PART8
なんで二人が竜人と分かった――商店街で大量の食材たちを買い込む中、ベイクの好物である獣肉を猟師の出している店で選びながらガウスがロックへと訊ねた。
米俵を二つ軽々背負うロックはガウスのそれまでと違う真面目な調子の言葉遣いを意外に感じながら、特に隠すことでもあるまいとして答えるのだった。
「“こっち”に来るときに良い眼をもらったんだ」
「もらったって……」
「“魔眼”というんだ」
「まが……? あ、いや、名前訊いたんじゃないんだけど」
少々ズレた回答を寄越すロックに呆れたガウスが彼を見ると、ロックもロックでガウスの意図が理解出来ていないようで首を傾げていた。
ガウスは乾いた笑声を零し、店主に猪の肉を要求。
代金を払い、杉の木を薄く引いて作った薄っぺらい経木に包まれた肉を受け取る。
そして改めて突っ立つロックへと振り向いてガウスは言った。
「その魔導器でも誤魔化せないような御大層な魔眼とやらをくだすったのはどこの誰さん?」
得意そうに経木包みの肉を放り投げては受け止め、片方の眉と口角を吊り上げ皮肉っぽい笑みを浮かべたガウスの問いかけに、ロックはうんと頷くと答えた。
「神さまって言ってた」
ややもすると“異邦人”とは奇妙なことを口走る。
ロックの口にした“神さま”とはその代名詞だ。
だがガウスは納得する他になかった。
“異界”は確かに存在し、そこからくる“異邦人”は超常的な力を持っている。ときには“異界”の知識をもたらし、世界を発展させた。魔導器の偽装を暴くくらい、わけはないのだ。
「神さま、ね」
「笑っちゃうよな」
「あ?」
「神さまなんかいないと思ってた」
ガウスは納得した。偽装を暴いた“異邦人”のロックが言うのだから、彼に魔眼を授けた“神さま”の存在とて納得するしかない。
しかし逆にロックは、そのとき彼が浮かべた表情は嘲笑であった。まるで言葉とは裏腹に今も“神さま”なんて存在しないと言っているように。
「俺もだよ」
彼のその表情を見てガウスが告げた言葉は、どちらの“言葉”に同意したものなのか曖昧で、ロックも「そっか」と短く返すだけ。
二人は更に食材を買うべくその場をあとにした。
彼らが“伝々亭”へと帰ったのは昼を僅かに過ぎた頃。ベイクは既に腹を空かせていて、レンとコウメは一日中厨房から離れることが出来なかった。
そんな賑やかな“伝々亭”の許に通信用魔導器からの連絡が届いたのは夜も更けた頃であった。




