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第9 姉帰る

「…」 


「っあ おはよ  …あんた髪やべーなおい」 




起床すると、姉貴が台所に立っていた。 




「…なにしてんの」  


「そりゃ料理でしょ あさめしよ、あさめし で 弁当もあるんよ


あ あさだちちゃうかんね」 


「朝からくだらんよ  …材料は?」  


「そんなのあれよ、あんた 今はデジタルだからね」 



酔いが醒めていても、相も変わらず、なにいっているかわからない。 


よく知らんが、材料を用意したみたいだ。 いつのまに。 


姉貴は意外と料理ができる。少なくとも俺よりははるかに。 



着替えて軽く身支度する。俺は起きたらすぐに歯を磨くタイプの人間だ。 



「いやさぁあ こうして食べんのさ 久しい感じよね」 


「…」 


「どしたん? まさかほんとにたってんの?」 


「…これなに」 


「なにって うどんに決まってるじゃんよ」 


「朝からうどんかよ ここはさぬきか」  


「世間知らずは怖いねぇほんと 今流行ってんのよ イ○スタとかで」 


「流行っとらんやろ」 


「ま、ま たべよたべよ 蓼食う虫もうどん好きって諺もあるし」 


「ないわ」 



まあ、消化しやすそうなので、折角なのでいただくことにした。 



バリうめーじゃねーかこの野郎。 海原○山も驚くだろう。  



「いやーーー 結構似合うね制服」 


「…いつまでいんの」 


「あ? もう帰るよ あ じゃあさ 私が途中まで一緒に行ったるわ 


さーさ 弁当持って」 



そういえば俺は学生だった。一応、登校しなくてはならないだろう。 






姉貴と並んで通学路を歩く。自転車は押していく。 



「背、だいぶ伸びたんじゃない? うどの大木って感じかね」 


「…」 


「…」 


「…」 




「あ じゃ 私ここで そういうことで~」 


「っああ」 




姉貴は、やや足早に歩いていく。その先に車が停まっている。 


おそらく俺がこの先乗ることのないような車だ。 


姉貴は、その車の助手席に乗って去っていく。表情はわからない。  



姉貴はろくに学校に行っていなかったように思う。 


色々と事情があるのだろうが、そんなことは俺が考えたところで 


どうしようもない。 あんまし興味もない。



俺が責任を負えるのは、自分の人生だけだ。 



変に肩入れして、両方とも崩壊する方が、たちが悪い。 






高校に入っても、授業はつまらない。 


朝うどんはなかなか良かった。消化が良いとは本当のようだ。 


なんか弁当を持たされたので、昼に蓋を開けてみる。



「…!ッ」 



キャラ弁というやつか。いやデコ弁だったか。  


駅弁だと違う意味にもなりかねない。 


どうやったのかはわからないが、いわゆるハート形と、文字が構成されている。 


ひらがなだ。 


こういうのは、どこから食べるべきなのか。 




「…!!  …あっあっえっと、その、珍しいねY君」 


「…え? ああこれ…」 


「あはは いやY君いつもお弁当じゃないし、ぁけどお弁当作ってくれる 

人がいることはいいことだと思うし、なんかすごいお弁当だし いやほんと 

お弁当はすばらしいよね うんうん」 



隣の席がいつもより早口でしゃべっている。滑舌の向上でも目指しているのか。 



「…まぁあ これは事故みたいなもんで」 


「あーーやっぱり、事故ではじまることもあるというか、そういう感じというか 

ははは そういうことでそういうことになっちゃうこともあるよね 

あ、私がね、体験したってわけじゃないんだけど ぁははは」 


「…」  



隣の席の様子がなんとなくおかしい。生理でも来たのだろうか。 


いや待て。そもそもこのロリは初潮を迎えていない可能性がある。 


さすがにそれはないか。しかし不測の事態は避けなくてはならない。



赤飯を炊くべきかと思い始めたが、弁当のケチャップが目に留まったのでやめる。 



弁当も、そんなに悪くない。 


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