事は一切佳奈には話すつもりはなかった

「そうなのよ。

うちに帰る前にパパから電話があってね。

お仕事でしばらくお泊りになるみたい。

佳奈にごめんねっていってたよ」

と私は嘘を話した

嘘はつきたくなかったが事実を話したところで、佳奈の理解できることではなかった

それならわざわざ本当のことをいう必要はないと私は思った

「ママ、どこにいくの?」

と目をこすりながら佳奈は聞いてきた

「そうだね〜。どこかお泊りしに行こうか」

と私が言うと佳奈は

「パパがお仕事してるところに行きたい」

といった

私はなんて言ったらいいのかわからず黙っていた

「ごめんね、佳奈

ママも知らないところでお仕事してるから

今度うちに帰ったらきっとパパも帰ってくるよ」佳奈にとっては、

大好きなパパなんだ

私はすごく動揺していた

私と夫はもう一緒に暮らすことなんてできないだろう

唯一一緒に暮らせるとしたら私が一生我慢し続けるしかない

私にはそんなこと耐えられなかった

自分の気持ちを優先させるか

佳奈の気持ちを優先させるべきか

別れるなら早くしたほうがいい

佳奈も成長すれば否応なしにわかってしまう

私は車にキーを差し込んだ

すると携帯に電話がかかってきた

夫からだった

今更なんなんだ?と思ったが電話にでた

どうやら夫は私が佳奈と自殺でもやらかさないか気になって電話してきたようだった

「今どこにいる?」と聞かれ

「二、三日旅行にいってきます。」

と私は答えた

夫は安心したようだ

それだけいって電話は切れた

私は車を走らせた

車は北陸道を走っていた三時間ほど走って金沢で高速をおりた

金沢…

夫と出会う前に付き合っていた彼と遊びにきた街であった

懐かしい

彼はどうしているだろうか

ふとそんな疑問が頭の中をよぎった

彼とは三年くらい付き合っていた

こんな真面目な人はいないっていうくらい真面目な人だった

優しくて、誠実で私はいつもありのままの自分をだせていた

彼もそんな私を好きでいてくれて

ゆくゆくは結婚するだろうと思っていた

しかし私にはその優しすぎるところが頼りなく思えてきてしまい

今の夫が当時は力強くみえて乗り換えてしまった

あんな優しい彼を苦しめてしまった

ばちが当たったのだ

あのまま彼と結婚していれば、こんな風に孤独に陥ることもなかった

悲しい思いもなかった

寂しい思いもなかった

ずっとずっと愛に満ちた生活をしていたに違いない

でも佳奈は産まれてこなかったかもしれないと思うと複雑な気持ちだった

懐かしい気持ちと同時に心がちくっと痛んだ

私は彼と泊まったホテルは避けて

別のホテルに電話をしてみる

「今日なんですけど、お部屋空いてますか」

と私が尋ねた

夏休み中であったが平日だったので部屋は空いていたようだ

私はほっとした

私はまた車を走らせて能登へ向かった

途中で千里浜ドライブウェイへ向かった

千里浜は海岸付近まで車で入っていけるようになっている

元彼に連れてきてもらった場所だ

大阪の海とは比べものにならないくらい

透き通った海だ

彼の心の中を表しているかのような美しい海だった

「わぁい、海だ海だ」

と佳奈はおおはじゃぎだ

これからどうしようか…私は沈んでいた

静かに揺れている波をみていた

夕方になり、私は佳奈を連れてホテルへ向かった

部屋には美味しい海の幸が並べられていた

「パパにも食べさせてあげたいね」と佳奈はいった

もし、私達が離婚することになったら佳奈はどちらといることが幸せなんだろうか

そんなこと佳奈に決められるはずもない

佳奈は私も夫も同じだけ大切なんだろう

それならば私が夫の浮気で離婚することは無理かもしれない

私の気持ちで佳奈の幸せを奪う権利は私にはない

親だからといってなんでも押し付けたりしたくはなかった

佳奈の気持ちを最優先にしようと私は決意した

夫はどう考えているのかわからなかった

あの女と暮らすのか私とやり直してくれるのか…

もし、夫から離婚を言い出したら別れてもいい

そう思った


評価、よろしくお願いします



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