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第十話 夫の謝罪

昨夜私は眠れなかった

あのメモは何だったんだろう…正直にいうと、うれしかった

宮前さんに連絡をとることは嫌ではなかった

でも電話をする勇気もない

とりあえず私はこのメモを捨てるために携帯に宮前さんの連絡先を登録した

そして夫に見つかる前に処分した

別に慌てて捨てることもなかったのだが、要らない疑惑をもたれたくなかった

連絡先を知っている…だけのこと

私が連絡さえしなければ、二度と逢うこともない

私の連絡先を宮前さんは知らないのだから

私はそう自分に言い聞かせた

今日から新学期、長かった夏休みも終わった

佳奈は元気に幼稚園へ向かった

私は一人残された部屋で携帯を見つめる…

ブルブルブル…携帯が鳴った

私はドキッとして

携帯を開けた

なんだ夫からのメールだ何々?今日はめずらしく9時に帰るらしい

私は携帯を閉じた

私は誰からのメールを待っていたんだろう…電話を待っていたんだろうか

たぶんかかってくるはずのない相手を待っていたんだ…と思うと自分が怖かった

そんな気持ちに気付かないふりをして携帯を閉じる

今夜は夫が早く帰ってくる…話しをするにはちょうどよかった

佳奈を早めに寝かせて私は夫の帰りを待っていた

話し次第では離婚も覚悟していた

「ガチャガチャ…」玄関先で物音が聞こえる

夫が帰ってきたらしい

「おかえりなさい」と出迎える

夫の食事とお風呂がすんだら話しを切り出そう…そう思っていた

すると夫から先に話だした

「この前は俺が悪かった。あいつとはもう別れたんだ。だからもう忘れてくれないか」

と夫はいってきた

忘れてくれって…そんなことできるくらいならこんな苦しい思いはしない

それができないからつらいのに

「いつからの関係?」

と私は尋ねた。

「あの時が初めてだ。お前が留守だったからつい魔がさして…彼女は職場の後輩で…彼氏に振られたらしくて相談聞いていたらあんなことに…」

「へぇ〜その日だけでよくお泊りの用意もできたねえ」

「あれは彼女が男と旅行にいくはずだったんだ。だけどそいつはこなかったらしくて…」

「それでうちにきたわけ?ずいぶん親しい後輩なのね」

私は怒りを押さえきれなくなってきた

「俺が職場からでて、うちに帰るときにみかけて…車に乗せて帰ってきた。」

「何で車に乗せたの?」

「彼女、一人で座って泣いていて・・・話が長くなりそうだったんだ。パジャマにはなっていたが体の関係は一切なかった」

パジャマ姿になっていて体の関係がないわけがない

偶然にも私があの時帰ってきたからこうやって分かっただけ・・・

馬鹿にするにも程がある

「あのね、子どもじゃないんだからね。体の関係が一切ないってどこに証拠があんのよ。別れたってどうやって信じればいいのよ。あなたは私を裏切ったのよ。たとえ体の関係がなかったとしても、私の留守に知らない女性をうちにいれるなんて非常識だわ。それにあなたは私に弁解するどころか、彼女を追い掛けていったのよ。そうでしょ?馬鹿な私はあなたとやり直そうと思って帰って来ていたのに…」

私は一気にまくし立てた

同時に頬に涙が伝わってくる

夫の前で泣きたくなかった

私の敗北を認めたような気がした

夫はそんな私をみて何も言わず抱きしめた…

私はその手を振りほどこうとしたがほどけない。すごい強い力で抱きしめてくる…

「離して…私のことなんかどうでもいいんでしょ」

夫は喋らない…そして私を抱きしめ続けた

その腕の中にいるうちに思考回路が麻痺してきた…

涙が溢れてくる・・・今まで我慢してきた想いが吹き出てくる

久しぶりに抱きしめられた夫の温もりは以前と変わらなかった…

とても居心地が良かった・・・

まだやり直せるんだろうか…

私の気持ち次第で二人は出発できるのだろうか…でももしまたこんなことがあったら…

「もう二度と夕子を傷つけたりしない」

話し出そうとする私の口を夫は塞いだ。そして私は混乱したまま夫に抱かれた…

そして夫の腕枕で眠った

ずっと一人で寝る日が続いたからか、人の温もりがあるベッドは心地よかった

夫は反省してやり直そうとしてくれている

私ももう一度壊れてしまった破片を繋ぎ合わせて温かい家庭を築いていこう…

肌と肌を触れ合わせたことで、トゲトケしくなった私の心が少しだけ柔らかくなった気がした

ずっとこうしていたい…一人はもう嫌だった…

寂しい夜は過ごしたくなかった…

いつまでも永遠に愛されていたかった

私だけを見て私だけを愛して欲しかった


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