第二十九話 もう一度…
その夜、私は夫に連絡をした
「今夜いつもの場所でごはん食べない?」
「あぁ前よくいったよなあ、わかった。7時、待ち合わせにしよう」
以前は夫が誘ってくれていた
私達は何度もその場所で愛を育んできた
喧嘩したら必ずこの場所にきて仲直りした
そういえば、佳奈が産まれてからはきてなかったな…夫とやり直すならやっぱりこの場所からがいい
「夕子。待ったか?」
「少しだけね。ここから見る景色は変わらないね」
「そうだな…俺あの時夕子しか見えてなかったのに…本当悪かった。ごめんな」
「いいよ…もう。私も同じことしたんだから。ねえ、もうお互い正直に話そう。あなたは由希さんと別れること…できるの?佳奈もいないし…いいのよ、もう。私に気を使わなくて。あなたの人生なんだから後悔しながら私と過ごすなんてしてほしくない。惨めになるだけだから」「俺は佳奈が死んでしまう前からあいつとは別れていた。っていうか…オレみたいなおっさんはやっぱタイプじゃなかったらしい。あっさり別の男とどっかいってしまったよ。だからお前とやり直すってことじゃなくて…。やっぱり俺には夕子しか無理なんだ。佳奈がさ…死んでしまったとき絵を描いていたんだよ」
「絵を?」
「そうさ…俺と夕子と佳奈と三人の絵を。佳奈が真ん中で…手を繋いで。"なかよしかぞく"って書いてあってさ…それみたら俺…今まで何してたんだろって…大切なもの無くしてからしかわからないなんて…最低だよな。俺…夕子に男に見られていない気がして…働いて給料持って帰ってくるだけかって思ってしまって。そんなときにあいつが俺が好きだとか言うから…俺ものめり込んでしまって…ホントに悪かった」夫がそんなことを思っていたなんて意外だった
いつも自信たっぷりな夫からそんなことを聞くなんて…思いもよらなかった
結婚して不安を抱くのは男も女も関係ないのかもしれない
そう思った
「私も同じだったよ…もう一度二人でやり直せるかな…?」
「やり直せるさ…夕子、今日は記念に旨い店に連れて行ってやる」と私の手を握って自分のポケットに入れて強引に歩き出す…
出逢ったころと同じだった
この強引さが好きだった
「淳志…歩くの早いよ…」
六年ぶりに夫のことを淳志と名前で呼んだ
淳志はびっくりして振り向いた
淳志は嬉しそうに笑っていた
ほんとに些細なことでひびも入るし、逆に仲直りもできてしまう…夫婦とは不思議なものだ
二人の時計は再び動き出したもう止まることがないように、なくさないように進み続けた
二年後…二人に双子の赤ちゃんが授かり、淳志と夕子は子供が産まれても愛を失くすことはなかった
佳奈を忘れないように愛佳、愛奈と名付けた二人はもう三歳になっている…
夕子はもう二度とドラッグに手を出すことはなかった
夕子は幸福だった
最後まで読んでいただきありがとうございました。麻薬ー溺れていく愛ー完結しました。みなさんのおかげで最後まで書くことができました。次の作品も書き始めていますので、よかったらみてくださいね。