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第2話 化け物

スラム街のような路地裏で俺は大きな叫び声を上げてしまった。あまりにも驚いたから。でもそれはここではやっていけないことだということに今気がついた。気がついてしまった。

「恩人、この路地裏から逃げろ。死にたくないんだったらな。」

「へ?どういうことですの?」

素っ頓狂な声を出す恩人。まあボディーガードになってって言った人間から急に逃げろって言わればそういう反応になるのはしょうがないのかもしれない。俺の言葉を理解していない恩人はともかく近くにいた老人の執事はプロだった。俺の意図を理解したのだろう、執事が指を鳴らすと物陰からぞろぞろと黒ずくめの男と女達が出てきた。人数は20ぐらいだ。数えるのがめんどくさいため直感的にだが、まあそれぐらいの人数が目の前にいる。俺は少し目を見開く演技をした。まあずっといる気配を感じていたため分かっていた。だから一切驚きもない。こんないかにもお嬢様という容姿の少女がいるのだ、黒ずくめのボディーガードがいて当然なのだろうと俺は思う。だがこの路地裏ではたかがボディーガードなんていないよりいた方がマシというレベルだ。ここにはいつ死んでもいいヤツらなんかゴロゴロいる。そういう奴らはとても厄介で恐ろしい。まあ俺みたいに生にひたすらしがみつくやつも恐ろしいがな。

黒ずくめの奴らは老人執事から何かを言われ、お嬢様である少女のところまで行くと少女を連れてこの路地裏から逃げようとした。多分俺が言ったことを理解したあのじいさんが黒ずくめのボディーガード達に言って少女を安全なところに連れていこうとしてるのだろう。だがその少女は俺を見て言った。

「貴方は(わたくし)の専属のボディーガードとして雇ったんですのよ?なんでその貴方が(わたくし)についてこないのですの?」

・・・こいつはどこまでお人好しなんだ?こんなあったばっかりのやつを本気でボディーガードにしようとしてるのか?しかも自分の専属の?

「なんで俺をボディーガードとして雇うんだ?」

自分の疑問が無意識に口からこぼれてしまった。

「貴方に魅力を感じたんですの。何かすごい力を持っているような貴方に。だから今日から(わたくし)の……海雲(かいうん) 美咲(みさき)のボディーガードにさせますわ。これはもちろん強制ですの。」

・・・これはお人好しというかワガママなお嬢様なのかもしれないな。強制って……しかも俺にすごい力?そんなんねぇんだがな。まあそれは置いといて名前は美咲(みさき)というのか、これは俺も言った方がいい流れかな。

「そんな大層な力持ってないよ。まあボディーガードとして雇ってくれんだったら美咲(みさき)に名前ぐらいは言っておいた方がいいかもな。名前は……宮下(みやした) 海斗(かいと)だ。」

俺は美咲のさっきの言葉に訂正を入れつつそう言うと黒ずくめの奴らは白い目で俺を見てくる。美咲やその隣にいる執事は一切気にしていない様子なのだが、俺は何かミスったのだろうか。まあどうでもいいか。そして続けて美咲に話しかける。

「美咲さ、なんか金になるもん持ってないか?あったら渡してほしんだが。」

「さっきは恩人とか言ってたのに急に呼び捨てなんですのね。まあさっきからタメ語で話してますしいいんですけれど……まあ話を戻しますわ。率直に言いますとお金になるものありはしますわ、でもこれの価値が分からないんですの。(わたくし)気に入った物は値段関係なく買うタイプなので。じいや、この(わたくし)が買った指輪の値段は?」


美咲はコートのポケットから箱を取り出した。


「はい、そちらの指輪のお値段は5700万円ですね。ルビーの宝石なのですが、ここまでの大きさの物がなくそれだけでも高いものに他のところを全て金にしているのでここまでのお値段になっているそうです。」


それを聞いてきた俺。指輪で5700万円ってヤバすぎるだろ、そんな高いもんまさか渡せって言ったから渡すってそんなに純粋な訳ないだろ。


「はいこれ、お金になるものですわ。これを何かに使うのでしょう?。」


俺はその箱を受け取った。この行動には俺のみならず周りにいた黒ずくめのボディーガードもドン引きしているようだね。やばいだろコイツ。そう思っていると黒ずくめのボディーガードの中から待ったを言うものが現れた。


「お嬢様お待ちください!。こんな私がお嬢様に言うことをお許し願いたいのですが、この男はお嬢様にタメ口、呼び捨てを行いました。お嬢様の専属のボディーガードになるのであればタメ口や呼び捨てを行うことは絶対に良しとしてはいけないものと思います。しかもお嬢様に金目の物を持ってないかと聞くという始末。なんのために使うのかそれも話さずにです。このホームレスは誠に怪しいです。こんな非常識で、お嬢様に敬意を払えないホームレスは絶対にボディーガードにする資格はないと思います!!」


美咲にキッパリと言う黒ずくめのボディーガード。そしてこの話の内容を聞いていた俺だがここまで言われても美咲の呼び捨てやタメ口を変えようとは思わない。理由としては美咲は俺の呼び捨てやタメ口を許している。だがら俺自身が変えることはない。ってなんの話ししてんだ今やばい時なんだぞ?金目の物を美咲に“借りた”のは理由あるし。俺がそう思っていると美咲ではなくその横にいた老人執事が喋った。


「お前はお嬢様に命令するのか?お嬢様が決めたことは絶対だろう?お前如きがお嬢様に物を言える立場ではないことを考えろ。」


酷く冷たい声と眼差しでその黒ずくめのボディーガードに言うとその黒ずくめのボディーガードは顔を真っ青にし何も言わなくなった。場は暗い空気になるが俺はそんなことを気にせず話す。だってもう


足音はすぐ近くだから。


「死にたくないんだったらここに来たところまで帰れ。」


「なんでですの?」


「なるほど……ボディーガード達よ、お嬢様をお守りしながら来たところまで帰れ!今すぐにだ!」


その黒ずくめのボディーガード達は状況を理解していないお嬢様を守りつつ行こうとする。だが美咲をこちらを見つつ言った。


「海斗!!貴方なんで着いてこないんですの?」


「すぐ追いつかれるからさ。だから俺がそいつらを“コレ”で引きつける。生きてたら返すよ。」


俺は美咲に指輪の箱を見せた。美咲はそれを見るとまた言ってきた。


「絶対に生きて帰ってきてくださいまし!!逃げ切ったら(わたくし)のこの予備スマホで(わたくし)に電話してくださいま……し!!」


そう言って美咲は黒ずくめのボディーガードに抱えられたまま、スマホをこちらに投げて渡した。危うく落としかけた。肝が冷えたがまあ大丈夫だったからいいだろ。


「サンキュー。じゃあ行ってくる。」


そう言ってその場で待つ。どうせ“アイツら”が来ることなんてわかっている。美咲達の姿は気がついた時にはもう消えていた。だが後ろから多くの気配を感じた。この路地裏では見慣れた人間。麻薬の商売、臓器の提供、クスリ、詐欺の金、そんな闇金を持っているクソやばい人間どもの組長。橋北(はしきた) 新吉(しんきち)、この路地裏の支配者であり、警察が犯罪者まみれのこの路地裏に来ない諸悪の根源だ。


「(*・ω・)ノよっクソジジイ」


「死ぬか?てめぇ。」


「はは、それで殺せてないのはどっちだ?」


軽口を交わす俺とこのジジイ。見た目はジジイじゃないと思う。シワもほとんどないため本当に思う人間は多いが年齢は57歳だ。だから俺がジジイって呼んでも間違いではない。そんなこと考えているとこのジジイの組の奴らとそのお零れを貰いに来たホームレス達は俺を取り囲む。この路地裏では当たり前で普通の光景。弱者は強者から奪われる。まさに弱肉強食の世界。そうだから周りから見れば貧者そうな身体をしている俺は狩られるものなのだろう。まあ“周りから見れば”の話だが。


「どうする?殺るか?」


「てめぇみたいなバケモンとやる訳ねぇだろ。ここに来てお前だってわかった瞬間気分は暗くなったしな。だがお前の持ってるその箱が金目の物だったら話は変わる。」


一気に周りの雰囲気が変わる。血に酔った獣達が殺気を込めて俺を見る。正確に言うと俺ではなく俺の持っている指輪の箱を見ている。


「まあ金目のものだが、よこす気はサラサラない。だからさっさと帰ってくんないかな?」


俺は満面の笑みでこの場の奴らにそう言うのだった。








このクソ野郎。宮下(みやした) 海斗(かいと)はこの俺、橋北(はしきた) 新吉(しんきち)が一番憎いと思っている人間だ。俺の商売の邪魔をしまくり、ここに来た人間どもから少しの金だけ貰い、逃がす始末。正直コイツの頭はイカれている。だってここには法は存在しないだから殺して奪っても捕まらない。自分の利益のために殺せばいいものをコイツは少しの金だけ奪い元いた場所に返す。本当に頭が湧いているクソ野郎だ。だが実力は正真正銘の化け物だ。昔コイツが俺の商売を邪魔した時ついに俺の堪忍袋の緒が切れ腰に添えていた銃を打った。だが海斗は俺が打った弾丸を見た後に回避。それをまじかで見た時は人間じゃねぇと思った。それは今この状況であっても変わらない。常人ならば気絶してしまいそうな殺気と狂気的な笑みを浮かべ、背筋が凍る程の冷たい声色を出す。こっちが狩る側のはずなのに逆に狩られる側だと思ってしまうほどの殺気を俺は今受けている。部下は気分が悪くなって倒れているやつもいる。コイツは本当に人間なのか?そう感じてしまう。だからもう諦めた。


「もういい。お前とやるとこっちだけが消耗する。その箱がどれだけ高価な物が入っていたとしても、部下や自身の命には変えられん。」


「そう?じゃあな。ジジイ。」


「生意気で貧弱なカギが━━━!!」


俺は諦めたフリをして拳銃を海斗に向けて打った。だがもうそこには海斗はいなかった。そして首に僅かな痛み、そして圧倒的な殺気。海斗にナイフを首に突きつけられていた。首から僅かな血が流れる。


「死にたくないんだったら何もするな。首飛ばされたいか?新吉」


背筋がゾッとするほど冷たい声色とかでは無い。もはや無。何も感じていない無情の人間のような声色で俺を見ながら言った。そして圧倒的な殺気。それによって全身から溢れる脂汗。


「分かった。」


俺は真理にたどり着いた。この男はもはや人間ではない。


化け物


だということに………。

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