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「純輝君起こして~」
「手を引っ張るぞ」
「うん、おお! はは、こういうときって君の優しさがよく分かって嬉しくなるよ」
手を引っ張られているのに優しさがよく分かるとはどういうことだろうか、そりゃなるべく痛くならないように気をつけて引っ張っているが頭を撫でられたとかそういうことではないのだからそんな感想にはならないと思うが。
「ただ引っ張っただけだろ、なんか付き合ってからはおかしいぞ」
「それはほら、隠していただけってことだよ」
「何回も『砂森君とはちょっと』と言ってきたのはそこに繋がっているということなのか」
「露骨にアピールをして一方通行のままで終わったら大学受験のときに分かりやすく邪魔になるからね」
露骨だったのかそうではなかったのかがそのときそのときで変わるから分からなくなってくる。
「でも俺は露骨にアピールをしていたというわけじゃないだろ、それなのにどうして変わったんだ」
「もう、全部聞こうとするなんて駄目だよ」
「そうか、とにかく腕を引っ張られて嬉しくなるとか言うのはやめてくれ」
「分かっていないな~」
ちゃんと分かっているのであればこんなことは言っていないからそこは彼女の言う通りでしかない、そして多分この先も分かることはない。
それ以外のところは知ろうと努力をすればいいだろう、なんでも合わせる必要はないということだ。
「ぎゅー」
「これでいいか」
「正解、やっと君からもしてくれるようになったよね」
「俺はみずきがしてきたときにやり返すぐらいがいい、そうでもなければ休まる時間がなくなるぞ」
「ふふふ、もしそうなっても楽しそー」
いや無理だ、自分で言っておきながらあれだがそんな自分は延々に出てこない。
人目を気にして手を繋いで歩くことすら――これはもうしているから人が来そうなところで抱きしめたりはできない。
「んー」
「おい、もしかして――」
「ふふ、油断をした君が悪い」
「よかった、俺からするように求めているわけじゃなくてな」
勢いに負けて自分から行動をしていなくてよかったとしか言いようがない。
「さてと、課題でもやりますか」
「ああ、あ、終わったらなにか甘い物でも食べに行こう」
「え、それはどうして?」
「そんなのみずきのためでしかないだろ、みずきもさきなと同じで甘い食べ物が好きなんだからな」
「他の女の子の名前を出したのは失格だけど考えてくれていることには変わらないから許してあげる」
関係が変わってからはやたらと妹のことをライバル視みたいなことをしているのが気になるところではあるものの、集まれば本人達は至って楽しそうに会話をするから不安になったりはしていなかったのだった。




