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モラトリアム  作者: Hibiki
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朝目覚めると、家には人の気配がしなかった。

恐らく、両親二人とも仕事に出かけたのだろう。時計をみると、時刻は10時を回ろうとしていた。

くんくんと私を起こしに犬が近寄ってくる。


「はいはい、おきますよ」


布団から起き上がる。眠りすぎたからなのか、不思議なことに目覚めは良い。

トイレへ行き、朝の小便を済ませ、顔を洗いに洗面所へと向かう。


「今日は、火曜だから4限からか」


今に気づいた話ではないが、なんとも大学生というものは暇を持て余す生き物である。

特に大学4年にもなると受ける授業はせいぜい週に1,2コマ程度である。

スマホの通知音が入る。

 -本日の予定 11:00 ○○会社 web説明会-

内容は、前にカレンダーに予定を登録したときのものだった。


「そういえば、今日もあったのか」


大学4年というのは暇なのかもしれない。けれどもなぜか暇には思えない。

就活なんてのは3月からだ。そう言われてから、すでに2ヶ月はたった。

大体6月までには就活終わるから。そういった友人は、すでに内定をもらっていた。

8月までにはみんな内定が決まってる。そういった友人は、教職志望で就活とは無縁だった。

しかし、焦りは自然と無い。

私自身も大学院進学を考えているため、就活なんて無縁なのだ。

顔を洗い、台所へと向かう。

いつもながら、惣菜パンをトースターにいれ、リビングに行きweb説明会が始まるのを待つ。

待っている間、暗いスマホの画面に映るのは、まったくもって貧相な顔である。

髪の毛は髪で濡らして整えた程度、髭は昨日の夜に剃ってあるので多少は生えていても問題はない。


「まぁ、服装自由だし大丈夫だろう」


開始時刻になった。

今回の説明会は選考への案内も含まれているため、内定まではスピーディーに決まるだろう。

私は早く院試への勉強をしたかった。

こんなむさ苦しく中々見えない自分の将来への展望から抜け出したかった。この前、友人に向かって「俺の将来の夢は…」なんて語ったばかりである。

もうすでに5月も半ば。

着々と人生という名の1度しか乗れない列車は動き始めている。

途中で降りることもできるが、列車は止まることを知らない。

いや、そもそもこの列車に乗ったという感覚すら分からないのかもしれない。

そんなことを考えているうちに、説明会は終わり、今回の説明会についてのアンケートを回答する時間になっていた。


「そろそろ、大学行く準備しなきゃ」


アンケートに答え、私は身支度を済ませる。

トースターの中の惣菜パンは、もう冷め切っていた。







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