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第十四話 ドラッグ

とうとう、修二さんと逢う日がきた

私はどれだけ心待ちにしていたことか

今日は佳奈も幼稚園だし、二人きり…少し緊張する

前と同じ時間と場所、今日はどこにいくのかしら?

そんなことを考えながらメールしてみる

ー駅につきました・・・修二さんはまだ電車?ー

メールを送って待っていた

するとすっと目の前に誰かがきた…見上げると修二さんがいた

「夕子…来てくれたんだね

あれから少しは冷静になれた?」

すっと修二さんは私の手をポケットにいれて歩き出した

すごく温かい手…私の心に染み渡って行く…

ただ手を繋いだだけなのに、それだけのことなのに…涙がでてくる

外はこんなに寒いのに私は暖かい気持ちでいっぱいだった

「今日のランチはイタリアンでいいかい?」

「ええ」と私が答えると、そのまま手を引いて私を店に連れて行く…

それが強引でもなく、優柔不断でもなく、ごく自然な感じで私に接してくる

修二さん歳はいくつくらいだろうか…夫と同じくらいだろうか

食事をしながら私に話し掛けてくる

「夕子…僕のことどう思ってる?」

私は修二さんをどう思ってるか…

「えっと…」私は返事に困った…

「多少は僕に興味があるから今日だってここに来てくれたんだよね」

「修二さんといるとありのままの自分でいることができるから…安心できるっていうか」

「そっか・・・それは僕とのこと現在進行形ってことだよね?

僕は夕子を守ってあげたい…」

そういって修二さんは私の手をにぎってきた

私は修二さんとの未来は有り得ないと思っていた

でもよく考えてみたら私は夫とも未来はないのだ

このまま一緒に暮らしていくだけで心も体も繋がらない

それなら修二さんと一歩踏み出してもいいんじゃないか…

私は修二さんともっと一緒にいたい…

「私も修二さんと一緒にいたい…」

私は心の中の声を本当に発した

それからの修二さんは私にもっと優しくしてくれるようになった

別れ際に小さな公園の隅で修二さんは私を抱きしめた…

とても暖かい…なんて居心地のいい場所…

私はこのまま眠ってしまいたい…

人に愛されるというのはこういうことなんだ

私は抱きしめられて完全に思考回路が麻痺していた…

そしていつまでもこうしていたかった…

夫や大切な佳奈のことさえ頭から消え失せていた

「また年明けには大阪にくるから…夕子、それまでは電話とメールで我慢して」

コクンと私は頷いて一歩下がる

「修二さん…」

「修二でいいよ」

「ありがとう。今日は楽しかった。私携帯を落としてよかった

こうやって修二と出逢えたから…」

「そうだね…でも偶然じゃなく必然的だったんだけどね…じゃまたメールするね」

意味ありげなことを言い残して修二は仕事にいった

私は佳奈を幼稚園に迎えに行く為ダッシュで帰った

修二の温もりは消えなかった

抱きしめられた感触も手を握った感触も全て残っていた

私は修二と言う名のドラッグに手を出してしまったのだ

ドラッグというものは一度手をだすとやめられなくなると聞いてはいたけど

ほんとにそうなってしまっていた

うちに帰っても何をしていても修二のことを考えてしまう…

かなり重症患者だった

「ママ〜」

佳奈の呼ぶ声で現実に戻ることができた

夕御飯を食べて一緒にお風呂に入り寝かせる

佳奈がいる間はママでいることができたが

夜は女になっていた

あまりメールを送っても修二の負担になるかと思うと

なかなかメールも送れない…

修二からのメールを待ってから返信する毎日

時々は電話で話したりもする

逢えないとなるとなおさら逢いたさも募ってくる…

私の頭の中には夫の存在などないに等しかった


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