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第3話ー明智光秀と庖丁道

 庖丁道について調べていると、思わぬ話が転がり出てきました。

 明智光秀は、進士信周の息子である、又、進士晴舎の息子である等の学説があること自体は、以前に私も見聞きしたことはありましたが。

 この辺りのことを深く私は考えていませんでした。


 しかし、明智光秀がこの関係から進士流の庖丁道を受け継いでいた等の話が、庖丁道を巡る私の調査の中で出て来て、更に本能寺の変直前の安土城における徳川家康の饗応を、明智光秀が受け持つことになっていたのが、いきなり解任、交替させられて、中国地方への派兵を明智光秀が行うことになった、という話とが私の頭の中で結びついたとき。

 ひょっとして、という想いが、私の頭の中に浮かんできました。


 明智光秀が実際に進士家出身であったかについては、私はどちらかと言えば否定的ですが。

 明智光秀が、進士流の庖丁道を熟知、究めており、そうしたことから、進士家出身でもあるという話が出てきた、というのは十二分にあり得る話では無いでしょうか。


 そして、本能寺の変前後の進士流の庖丁道の現状はというと。

 永禄の変において、足利義輝に殉じて進士晴舎が討死する等の事態から、それこそ進士流の庖丁道はかなり衰退している、と言われても仕方のない状況でした。

 そうした中で、明智光秀は進士流の高弟として、自らが学んだ進士流を復興させようと努力していたのではないでしょうか。


 こうした中で、1582年5月、織田信長から明智光秀は、安土城における徳川家康の饗応役を命ぜられて、その準備等を執り行うことになります。

 明智光秀としては、衰退している進士流を復興させる絶好の機会と逸り、準備に勤しみました。

 ところが、主君の織田信長と明智光秀の間で行き違いが生じます。


 織田信長としては、武田家を滅ぼした畿内、天下統一の覇者として、将軍家が行うような御成形式で、徳川家康を本膳料理等でもてなそうと考えていました。

 一方、明智光秀としては、そこまでの格式を調えた本膳料理等までは準備しなくともよい、と考えて準備を進めていました。


 その傍証として挙げられるのが、このような本膳料理等でもてなしをする際に同時に行われる舞や能についての準備です。

 この安土城における徳川家康の饗応の際に行われた能を演じたのは、丹波出身の梅若大夫で、この能を観た織田信長は極めて不機嫌になって梅若大夫を折檻した、と複数の書物で伝えられています。 

 将軍家が行うような御成形式でしたら、大和四座から演者を呼ぶのが当然で、明らかに格落ちの演者が能を演じています。

 信長が不機嫌だったのは、格落ちの演者が招かれて能を行ったから、と考えれば容易に腑に落ちます。


 こうした行き違いから、光秀は信長から家康の饗応役を解任されてしまいますが。

 これは進士流の庖丁道を受け継ぐ者、高弟と自負していた光秀にしてみれば、耐え難い屈辱でした。

 この屈辱が、本能寺の変を引き起こした原因の一つでは、と私には思われるのです。


 更に余談を言えば、続群書類従において、この徳川家康の饗応の際に準備されていた本膳料理の献立が記載されており、それに基づいて、現代では料理が再現されているようですが。

 既述のように、本膳料理は見る料理であり、余り食べられる料理では無かった、という観点がこの再現料理には欠けている気が私にはしてなりません。

 だから、明智光秀が準備していた魚が傷んでいたので、信長が怒ったという説について。

 私としては、魚が少々傷んでいても、信長が怒る程、特に問題視されるとは思えないのです。

(庖丁道においては、準備する側が、それだけの食材を調達して料理を準備して、その料理を披露することにむしろ意味があるのです)

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