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第五話 悪夢

私はもう一週間田舎にいる予定だったが

夫と話し合い離れていた溝を少しずつでもいいから埋めていきたい

新婚とまで行かなくてもお互いを想いあえる仲でいたい

そう思い、明日佳奈を連れてうちへ帰ることにした

夕御飯に間に合うように昼ご飯を食べてすぐに実家をでた

佳奈もパパに会いたいというので、すぐ車に乗った

夕方に着く予定だったが高速が渋滞している

夕飯には間に合わないかもしれない

佳奈はパパの顔をみたいらしく、必死に眠気を我慢して隣に乗っている

もう少し早く出ればよかったと後悔したが今となっては仕方ない

のろのろと動く車の列につながっていた。ようやく高速をおりてうちへつくころには8時を過ぎていた

佳奈はぎりぎりまで頑張っていたがもう寝てしまった

夫はまだ帰って来てはいないだろう

うちにはガレージがなく、近くの駐車場を借りていてそこに車をとめた

歩いても1、2分

荷物は明日運ぶことにして私は佳奈を抱き上げた


そして車をあとにした。夜でも蒸し暑いな

佳奈を抱っこして歩くと汗がふきでる

ようやくうちについて鍵を開けた…

?鍵がかかっていない

夫はもう帰って来ているのだろうか?

私は玄関のドアを開けて、中に入ろうとした

瞬間うちの中から誰かがでてきた

うちの中からでてきたのは見ず知らずの女性だった

その女性の後ろには夫が立っている

しかも二人ともパジャマ姿…

私は頭の中が真っ白になった

私のうちに知らない女性がパジャマ姿で立っている

声がでない

女性は明らかに動揺していた

ドアから離れ二階へあがってゆく

私は動けずにいた

夫は私に来週帰るんじゃなかったのか?といってきた

私に帰って来て欲しくなかったのだ

私が留守の間何をしていた?

あの女はいつからうちにいた?

うちの中で何をしていた?

私は夫と本気でやり直そうと帰ってきたのに

そんな気持ちなど一気に消えた

夫に憎しみの感情しかでてこない

腹立たしかった

私が孤独に耐えながら必死に守ってきた家庭

硝子でできたうちのようにひび割れて

いつ壊れてもおかしくなかった家庭を私は必死に守っていたのだ

夫はそんな私が大切にしていた家庭をほうり投げ

完全に壊してしまった

こうなっては、もう繋ぎ合わせることなど不可能だった

壊れた破片は次々と消えていく

五年間築いてきたものが一気にこぼれて流れてゆく

私はただそれを腹立たしい気持ちで眺めるしかなかった

うちにいた女はいつ着替えたのか鞄を抱えて走り去った

夫は私にそれ以上何も言わず女を追い掛けていってしまった

それが夫の答なんだ

密会がばれて言い訳でもするのかと思ったが

私にはなんの愛情も残っていなかった

そんな夫とやり直そうとしていたなんて

なんて皮肉なんだろう

私は佳奈を抱いたまま車に戻った

うちには入りたくなかった

私の居場所はうちにはなかった

知らない女が

歩いた廊下

座った部屋

眠ったベッド

…全てが不潔に思えた

そんな場所に大切な佳奈をいれるわけにはいかなかった

私の体が拒否反応を示したのだ

車に戻った私は佳奈をそっと助手席へ寝かせた

佳奈が寝ていて本当によかった

こんなイヤな想いをするのは私だけで充分だった

私はもう一度エンジンをかけて車を走らせた

どこにいくあてもなくひたすら車を運転した

体が覚えているのだろうか

私の思考回路は麻痺しているのに、体はちゃんと車を走らせている

気付くといつのまにか高速道路を走っていた

このままどこへいこうか

私はパーキングエリアに車を留めて一休みすることにした

もう深夜になっていた

何がどうなって、こういうことになったんだろう

夫はいつから浮気していたのか…

帰りか遅かったのは本当に仕事だけだったのか

全てが疑わしくなってくる

それにしても腹が立つのは

私が留守なのをいいことにうちに女を連れ込んでいたことだった

あの場面はどう考えても言い逃れはできない

私は腹立たしい気持ちと同じくらい悲しい気持ちで車の中にいた

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