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第14 時空を超えて

最近、眠くてしょうがない。 

 

中学時代も、授業中は眠くて仕方がなかった。 


特に文系科目の時間は、自分の脳が小休止してしまう 


傾向がある。 

  

なんとなく、家よりも学校の方が眠りに適しているの 


かもしれない。 


高校にも、昼寝の時間があると良いと思う。  


なんなら、教室に布団を敷くのはどうだろうか。 


睡眠学習というやつである。


 

もちろん、授業中に夢の世界に行こうものなら 


態度不良と見做されてしまう。 


しかし自分でも努力はしている。 


教師たちにも、そのへんを理解してもらいたいと思う。 


 

今日は古典と英語の授業がある。 


個人的には、この2教科の担当教員はなかなかセンスがある 


と思わざると得ない。 

   

いわゆるツッコミのセンスだ。 

 

捻りのあるツッコミがあってこそ、ボケも生きてくるものである。  

 


Yが手の込んだ言い訳を考えていると、彼の隣が話しかけてくる。 

 


「ぅふふ Y君、今日は寝ちゃだめだよ?」 


「…あー 努力はするけど…」 


「…ところでさ、Y君って …携帯持ってるよね? あの、その 


もしよかったらなんだけど…」 


「え? 携帯?」 


「うん… あだけどね いやだったら全然…」 


「持っとらんわ」 


「ぇえ? Y君、持ってないの! 携帯」 


「うーーん 別に連絡するやつもいないし… 


家にコンセントあんまないし…」 


「……コンセント…?」   



またしても、この隣同士の席間のキャッチボールは 


大暴投となってしまった。 


ボケツッコミ以前に、そもそもまともな会話ができていないことに 


Yは気付いているのだろうか。  



 


午後の授業は、睡魔との闘いとなる。 


皆さんも、経験があるのではないだろうか。 


そしてYは、例に違わず、英語の時間で爆睡していた。  


英語の担当教員は、中年の男である。 




「じゃー次は… おい! Y! 寝てるんじゃない!」 

  


英語の担当教員が、声を荒げる。 


隣の席が気を利かす。 



「…Y君、おきて」  


「っぬヴぁ?」  



気色の悪い声とともに、Yは夢から帰還する。 

 


「態度悪いぞ、Y。 じゃあ教科書65ページから音読、頼むぞ」  



なんだか知らんがあてられてしまった。 


教科書を取り出し、音読するしかない。  



「月日は百代の過客にして、行かふ…」 


「まてまてまて、今は英語だ。古典を読むな。 


勝手に時空を超えるんじゃない!」 


「あ…すみません…」  


 

なかなか捻りのあるツッコミである。 

 


「ふざけるんじゃない。とにかく、65ページからだ」 

 

「…あ」 


「どうした?」  







「…すみません、先生。教科書忘れました。」 


「……わかった、もういい。でもお前、考えた方がいいぞ」 


  

 

英語の授業は終わった。 


やはり、英語の教員のセンスには光るものがある。 


今回のやり取りは、自分的には満足だ。  


次の古典にも期待するとしよう。 

  


そして古典の授業が開始される。 


担当するのは、比較的若い女教師である。 


さすがにYも反省したのか、爆睡はしていない。 


が 彼は明らかに古典のことなど考えていなかった。 


 

「んーそれじゃ… Y君、ここ、わかる?」 


「…」 


「Y君。聞こえてる?」 


「あ すみません この世をば、だと思います。」 


「何も聞いていないわね あなた。」 


「まあ、光源氏はヤリ過ぎだと思います。」 


「何を言っているのかしら。無理に寄せなくていいのよ。」  



女教師の体の、ある部分が、ふとYの目に留まる。 



「…よせるほどありますかね、先生」 


「視線に悪意があるわね。もういいわ。でもY君、成績に響くからね。」  



やはり、古典の教師もセンスがある。 


淡々とした返しの中に、秘めた情熱を感じる。 


これこそが、授業の醍醐味というものだろう。 



 


なぜか満足気なYとは裏腹に、彼はこの学年のブラックリストに 


登録されつつあった。


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