鶴を一羽助けたが、何故か若い娘が三人やってきた鶴の恩返し。
むかしむかし、コンビニも何も無い村に一人の働き者の青年がおりました。
ある日青年が山へ出掛けると、鶴が一羽罠にかかっておりました。
「えっ!? 会社のお金を使っちゃったって!?」
鶴が受話器を片手に慌てています。
「おっと、それはなりすまし詐欺では?」
青年が鶴に声をかけました。
すると、その声に気が付いたのか、電話がプツリと切れ、反応がなくなってしまいました。
「やはり詐欺だの。危ないところじゃった」
「ありがとうございますありがとうございます」
鶴は頭を15°下げてお辞儀をして空へと羽ばたいてゆきました。
その日の夜のことです。
「ごめんくださいまし」
青年が囲炉裏でカビむした餅を焼いていると、誰かの声がしたのであります。
「こんな夜更けに誰じゃのう?」
青年が戸の前で返事をすると、若い娘の声がしました。
「訳あって行く当てが御座いませぬ。何でもします故にしばらく泊めて頂けませぬか?」
何でもします。その言葉に弱い青年は、ほいほいと戸を開けてしまいました。
するとそこには若い娘が三人おりました。
「えっ?」
青年は、一瞬固まってしまいました。
まさか三人も居るとは思ってなかったからです。
「ありがとうございます」
紅葉の着物を着たお淑やかな娘がにこやかに微笑みました。
そしてゆったりとした歩みで青年の家に上がり込みました。
「ワーォ! これがイロリ!? モチ!? ウーンッ、オイシィ!」
ジーンズに革ジャンの金髪娘がずかずかと土足で上がり込んで青年の焼いたモチを食べ始めます。
「お婆ちゃん? そうそう私。ゴメンちょっと会社の車ぶつけちゃってさ」
フード付きのパーカーにミニスカートをはいた娘が、スマホで電話をしながら青年の家に入りました。
「どゆこと?」
青年が現状を理解できぬまま呆けていると、三人の娘たちは空き部屋へと行き、「決して覗いてはいけません」と、籠もってしまいました。
そして部屋の奥からは、はたを織る音と電話の声だけが聞こえ続けました。
「これがジャパンのベッド!?」
ジーンズに革ジャンの金髪娘だけは何故か、囲炉裏のそばに敷いた青年の布団で寝ています。
青年はむっちりしたジーンズのお尻が大層お気に召したので、「まあいいか」と、深く考えるのを止めました。
翌日、青年が目を覚ますと、織物と手紙がありました。
織物はこの世の物とは思えないほどに美しく、売れば一生遊んで暮らせるほどに長かったのであります。まるで製紙工場のロールのように。
【十時に田中の婆ちゃんから現金の入った封筒を受け取ること】
手紙にはそんな事が書かれておりました。
「モゥ……ジャポンのサムライのMURAMASAプレイがストロングすぎて、わたしのペリーさん友好通商条約まったなしヨォ」
金髪娘がぎゅっと青年にしがみ付きました。壁にかかった革ジャンとジーンズが朝日に照らされまぶしく輝いておりました。
「あ、ツルとサギとコウノトリか……」
青年がふすまを開けると、部屋の中ではツルがはたを織っており、サギが電話でお爺ちゃんからお金を騙し取ろうとしていました。
「見てしまいましたね……もうここには居れません」
ツルが勢い良く外へと羽ばたき空へと消えていきました。
「チッ! めんどくせ……」
サギが羽ばたきましたが、屈強なポリスメン達が待ち伏せしておりサギは瞬く間に御用となりました。
「コウノトリさんは?」
「ジャポンがきにいりました! それに……」
金髪娘がそっと青年の腕にしがみ付きました。
「ユーのMURAMASAソードも、ね」
そして二人は子宝に恵まれすぎて幸せに暮らしましたとさ。