017:世界は二人の為に。
注:少々、大人な表現が出てきます。ええ、殿下が暴走中です。
「それに関しては、何ら問題ないと思うよ?」
食堂へ移る前に泊る場所をお聞きしたところ、今だ姉を膝に乗せたままの殿下から、あっさりとしたご返答を頂いた。
「それぞれが、それぞれの部屋へ」
「はい?」
「ですから、お部屋のご用意が」
姉も困惑顔で、私の疑問符を補足してくれる。
なのに、殿下の方も不思議そうで。
「?すでにある部屋で足りるでしょ?」
「???」
さっぱり理解が追いつかない私たちを見比べて、なんてことはなさそうなニッコリ笑顔で、爆弾を投下した。
「僕は小鹿と、ダンディーニは適当に」
ぞんざいな扱いに、さすがの隣も不満の声を上げる。
「は?俺はティスベの……」
「だが断る!」
「えぇ?!」
ふざけたことを口走るので、毅然と!遮ってやった。
意外と情けない声を上げたダンディー二を取成しに、姉が入ってくれる。
「ダンディーニ様、妹は少し厳しく育てられたので、ご配慮いただけたらと……」
「そうなの?同じ姉妹なのに、ずいぶんと違う育てられ方をしたんだね」
姉が濁らせた語尾に被せてきた殿下の無神経な言葉に、怒りで目眩すら感じた。
案の定、明らかに姉の顔が曇る。
「……そう、ですね」
殿下も自分の失言による姉の変化を直ぐに察知し、俯きかけた姉の顎を掬い上げ、あろうことか顔を寄せ合い……チュッ。
えっ?チュッ?
続けて軽く角度を変え、驚きで口が微かに開いている姉に、ちょっと深く、クチュ。
ええっ?クチュ?!
そして、何事も無かったかの如く艶やかに微笑み、彼はこう宣った。
「食堂の前に、君の部屋を見たいな」
鮮やかなお手並みで姉の沈んだ心を霧散させ、永久凍土も真っ青な程に凍りついた私と呆気に取られているダンディー二を尻目に、茫然自失の姉を横抱きにした殿下は客間を出ていった。
案内など不要とばかりに、勝手知ったる軽やかな足取りで。
行き先はご存じですか?屋敷の見取り図は入手済みですか。ソウデスカ。
解凍後、残された情報漏洩の元凶と始まる侃々諤々。
「じゃ、俺達はお前の部屋にでも……」
「断る!」
「俺にどこで寝ろと?」
「昨日はどこに寝たんだ?」
「乳母を押し込めた部屋の隅で」
「じゃあ、今日もそこで良いじゃないか」
「あぁ?乳母はともかく、あのキ○ガイ女と一緒はご免こうむる!」
「人の義妹をつかまえてキチ○イだなんて、よく言えるな!私だって言った事が無いのに!」
「でも思っていただろう?」
「……ソンナコト、アリマセン、ワ」
「正直に言え」
「思うのと口にするのとでは全然違うんだ!」
「堂々と棚に上げるな!」
「心に棚は必需品なんだ!」
結論が出ないまま、補佐が迎えに来て食堂へ向かう。
二人の白熱した論争の最後は「お前の母ちゃんデベソ」だった。
どこの子どもだ……。
ある意味、お似合いの二組み?!