第16 悲しき六法
クラスを見渡すと、だいぶグループ的なものが固定化されつつある。
そして今、俺は自分の席で焼き鳥を食っている。
まだ昼ではないが腹が減ったのでしょうがない。
親睦を深めたはずの隣も、あまり接触してこなくなった。
なんとなく、彼女の視線は感じるが。
やはり未発達の肢体に欲情することは、自分にとっては
難しいのかもしれない。
クラスの皆は、一体なにを話しているのだろうか。
別にその話の内容について密告するつもりはないが
そんなに話すことがあるのか という気はする。
もちろん、友達はいた方が良いとは思うが
無理して他人に合わせることは苦痛だ。
そんなことをするぐらいなら、一人で砂肝を食っている方が
よっぽど気楽だ。
色々な柵でがんじがらめになってしまうぐらいなら
クラスで浮いている方を、俺は選ぶ。
面談の際、担任から悩みについて聞かれた。
自分の腹の調子を察してくれたのだろうか。
しかし、なぜ彼は、自らの頭皮を白日の下に晒したのか。
もしや彼は潜在的マゾであり、俺に自らの頭皮について
罵倒して欲しかったのかもしれない。
いわゆる 欲しがり薄毛マゾである。
その場合、同性になってしまうが、いいのだろうか。
俺は、一応自分についてはストレートを自認している。
Yは、一応窓を開けて換気しながら、砂肝を食う。
前方の席の二人の様子が、ふと彼の目に留まる。
前の方の席の男女が、親しげに話し込んでいる。
カップル成立だろうか。
きちんと避妊をしているか、やや心配であるが
俺の知ったことではない。
俺は男女カップル的な二人組を見かけると、まず
彼らの顔の偏差値と、身長を確認する。
どちらかで俺が勝っていれば、セーフだ。
だいたい、ブスを孕ませて何が楽しいのだろうか。
しかし、先日、姉貴に煽られたばかりである。
確かに合法的にJKたちと交わえるのは、今かもしれない。
後で、せっかく金を貯めてJKを買ったとしても
うっかり捕まっちまう可能性がある。
Yは再び、教室を見渡す。
一人のブスが、彼の目に入り込む。
このくらいなら、楽にヤらせてくれるだろうか。
いや 危険だ。
俺の精巣が停止してしまいそうだ。
こういうことは、一筋縄ではいかない。
もし時間停止や、都合のいい催眠術ができたなら
俺は幸せになれるだろう。
教室の席で焼き鳥を食っているこの男は
やはり不埒ものであった。
部活も終わり、帰路につく。
焼き鳥も悪くはなかったが、やっぱり主食を用意する
べきであった。
次回への改善点としておこう。
主食の大切さを改めて知ったYは、彼のアパートに着く。
自宅のアパートの駐輪場に自転車を留めたYであったが
彼は異変に気付く。
なんだか、俺のアパートの周りが騒がしい。
警察も来ている。野次馬もいる。
ここら辺に警察が来ることは珍しいことである。
当然のことかもしれないが、戦争と平和だったら
俺は後者を選択する。
Yは野次馬に混じり、アパートの様子を窺う。
その光景は、Yにとっても異様であった。
「俺はおしまいだぁあああああああ! うけけへっつっ!」
「野島さん?!! やめましょうこんなことは!」
「そんなことは知らねえッーぇーーよぉお!!!!
うるせーーーーこのスカポンタンがああああっえあッ!!」
「……野島さん…正気に戻って……。」
「おふおぶぉふっ! ぁヴィえええええっkつLえqjっ!!!」
なんてこった。
俺の隣の号室に住んでいる野島さんが、大家を人質にとっている。
野島さんとはそこまで付き合いはない。
確か彼は、難関資格を数年に亘って受験し続けており
毎年失敗しているとのことだった。
とうとう、爆発してしまったのか。既に彼の言語は崩壊している。
まぁお気の毒ではあるが、彼に法曹の資格がないことは
今、明らかになっているだろう。
巻き込まれた大家も、災難といえる。
しかしこの感じだと、俺は自分の号室に入れないではないか。
甚だ迷惑だ。
Yは不服そうであるが、この後、このひと騒動の終結のために
彼は一肌脱ぐことになる。