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ブンゲーブ

作者: 安荷唯


 俺は高校に入り文芸部に入部した。

「んで、なんで文芸部員はオタクばっかりなんだよ!?」

 心よりの一言。

「『僕は近代文学が好きでね、特に芥川が〜』みたいな奴いないのかよ!?」

「うん? 君、そういうタイプなん?」

 部長様だ。

「いいえ、オタクですけど!」

 まぁこれは断言できる。

「全く、こんなとこで部誌とか出して満足してる奴らがワナビ作家になって、ネットとかに自己満小説を書くんやろね」

 部長が自己否定とも取れることを言う。

「結構ひどいセリフですよ? それになんか自嘲が伺えます」

「わかる? 結局、私もその一人ってわけなんやけどね」

 やっぱり自嘲的。

「へぇ、部長ネットで書いてるんですか」

「うん、ブログでね」

「アドレス教えて下さいよ。読みますよ?」

「おっ? ええで、感想聞かしてな?」

「ええ、もちろん」

 部長がアドレスを紙に書いているとき、

「やめておいた方がいい。眼が腐る」

 他の──多分部員の人(入部初日だ仕方ない)が口を挟む。

「ひどいですね……。そんなになんですか?」

「うん、とても」

 なんか、寡黙キャラみたいな話し方。

「BLってことですか?」

「それもある、けど、それはエッセンス。君の読んだことのある、ライトノベルにも、そういうキャラクターいる、でしょ?」

「まあ、いますね。それじゃ何が腐らせる原因なんです?」

「まず、痛い。厨二丸出し。主人公強すぎ。セリフ臭すぎ。掛け合いに熱が入りすぎて情景描写がなくなってる」

 急に饒舌だな。

「それは痛いですね……」

「だからワナビやって言うてるやんっ!」

 うわっ! かわいっ! 恥ずかしがって赤くなってる!

 おっと、描写忘れた(これじゃ部長の小説と同じじゃないか)が部長様はとてもかわいい。そんで、部員さんも。

「部長は、文章力と発想力はあるのだから、痛さをなくせば、どんな新人賞でも通用します」

 悪口を言っているときよりは饒舌じゃないが、それでも少し早口。

 否定はしているものの、ちゃんと部長を認めてはいるようだ。

「それは褒めてるん?」

「っ!? ……ま、ませんよ………っ」

「うーん? かわいいなぁ後輩よ〜?」

「かわいくないですっ……」

 かわいいよ? 二人とも超かわいいっ!!

「じゃあ、今日はもう時間なんで帰りますね。帰ったら見ますよ」

「おっ、じゃね新入部員くん」

 それでは、と言って荷物を持って、ドアに手をかけたとき。

「あっ、そうそう言い忘れてたけど、私の関西弁も、こいつの寡黙な話し方も、全部キャラ付けやで?」

「ち、違うっ!!」

「嘘だっ!?」

 衝撃だった。

 俺は逃げるように走り帰った。




 次の日、彼女らは普通の話し方になっていた。

 部長の痛さが治らないのは、相方も痛いからなのだと悟った。





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