幕間:いつか王子様が
あのお方の独白です。
どこに差し込もうか悩みましたが、大公殿下に会えるのを楽しみにしている今なら良いかなと思い、幕間とさせて頂きました。
あたしはシンデレラ。
だって乳母やがそう言うのだもの。
あたしが生まれてすぐに母さまは死んだって聞いてる。
かわいそうなお嬢様
乳母やはいつだってそう言って、あたしを大切にしてくれた。
美しい黄金の髪、澄んだ薄青い瞳は母さま譲り。
将来は美しい貴婦人になりますね
髪を梳く度、鏡越しに謳うように聞かされた。
あたしの周りはいつも気持ち良く設えられて、嫌なモノは何一つなかった。
ある時、いつも細々とお願をしている女中の一人が訳知り顔で、お可哀そうなお嬢様、と言って来た。
なぁぜ?と聞くと、奥様に産み捨てられ旦那様に打ち捨てられて可哀そう、ですって。
母さまは死んだのよ?しょうがないじゃない。父さまは、いつだって忙しいし
奥様は生きておいでですよ?伯爵夫人におなりです
――何を言っているのか分からない。
直ぐに乳母やを呼んで聞いたら、その日から件の女中は見なくなった。
嘘を言う人は、そうやって居なくなる。
あたしの周りは常に快適だった。
美味しい物を、食べたい時に、好きなだけ。
したい事を、したい時に、したいだけ。
欲しい物は、欲しい時に、欲しいだけ。
だから、かわいそうなあたしは、乳母やが居れば幸せだった。
あの女たちが来るまでは。
みすぼらし女が母親を名乗り、チビと貧相な女が姉を気取った。
最初は笑顔を見せればちやほやしてくれたのに、おねだりするほど気を許した途端、口うるさくなった。
なんて意地の悪い義母と義姉だろう。
そうこうしていたら、義母が子を身ごもり、生まれた。
乳母やが血相を変える。
お嬢様、大変です!男子がお生まれです
それがどうしたの?
後継ぎがお生まれになったのですよ?お譲様は追い出されてしまいます!
そんなことはさせない!あたしを不幸にする原因は、取り除けばいい!!
なのに、父さまはあの女と憎らしい子どもを連れて、あたしの手の届かない所へ隠れてしまった。
たまにやって来ては、医者だの司祭だのに引き合わせる。
父さまは、あたしがかわいそうじゃないんだ。
ますます、あたしの心は荒れすさんだ。
そんなある日、乳母やが本を一冊持って来た。
お嬢様の事が書かれているご本を見つけました
な ん と い う こ と !
読めば読むほど、あたしにぴったりだった!
幼くして母を亡くし、父がどこかの女と再婚をする。
新しく出来た母と二人の姉は意地悪で、いつも苛められる。
でも大丈夫。
心優しい乳母やは魔法使いで、いつか舞踏会におめかしして送り出し、王子様に見初められるのだ!
その日から、乳母やはあたしのことをシンデレラと愛を込めて呼んでくれる。
シンデレラ、屋根裏に移った方が良いですよ
そうね、そっちの方がらしいね
シンデレラは苛められているのでお勉強もできません
そうね、その方がらしいね
シンデレラは美しい服を着ません。こちらの方がらしいですし、いつかドレスを着た時に周囲があっと驚くでしょう
その通りだわ!
乳母やは細やかに心を配ってくれる。
あたしが幸せになる、その日まで。
だからあたしは、シンデレラ。
いつか王子様が迎えに来てくれる、シンデレラ。
2013.12.18ほんの一部の接続詞を修正




