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第十三話 裏切り

私は宮前さんにメールを送ってしまったことを後悔などしていなかった

なぜなら宮前さんには好意はあるが恋愛感情がでてくるようには思えなかった

初めて会ったときに佳奈を連れて会っている…

私には家庭があることは宮前さんは当然わかっているはずだ

もしも…もしも男女の仲になったとしても私達には未来などない

先に進めない恋…

だから私は変に安心してしまい、時々メールを送っていた

明日は夫が社員旅行に行く日だ

荷物といってもしれてるが、用意しておいた

旅行でも仕事でもどちらにしても、うちにはいないのだ

私と佳奈にとってはいつもと同じだった

翌朝、夫は早々とうちをでて車で行ってしまった

佳奈と一緒にテレビをみていたときだった…

「ブルッブルッ」

聞き慣れない携帯の振動音がする…

あ、テーブルのうえに夫は携帯を忘れていた…

携帯は振動し続けている…

職場の方からだろうか…出る必要はないかな…

迷ってる間に振動は止んだ

しかしすぐにまた振動しだした…

大事な用件かもしれない

夫に断りもなく私は携帯を手にとった…

メールみたいだ…「早くきて…」

送ってきてるのは…森山さん…らしい

聞いたことないな…

メールの内容みるべきかどうか…

とりあえず携帯を置いて夫の部下である川内さんに電話してみる…

川内さんとは家族ぐるみのお付き合いをしている

「あ、もしもし。高原ですけど…

夫が携帯を忘れて出かけてしまって…

電話が鳴っていたこと伝えてもらえます?」

「僕は今日出勤するんで…高原係長は今日はお休みですよね…

僕は会えそうにないのですみません。」

休み…?旅行じゃないの?

「え?あなたは行かなかったの?社員旅行なのに仕事?大変ねえ…」

「社員旅行…?あぁ…僕は明日予定があったので…」

明らかに声が動揺している。

「そうなの…社員旅行どこに行くって聞いてる?」私は問い質した

 夕子さん知らないんですか?」

「一度聞いたような気はするんだけど…白浜だった?

ホテル名がわかれば電話できるんだけど…」

「いやー僕も白浜以外は参加する予定もなかったし…ホテルまで知らないです…」

「わかったわ。忙しいのにごめんね」

「いえ…お役に立てなくて…」


嘘だ…嘘だ嘘だ


夫は伊勢に向かったはず…社員旅行と偽ってまで出かけた相手…

私はさっと夫の携帯を佳奈が寝静まってから手に取った

さっきの森山っていうメールをみてみる…

「ねえ、まだなの?私ずっと待ってるの…

早くあなたに会いたい…外は寒いよ…早く抱きしめて…由希」

何回も同じメールが来ている…

11時頃からはメールは途絶えていた…

私は勘が働いてすぐにあの女だとわかった…

うちに出入りしたあの女…

私はガク然とした

なんで…まだ続いていたの…?

別れたって私を抱いたあの時も私をみてなかったの?

ほんとなら今日、結婚記念日なのに…私よりあの女を選んだんだ

私は涙がボロボロこぼれた…

心が潰れてしまいそうだった

私は夫の携帯の電源を切った

これ以上みたくなかった…

これ以上みたら気が狂いそうだった

そしてポケットから自分の携帯をとりだした

ー助けて…助けて…

私もう何も信じられない…ー

私は宮前さんにメールを送った…

すぐに電話が鳴る…

メールではない…電話だった

私は電話にでた

「もしもし…夕子です」それだけ言うのがやっとだった…

泣きじゃくってしまい声がだせない

「夕子さん…どうしたの?旦那さんと何かあった?」

宮前さんは私に優しい声で話し掛けてくる…

前々からメールで夫が浮気したことや

気持ちがすれ違っていることなどを宮前さんには話していた

だからだいたいの見当はついているのかもしれない…

「夫にまた裏切られて…今日結婚記念日なのに前の女と伊勢にいってしまって…」

「そう…つらかったねすぐにでも夕子の傍にいってあげたいんだけど

僕は今プロジェクトの真っ最中なんだ…

来週の金曜日、大阪にいく…夕子に逢いにいくよ

もう今日のことは忘れて…

僕は夕子の傍にずっといるから

今は金沢だけど…心は夕子の隣にいるから

泣かないで…夕子…夕子…

僕は夕子を愛してるんだ…

僕は夕子を大切にする…僕のところにおいで…」


心の中にトーントーンと彼の言葉が染み渡ってゆく…


凍りつき憎しみの塊となっていた私の心を少しずつ温かい物が流れていく…

私の心は少しずつ血が流れ出した…

温もりが戻ってくる…


「来週…金曜日修二さんと会える…」


私は呪文のように繰り返した

「そうだよ、夕子に逢いにいくから

いつでもメールして…一旦電話切るね」

「ありがとう…修二さん」

私は電話を切った…

私は来週修二さんに逢いに行く…

それは夫を裏切ることになりかねない…

逢えばきっと…


きっと…

もう、今までの私には戻れないだろう…


来週逢いに行かなかったら…?

今までどおりの生活…

そんなこと耐えられない

ただ年老いてゆくだけ…

それなら私は死んでいるのと同じ…

来週、修二さんに逢いに行こう…

私はそう決心した


日曜日夫は何食わぬ顔で帰ってきた…

「お帰りなさい…どうだった?伊勢…楽しかった?」

夫はうろたえもしない…

「あなた携帯忘れていったでしょ」

「ああ、それで川内に電話したんだろ…今日、会社寄って帰ってきた

あいつ、俺に気を使って…お前どうしたい?俺と別れたいか…」

何?何なの?自分のやったこと何とも思わずに私に一言も謝りもせずに…

私は言ってやった

「どうして別れなきゃならないの?

あなたこそ別れなきゃならないようなやましいことでもあるの?」

「お前…我慢できるのかよ

 俺とあいつのこと…

 俺はあいつと別れる気はない

 本気で好きになってしまったんだ…

 あいつのことを受け止めてやりたい…

 お前さえよければ…できることなら俺は別れたくはない…

 会社での地位もあるからな…」

いつでもどんなときも会社…会社って…

「受け止めるって…あなた佳奈はどうするの?

 佳奈の父親はあなたしかいないのよ。」

「佳奈…ほんとに俺の子かよ…前の男の残したもんじゃないのかよ…」

「なんて…ひどい…私をあなたと一緒にしないで…

佳奈は紛れもなくあなたの子供なのよ…

もういい…

私もこのままでいいわよ…

そのかわり私も自由にさせてもらうから…」

「ああ、好きにしてくれ…俺はもう寝る

 俺のことはほっておいてくれ」

夫はそういって寝てしまった

話しながら私の頭の中はフル回転していた

離婚するべきかどうか…私も夫も互いに愛してなどいない


それは事実だった


それなら夫婦でいることに意味はないかもしれない

でも佳奈はどうだろう…

それに今別れたら夫の思うツボだ…

あの女と再婚しかねない

夫だけ身勝手な幸せを掴むことは許せなかった…

私は心の底から夫を愛していたのに…

もうやめよう

考えるのはよそう

なかなか眠れないまま朝がやってきた


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よろしくお願いします

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